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- 第2話 頼み - 「最近、夜になると外で声がするんです。その声の主を探して欲しくて……」 複雑で難しい頼みかと思ったら全然そんなことは無くて、さらに意外な内容にみんなは口を開けぽかんとしていた。ソフィアさんは僕達がぽかんとしている理由がわからなかったらしくておどおどとしていた。しばらくの沈黙が終わり、バレストリがはっとして再起動した。 「ちょっと待ってください!こんなお金頂けません」 時間差で事の重大さに気づいたバレストリがソフィアさんを止める。声の主を探すだけにしても金額があまりにも高すぎたからだ。その横でダーマンが封筒を手に取り1枚ずつ札を数えていた。それを見てニヤニヤしているダーマンにデュートはゲンコツを食らわした。実は僕も横目でお金を数えてにやけてました。小説ぐらいの厚さなんだもん。そら表情筋も緩みますよ。 「その頼みは受けます。ですがお金は受け取りません」 デュートがクールに答えるとお金を受け取らないという言葉で僕とダーマンはうなだれた。僕達が何を言ってもデュートはその大金を受け取ろうともしないだろうな。そう思うと悲しくなってきた。 「無償で受けてもらうわけには……」 ソフィアさんもでもでもと引き取ろうとしなかった。2人とも頑固なんだなとダーマンと以心伝心したような気がした。 しばらくそんなくだらない会話が続き結局札を1枚受け取ることになった。2人ともなかなか折れずにソフィアさんとデュートだけの別の世界を作っていた時、僕達は隣で机に突っ伏していた。唸り続けるデュートが札1枚ならいいとやっと折れたのだ。ソフィアさんも納得したみたいで満足気な顔を見せた。 「終わった?もうすぐ十三時だし早く解決した方がいいんじゃない?」 バレストリが溜息をつきながら早く行ってしまおうと席をたった。 「ちなみにどちらから来られたんですか?」 そういえば聞いていなかったとデュートがソフィアさんに問いかける。するとソフィアさんはラウリニア地区だと答えた。そこで僕は考えた。ラウリニア地区ってアンラ帝国のなかで1番小さい地区で、しかもアンラ帝国の首都であるここからではめちゃくちゃ遠い。どうやって行くかというとラウリニア地区は田舎だから列車を乗り継ぎあとは馬車か徒歩でしか行けない。今から行ったとしたらつく頃には日が沈む時間だ。これは今日じゃなくて明日にした方がいいんじゃないかと僕は目で訴えた。そんな僕の訴えも乏しくデュートはせっかく遠いところから来てくれたからと今から行くことになった。確かに興味はあるけれども僕の心と体が同じ意志を示してはいなかった。気持ち的には行きたい、体は明日でいいじゃんといった感じ。そんな重い体を動かし僕達は出発進行した。 「まだつかないのー!」 先程も言ったが酒場peaceがあるのはミエリドラ地区でソフィアさんが住んでいるのはラウリニア地区、その距離は旅行ができるほどの長さで行くには何時間とかかる。そして列車はけして豪華とは言えない、車内は木でできたような作りで特に何もなくとても退屈であった。また、列車の次はさらに長い馬車が待っている。 まだかまだかと僕が抜かしていると前に座っているデュートが窓を開け、ダーマンの隣に座っているソフィアさんをちらりと見ながら問いかけた。 「遠いところからわざわざ大変だったでしょう。わざわざラウリニアから、なぜ私達のところに?」 「悪鬼を宿しているあなた方なら白いモヤをどうにかしてくれると思ったんです」 悪鬼を宿している、そのセリフは聞きたくなかった。間違っている訳では無い、ただ悪鬼を宿している、それは罪を犯したということと同じ。僕達を頼っているのか僕達を見下しているのか僕にはそれがわからなかった。そんなセリフに不快感を持ったまま僕は俯いた。 「白いモヤ?」 バレストリが眉を下げながら首を傾げた。白いモヤなんてさっき言ってなかったのにと思い聞いたのだろう。この長い長い列車の中でソフィアさんの頼みを整理しながら詳しく聞くことにした。 ソフィアさんは順々に話していった。詳しい話としてはソフィアさんが僕達に頼みたかったことは夜中に家の外で声がして外に様子を見に行くと白いモヤみたいのが見えて怖くなって家に戻ったと。情報はそれだけ。とりあえず着いてから現場を見に行ってみようということになった。 僕の隣に座っているダーマンが先程から黙っている。存在感が有り余るほどのダーマンがなんだか小さく見えた。観察してみると少しプルプルと震えていて、なにかに怯えているようだった。 「ダーマン、すごく楽しみだね!幽霊退治」 僕はダーマンが幽霊とか怖いものがすごく苦手なことを思い出して冷やかすように言った。 「ゆ、幽霊退治?幽霊って聞いてないぞ」 声を震わせながら真っ青な顔でこちらを見る。僕はすごくそれがおかしくて今すぐに吹き出してしまいそうだった。 「夜になると声がして白いモヤがあるって完全に幽霊じゃん!」 笑いをこらえながら言った。するとダーマンは裏返ったような声で焦ったように何か言っていた。なんと言っているか聞き取れなかった。それほどひどく怯えているんだろう。 「あれ、怖いの?」 明らかに怖がっているダーマンに僕はさらにいやらしく問いかける。たぶん今の僕の顔は悪人面でニヤニヤしていると思う。 「そ、そんなわけないだろ!」 ダーマンは負けじと声を張り上げる。でも声量はすごいものの声が震えていて大声を出して誤魔化しているのが丸見えだった。ダーマンの右隣ではデュートと話すソフィアさんが驚いてこちらを見て固まっていた。ついに僕は我慢していた笑いが限界を迎えて吹き出してしまった。腹を抱えて笑う僕と強ばった全身の力がなかなか抜けないダーマンにデュートが利き手である左手を握りこぶしにして同時に思い切り頭を殴った。その痛みと衝撃に頭の上にひよこを泳がせた僕とダーマンはその場にへたれこんだ。ソフィアさんは少々驚いていたものの仲が良いのですねと微笑んでいた。 「なんか……」 突然小さくライルの声がしてバレストリの肩に寄りかかっているライルの方に視線をやると珍しく目をパッチリと開けて起きていた。みんなの視線がライルに寄せられている。 「なんか……胸騒ぎがする。peaceでなにかあったのかな」 To be next scene…
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