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 この世界には《魔物|まもの》、というものが『いる』。  《魔物|モンスター》ではなく、単純に魔力を持つ生き物のことを総称として《魔物|まもの》と呼ぶ。つまり、人間も魔族も動物も魔力を持っていれば魔物だ。魔草などは桜子がいた世界の漢方薬のように珍重されているし、魔力を持った動物は不思議な外見をしているものが多く、愛好家もいるほどだ。  ただ、この呼称だとコノンは魔物ではなく、エレインは魔物であるという認識になる。事実そうなのだが、人間でも膨大な魔力を持つ個体が希少ながらいる一方で、魔族でもまったく魔力を持たない個体も大勢いる。魔力というものは、今だに解明されていないことが多い謎のエネルギーだ。  では、《魔物|モンスター》に該当する生き物、例えば神話やゲームに出てくるようなスライムやゴブリン、ドラゴンが存在するかというと——結論から言えば、存在しない。あくまで桜子のいた世界が生態系の基盤になっている模様で、魔力を持った末に外見が多少変わる魔物はいても、まったく異なる生き物として突然変異や変態、進化をするということはないらしい。もし太古の昔、恐竜が魔力を持っていたらドラゴンになっていたのだろうか。生憎とこの世界の古代生物学はあまり進んでいないので、発見は未来に期待するしかない。  そして、《魔物|まもの》学というものが存在する今日のこの世界では、国立アカデミアやバラジェ国立大学校でも《魔物|まもの》は研究されている。魔法とは直接関係がない学問の一分野として確立されているのだ。  今、なぜそんな話をしているかと言うと、朝、エレインの元に一通の手紙が届いたからだ。  以前、祖父の大魔道師を通じて魔道師学校マギアスコラを紹介したハイラム・テューラーから、こんな手紙が届いた。エレインは箒に乗りながら手紙を読む。 『拝啓 エレイン・ディクスン様。寒さ和らぎ始めた春のこの頃、いかがお過ごしでしょうか。王都ウィーケーティアではあなたのお祖父様にもよくしていただいており、感謝の念に堪えません。さて、お手紙を差し上げるにあたり、少し特殊な事情がありまして』  特殊な事情。  エレインは首を傾げる。何かを斡旋してほしいだとか、そういうことなら大魔道師である祖父に頼んだほうがよさそうなものだが、ハイラムは何を言いたいのだろうか。  エレインは手紙の続きを読む。 『……友人に国立アカデミアで魔物学を研究している人物がおり、その人物曰く、先天的な痣を持った生き物——失礼ながら、エレイン様もそうですね——は莫大な魔力を持つ傾向にあるそうです。しかし痣であれば何でもいいというわけではなく、一定の規則性があることが最近の研究で分かってきたそうです。先天性紋様痣と呼ばれるそれは、エレイン様が超極大魔法を撃てるという事実の解明にも繋がるのではないかと思い、お知らせしようと思った次第です』  なるほど、先天性紋様痣。そう言えば、ハイラムはバラジェニカ魔法研究所というところで超極大魔法の研究を始めたいがために、古代語の研究をとわざわざユーファリアの魔道師学校マギアスコラへ留学してきた変わり者だったことを、エレインは思い出した。  つまり、エレインは星型の痣があるから莫大な魔力を持ち、超極大魔法を撃てる、ということだろうか。 『もっと言うと、これは『星降る夜に産まれた子は、《大魔道師|マグナス・マギ》の運命にある』というあなたのお祖父様から聞かせていただいたユーファリアの言い伝えと関係があるのではないでしょうか。さらにとある彫り師の人物にも話を伺ったところ、星型の刺青は扱いが難しいため基本的には彫らない、という言葉もいただきました。扱いが難しいというのは、普通の人間では魔力量が少なすぎて星型の刺青を入れても効果が現れない、という意味です』  このあたりの手紙の文字は、ハイラムは興奮して書いたのか、若干字体が乱れてきていた。ただ、因果関係はこれからさらに調査を進めていく、という文で終わっている。  星降る夜に生まれたから星型の痣を持つのか、それとも星型の痣を持つから星降る夜に生まれるのか。  何だか、鶏が先か卵が先かという話になってきた。そのあたりエレインは専門ではないため、ハイラムと友人の研究の進捗を見守るしかない。 「というよりも……ハイラムさん、私よりお祖父様と仲良くなっているわよね」   誰もいない空中で、エレインは独り言ちた。
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