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「はぁ~、何で入学初日からこんなハードなんだよ。どっかにイージーモードに切り替えるボタンとかねーかな…」 最寄りの駅からの帰路、手提げ鞄を肩越しに持ち、ため息と共に吐き出す。 入学初日、そう、まだ一日目なのだ。これが後三年は続く事になると思うと気を落とさずには入られなかった。別に美月や静香姉が嫌いな訳ではない。一緒にいて楽しいとは思うし、現在は美人、美少女になっているのだ。何か優越感を感じさせるではないか。しかし、美月も静香姉もやけにスキンシップが多いのだ。スキンシップ自体は小学校の時からあった。しかし、俺達の身体は小学生の時とは比較にならないほど成長している。小学生の時とほとんど変わらないような身長の美月でさえ、あれだけの成長を果たしていたのだ。どことは言わないが… その状態で抱き着いてきたりされては、健全な男子高校生からしたら堪ったものではない。プラスそれを見た周りからの嫉妬や憎悪の視線に晒されては、俺の高校生活は不健全で不健康なボッチ街道まっしぐらだ。それだけは何としても避けたい所だ。あ、海斗がいるか… そんなことを考えていると、もう家に着いていた。しかし、俺はドアを開けるのを躊躇った。それは何故か?家にもう一人居るからだ。俺を不健全で不健康にさせるような存在が… 意を決して扉を開けようとするが、ドアノブが掴もうとした手を逃れ、俺の右手が空を掴んだ。 …!?しまった!油断した!! 気付いた時には既に手遅れだった。 「兄ちゃん!お帰りーーー!!!!!!!」 飛び出してきたのは、野生のポ〇モンではなく、これまた美月に勝るとも劣らない美少女だった。 「ぐほぁぁっっ!?」 咄嗟の事に受け身すら取れず、情けなくも尻餅を突き、抱きついてきた美少女に怪我をさせないように抱き締め、強かに背筋を地面に叩きつけられた。 「…ただいま、雪穂。今度からなるべく家の中で待ってような」 左手で痛む背中を擦り、空いている右手で雪穂の頭を撫でると、にひひーっと年相応な笑顔を見せ、俺の上に馬乗りになる。 柏崎雪穂…俺の妹であり、現在小学五年生。共働きの両親の代わりに世話をしていた所為か、大分ブラコンに目覚めてしまった。早くなんとかしなければ… 「兄ちゃん!入学式どうだった?楽しかった?友達出来た?いっぱい聞かせてよ~」 まるでマシンガンの様に質問に次ぐ質問を被せてくる。さながら、甘えたい柴犬みたいだ。もし雪穂に犬の尻尾が生えていたら、今頃全力で振ってるだろうな。 「とりあえずどいてくれるか?このままじゃ動けないんだけど」 「えー!良いじゃん!このまま抱っこして連れてってよ~」 雪穂が両手を広げ抱っこを催促してくる。だからお前がどかないと動けないんだって… 「分かった分かった。してやるからどいてくれ」 そこまで言ってようやく雪穂が、俺の上からどいてくれた。 「それじゃ!頼んだよ兄ちゃん」 満面の笑みで抱きついてくる。それを待て、と制止し、とりあえず言いたかった事を言わせてもらう。 「っていうか雪穂。お前この間兄ちゃん離れするって約束したよな」 雪穂がギクッと肩を震わせる。ソロ~っとこちらを向くと 「私そんなこといったっけ」 わー、凄い棒読み。もはや才能すら感じさせる。手で口元を隠し、首をかしげる姿は可愛いが、ここで妥協しては雪穂のブラコンが治らないような気がした。 「俺は一言一句覚えてるから問題無い。雪穂、お前五年生になるから兄ちゃん離れするって俺の前で約束しただろ。しかも一昨日」 すると雪穂はあたかも昔の事を懐かしむ様に遠くを見た。 「あの頃は若かったなぁ…」 こんなシーンなんかのドラマで見た気がするわ~ 「なにが若かっただ!一昨日だっつってんだろ!」 雪穂がサッと視線を逸らすと、途端に俺から離れ、家の中に入っていった。 「兄ちゃん!雪穂お腹へった!今日のご飯何?」 そんな捨て台詞を吐いて… はぁ、一度ため息をつくと、俺も鞄を取って雪穂の後を追って家に入る。 「雪穂、手は洗えよ。今日はハンバーグだぞ」 やったー!っという声が響く。 ちなみにご近所ではこのやり取りは、もはや日常茶飯事であり、暖かい目で見守られていたりする。
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