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 いつもわたしは空を見上げる。宇宙まで行かなくていい。行かなくても、限りの無い空がどこにいても続いているのだから。彼氏いない歴ウン十年。これはわたしだけの問題では無い。一昔前? いいや、かなり昔、直接会話をするしか出会う機会なんて訪れなかった時代なら、勢いに任せて彼氏の一人や二人どころかすぐに結婚までしていたというから、羨ましいやらそうでもないやら。  アラサーにもなると、それまで積極的に誘いをかけてきた男連中は、スマホのアイドルばかり見始める。それはね、分かるよ。面倒な女というレッテルが張られるのも、アラサー辺りからだから。だとしても、想うのは自由であっていいはずだ。ただ、わたしはどうしようもなく運がない。 「……え? 既婚者ですか? いえ、不倫とかそれって愛せません」  好きになった男にはすでに決まった相手がいる。それは高校どころか、小学生の頃からだった。好きなのに、どうしてすでにいるのかな。その頃から面倒な女だったのだろうかと、自問自答している毎日。  残念なことに、最近は異性と手も繋がない。握手なんて営業でもしない限りしない。ううん、そもそも日本人である以上、滅多なことでは握手も交わさないのかもしれない。密着は毎日の通勤電車で、嫌というほどしているのに。それでもその距離感はまるで別物。好きでもなければ、どうでもいい。話も交わさない男女と隙間なく密着しているだけのこと。ただただ、ストレスを抱えるだけの毎日。  だけれど、雲一つ浮かんでいない真っ青な空を眺めると、そんな黒い思いすらどこかへ飛んで行ってしまいそうな気分になれる。とにかく空ばかり見ていた。そしてそんな暇な女を気にしてくれる、物好きな男《|ひと》も稀にいてくれるものだ。 「この場所でいつも上を見てるけど、何が見えんの?」 「空」 「だよな! 俺もそう思った。2係の月城《|つきしろ》だろ?」 「ですけど? そういうあなたは同じ係のおっさん」 「ひでえな。こう見えてまだ30代よ? 若いだろうが!」  名前は知っているけれど呼ばない。親しくないしね。つまり、こういう素直になれない所が面倒なんだと思う。自分でもそう思うよ。でもほんと、これくらいが出会いの限界なのかもしれない。SNSでの出会いなんて、そんなのはもううんざり。そうすると、必然的に今みたいな男に目を付けられるくらいしかないわけで。 「後半?」 「中間」 「あぁ、うん。そうだと思いました」 「愛想無いって言われねえ?」 「いえ、面倒くさいって言われます」  他愛も無ければ可愛げもない、前にも後ろにも進まない会話。会社の屋上で同じ係の男と会話なんて、こんなもん。こんなもんだったのに、それが数か月以上も続いてしまうとどういうわけかお互いが意識しだす。嫌いじゃなくて、うざくもならなければ……の話。わたしは真ん中。好きじゃないけど、まぁ別に。 「――転勤? そ、そうなんだ。元気でね?」 「月城、お前も元気で! まぁ、あれだ。ウチの会社って無意味に転勤させっから、お前もそのうち……」 「断るけど?」 「それでも万が一だ。同じ所に転勤してきたら、会わないか?」 「アラフォーでもよければ」 「構わねえよ。月城はどうか知らないけど、俺はお前のこと嫌いになれなかった。ま、そんだけ」 「空を見上げて、願ってれば会えるかもよ? ずっと続いてるわけだし、どこかの空の下にお互いが存在しているわけだし?」 「いや、空にも空間がある。それこそ、俺と月城が話している四角い空間な。それをどこかの場所でもう一度作りたい。作れたらその時は――」  転勤ね。支社の数も少ないからそれは可能性としてはあり得るけど、お互いがそれまで何かの見えない縛りでもつけておくとか、それはどうなのだろう。まぁ、それでもせっかく出会えた男だ。いくつになったとしても、同じ空の下で再会でも出来たら、その時はわたしも彼の所へ行くとしようか。
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