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 「やあ、月がきれいだなあ」 満月が映える夜、黒いスーツを着た少女が一人。 何も荷物を持たず、のんきに歩いている。 「いつもは月が見れないからなあ。やっぱり夜の散歩は楽しいよ」 散歩、といっているが近くに家も村もない道の真中だ。 「ずっとこのまま歩いていたいけど…無理みたいだな。火事か」 少女がいるところからずっと遠くに赤い光が見える。夜だからはっきりと見える。 少女が向かう途中、 「どうしたんだ、その怪我は?」 血を流している少年が足を引きずりながら歩いてきた。 「ッ誰?」 「ぼ・く・はタルタロス。大丈夫。君の味方だよ。血が出ているけど何があったんだ?」 「…村がモンスターに襲われたんだ。あそこの火事になってるとこ。お母さんが逃げろって言うから逃げてきたんだけど…うう」 少年は人に会えたからか泣き出した。 夜だからよく見えないが腕と足から血を流していて頭を抑えていた。 「一人でここまで逃げてきたのか。災難だったね。とりあえず、その怪我、治すよ」 少女が手をかざすと少年の怪我が一瞬で治った。血も消えた。 「あれ?痛くない?お姉ちゃん、何をしたの?」 「君の怪我を吸い取ったんだよ。全部治ったはずだよ?」 「あ、足も動かせる!お姉ちゃん、ありがとう!」 「ふふっどういたしまして。」 「…ねえ、お姉ちゃんって強い?」 「なんだい急に」 「僕の怪我、お姉ちゃんは牧師さんより早く治した。もしかしてお姉ちゃんってものすごく強いの?」 少女は少し悩んだが、 「うん。強いよ。なんで?」 「僕の村を助けてほしいんだ。お願い!」 「言われなくてもするよ!君の村に行く途中だったんだから!」 「…!ありがとうお姉ちゃん!村はこっちだよ!」 少年に案内されながら二人は村へと走った。 村では大きな蜘蛛のモンスターが暴れていた。 あちこちから火が出てまるで昼のような明るさだった。 「そっち言ったぞ!」 「助けて!」 「それどころじゃない!ってうわぁ!」 阿鼻叫喚。と言ってもよいだろう。この村はそれなりに大きいが炎は燃え盛り、家の壁が崩れ、人々は逃げ惑い、怪我をした子供を連れた母親がモンスターから逃げていた。 「ああ!」 母親と一緒に逃げていた子供が瓦礫につまずいてころんだ。 後ろから巨大な蜘蛛のモンスターが追いかけて子供に襲いかかろうとする。 「嫌だ!助けて!」 子供が叫ぶ。しかし周りの助けも間に合わず、大きな前脚が振り上げられた。 ジャラジャラと鎖の擦れる音がした。 「間に合ってよかった」 子供が恐る恐る目を開けると、蜘蛛の脚が鎖で縛られ、直前で止まっていた。 「早く!今のうちに逃げるんだ!」 子供はさっと逃げて母親のもとに行った。 「さてと、こいつはどうするか。」 少女は両手で鎖を持ち、蜘蛛の動きを抑えている。 「ギギ……」 蜘蛛は鎖をほどこうと前脚を動かすが、動かない。 「まずは、前脚。」 少女がグイと引っ張ると蜘蛛の前脚がちぎれる。 「ガァ!ギィィィ!」 断面から血が吹き出る。 蜘蛛は少女の方を向き、口から糸を吐いた。 「なっ口から糸を!」 少女は一瞬驚いた。そのせいで糸は少女の体をぐるぐる巻きにしてしまった。 (こいつ、魔法が使えるのか) 蜘蛛はしめしめと言ってるかのようにこっちに来る。 「このタルタロス様を舐めるなよ!蜘蛛風情が!」 少女の体は炎に包まれ、あっという間に糸は切れてしまった。 不思議なことに、少女の服は全く燃えていない。 周りが驚く中、少女は糸の燃えカスを鎖で振り払う。 「もう容赦しないぞ!」 少女がもう一本の鎖を手のひらからだし、蜘蛛に向かって放つ。 蜘蛛は何本も糸を吐いてくるが鎖はまるで意思があるかのように糸をはねのけ、蜘蛛の体をぐるぐると周り、縛り上げた。 「ギッ?ギイイイイイィィィィィィ!!」 蜘蛛は動けなくなり、怒りで狂ったように鳴き声を上げる。 少女はつかつかと蜘蛛の前に立ち、 「うるさいなぁ。声を」 少女は握っている鎖で蜘蛛の頭をぺしんと叩く。 すると蜘蛛の鳴き声が止んだ。 群衆の一人が言う。 「え?死んだ?」 声が急に止んだので死んだと思ったのだろう。 「いいや死んでないよ?声を奪っただけさ。」 「奪う?」 蜘蛛は声を出せなくなったことに驚いたのか更にもがく。 「もがいても無駄だよ。その鎖は絶対にちぎれない。」 少女、いや、タルタロスは鎖をギュッと握る。 「君がこの騒ぎを起こしたんだね。この罪は大きい。君の『存在』をもらうよ。」 タルタロスが鎖を引っ張ると蜘蛛の体は風船のように弾け飛ぶ。 が、何も飛び散らず、蜘蛛を縛っていた鎖がジャラジャラと音を立てて落ちただけだった。 そういえば最初の前脚も消えていた。 「た、倒したの?」 「倒したよ?蜘蛛のモンスターはいなくなっちゃった。」 わああ!と歓声が上がる。 「ありがとうお姉ちゃん!」 助けた少年がタルタロスのもとに来た。 「どういたしまして。あともう一仕事だ!」 タルタロスは鎖を空に投げた。 鎖は村獣を駆け巡り、宙に浮いた。 「炎を」 タルタロスがそう言うと村獣の炎が一瞬で消えた。村が一気に暗くなった。 「炎が…消えた?」 「奪ったんだよ、炎を。これで村中の炎は消えたはずだよ?」 「む、村全部の?」 周りは喜びと驚きで騒ぎ始めた。 その時、一人の男が叫んだ。 「タルタロス…タルタロスか!」 「ん?」 「鎖を使って黒い服を着ていて…あの噂のタルタロスじゃないか?」 「あー知ってたか。うーん。そうだよ。僕がそのタルタロスさ。だけど忘れてもらう。」 漂っている鎖が波打つ。すると村人全員がバタバタと倒れていった。 「お、お姉ちゃ…」 「僕に関する記憶は奪わせてもらった。僕はあまり知られちゃいけないからね。 タルタロスは鎖を回収し、村を出た。 「今回は豊作だったなぁ。蜘蛛に炎に記憶、これはいい鎖ができそうだ。」 キーンと金属の澄んだ音がした。 タルタロスの手のひらから金属の環が落ちた。 「うんうん。予想通り、いい鎖だ。」 タルタロスはそれを拾い上げカチッと持っている鎖につないだ。 タルタロスは満足そうに鎖を回しながら闇の中に消えていった
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