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「ウ”……ウ”ウ”……ガアッ…アッ……、ッカハーーーーヒュッ、ッカハーーーーヒュッ、グッ………………………………………ッハーーーーーーーヒュッ、ガィッ……………………………………………ッハーーーーーーーーヒュッ」  風呂を作ってから数ヶ月、彼女の叫び声は、だんだん、だんだん小さくなってる。  石化の進行には気付いていたが、起きてるときの彼女の様子がそう変わらなかったから、あまり不安に思っていなかった。つい一ヶ月ほど前までは。  その頃からだろうか、まず毎朝の叫び声の調子が変わってきた。  今まではとにかく叫び倒していた。…正直煩いと思ったことも何度かある。もちろん思うだけだ。彼女のほうが辛いんだ。  でも最近は、叫ぶというより呻くと言った感じになってきた。  叫ぶエネルギーを少しでも痛みに耐えるエネルギーに回したいのか、叫ぶとよりいっそう痛くなってしまうからかなのかは解らない。  どちらにしろモニが無意識でやっていることだ。俺はただ、手を握って頭を撫で続けるしか。  「グッ………………………………………ッハーーーーーーーヒュッ、ガィッ……………………………………………ッハーーーーーーーーヒュッ、ア”グッ…………………………………………………ッハーーーーーーーーヒュッ、ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ”ィ” ………………………………………ッハーーーーーーーーヒュッ」  落ち着くまでの時間も長くなっている。  今までは宥めるとすぐ落ち着いてくれてた。本当、すぐにさ。  でも、最近では、声を掛け始めてから10分ぐらいは呻いている。多いときは30分掛かる時もある。俺はずっと声を掛け続ける。それしか出来ることがないから。  もっと俺に出来ることがあるんじゃないかと思って、治癒魔法みたいなものはないかと聞いた。石化の呪いの解呪は出来なくても、進行を止めたり遅らせたり位は出来るんじゃって、思って…。  治癒魔法というものはある、とは言われた。治癒魔法も幾つかの種類があるらしいが、そのいずれもリヴェータ教が独占していて、一般人はその手法を知ることが出来ない…。これはリヴェータ教の生命線になっているらしく、例えば、他の魔法使いが独自に治癒魔法を開発しても、それを全力で潰しに来るんだそうだ。だから、リヴェータ教以外の人間が治癒魔法を習得することは出来ず、出来たとしてもその方法は絶対に広まらない。俺も色々治癒魔法の訓練をしてみたけど…、全然うまくいかない。  なんで…。俺には魔法の才能があると…。 「………………………………ッハーーーーーーーーヒュッ、………………………………ッハーーーーーーーーヒュッ、………………………………ッハーーーーーーーーヒュッ、………………………………ッハーーーーーーーーヒュッ」  彼女の頭を撫で続ける。ゆっくりと。もう一方の手はお腹を撫でている。今までは手を握っていたのだが、もう感覚がまったくないそうだ。それよりは感覚があるところをさすってほしいと言われた。多少痛みが和らぐようだ。 「大丈夫だよ…………、後もう少しで楽になるからね……………」  恥ずかしがっていてやめていたけど、また声を掛けてる。  モニの痛みと比べれば、俺の恥ずかしさなんて些細な事だから。  魔法の訓練といえばだ、属性魔法と肉体強化と身体強化以外の訓練はうまくいっている。  つまり、ほとんど変わってない。  訓練は継続しているが、目に見えた成長がない。これで、打ち止めかと思ってもうやめようと思ったらモニに叱られた。こういう基礎的な訓練は毎日続けるから意味があるのだと。目に見えて成長がないなんて言うのは当たり前のことだと。それでも、続けることに意味があるのだと。  訓練出来る事自体が幸せなことなんだと。そう言われた。  モニが言うからこそ言葉に重みがあり、無下には出来ない。  だから訓練は続けている。少しでもサボったらモニに失礼な気がして。ちゃんと生きている、偉大な彼女に。  魔力の増加訓練と操作訓練は順調な気がする。  一日中、ナイフを作り続けても、魔力が減ることはなくなってしまった。ただ、ナイフの刃先に魔力を集中して加工すると、魔力の劇的に減ることに気づいてからは、その方法を使ってナイフを作り続けている。それと一緒に魔力操作の方も上達していると感じる。特にスピードが早くなっている。それになんの意味があるかは分からないが、まぁ、魔力を増やすためには丁度いい。  最近は、ナイフを使わなくても石が加工出来るようになった。手の爪の先端の部分に魔力を集中させ、自分の手がナイフになったイメージを持つと、ゆっくりとではあるが石が削れることに気付いた。それからは、自分の手だけで石のナイフを作るようにしている。一日一個作れば、魔力が空っ穴になるから、最近はまっている。 「………………………………ッハーーーーーーーーヒュッ、………………………………ッハーーーーーーーーヒュッ、ハーーーーーーーー……スーーーーーーーー…ハーーーーーー……スーーーーー」  …最近は特に訓練するための時間がない。  モニの体調が悪くなり始めて、モニに時間を割くことが多くなった。  それ自体は別に苦でもないが、モニの言葉もあり、せっかく今まで続けた訓練も無駄にはしたくない。  だから、試行錯誤して短時間で終わらせることが出来るこの訓練方法を見つけたのは運がよかった。  彼女はもう、…食事も満足にできない。  もう、固形物をあまり食べられない。調子がいいときは一口二口食べるが、それ以上はもうどんなに頑張っても無理だ。  アルゴの実のような果物は、絞ってジュースにして飲ませている。このジュースを絞る器具も自作した。親父がレモンサワーを家で作ってる時に見た物だが、メキシコ人の帽子みたいな物を作れば、果汁が絞れる。非常にシンプルで効果が高い。何より作りやすいのが良かった。  とはいっても、果汁ジュースだけだと体力がなくなるから、普通の食事も取ってもらう。出汁を取ったスープと、じっくりと火を通した鶏肉、野草類をペースト状になるまですり潰す。水っぽいドロドロな状態にして食べて貰っている。もんじゃ焼きの状態だ。味自体は結構好きな味なんだよね。ちなみに、すり潰す為の乳鉢と乳棒は自分でうまく作れた。  …最近は困ったら取り敢えず作るかって思考になっている。どこでも生きられる自信はついたかな。  ん?  「スーーーーーーーー…スーーーーーーー…スーーーーーー…パチッ」  モニの目が覚めたか。  「おはよう。モニ」  「…………………」  返事はない。  俺は、いつもどおり朝食の用意を始める。  最近は薄く削り出した石の箱を作り、それを川に沈めている。最近暑くなってきたから、アルゴの実をそこに保管しておくと腐らない。川の近くに拠点を構えているから、アルゴの実自体は近くの木に沢山なっている。わざわざもいで置く必要もないのだが、こうしておくとすごく冷える。朝からキンキンのアルゴジュースが楽しめるわけ。川の水って意外と冷たいんだな。  ついでに、この石の箱を他にも幾つか作り、鶏肉を保管している。結構長持ちするようだ。このストーンボックスのおかげで我々の食事事情は少し豊かになった。  アルゴジュースの準備をしている間に、ごっちゃんこスープが煮えている。もちろん、こまめにアク取りは忘れない。今日は、あら汁風のスープになった。まず、いつもどおり、山菜ときのこ類を投入し、その後魚を入れている。  この魚、川の上流の方に生息していることが判明し、とにかく必死で捕まえた記憶がある。最初は、モニに教えてもらった糸を使い、釣り竿を作った。針の部分は石だ。餌は、鶏肉をどろどろにすりつぶし、つくねみたいな状態にした。虫でいいじゃんって言われたけどさ、嫌でぇ~っす。  しかし、釣れなかった。全く、釣れなかった。餌が悪かったのだろうか……。  次は、罠を試した。前にテレビで見たことがある。鉄◯ダッシュという番組だったかな、竹細工で出来たかごを2重に重ね、一つは底に穴を開け、魚が戻らないように返しをつける。もう一つは、ただのかごだ。もちろん水は抜けるが、魚は抜けない程度の網目にしていた。  俺は、この罠を試した。もちろん材質は石だ。他の川の流れの部分は堰き止め、罠の部分だけ水が流れるようにした。その後、反対側から大騒ぎして、罠に近づいていく。成果としては大量だった。  魚の調理法もモニに教えてもらった。  とは言っても、鱗を剥いで、内臓を取り出すぐらいのものだった。それを火で焼き塩を降って食べた。久しぶりの魚料理に感動した。  こういった感じで、定期的に魚を取っている。この魚を使ったスープの出汁が非常にうまい。鶏肉がコンソメ風だとすると、魚は味噌汁風というか…。とにかく日本人の俺にあった味付けとなった。  魚入り山菜のスープにいつもなら塩だけでの味付けなのだが、今回はジチの実も追加する。これは、ある木に大量になっていた2~3ミリくらいの黒い実なんだけど、これをすり潰すとコショウのような味になる。いや、コショウよりも多少辛味があるだろうか。でも、これを使えば塩、コショウの味付けっぽくなった。大体この2つが揃えば、味が引き締まる。 さて、味付けが終了したら、スープの中の具材を全て取り出し、すり鉢に投入。乳棒ですり潰す。時間はかかるが、これでモニ用の食事は完成だ。  「はい。どーぞ。」  ちなみにこのスプーンも作り出した。これは木で作った。石で作るとちょっと口触りが気になる。木を削り出したほうが、なんとなく食べるときに違和感がない。  「……………………………今日は食べたくない。」  「そっかー…、じゃあ、アルゴジュースは飲む?喉乾いてるでしょ?」  「味付いているのがやだ。水が良い。」    「分かった。じゃあ、川から水を汲んでくる。少し待ってて。」  俺は、川に向かって水を汲みに行く。  ちなみに、アルゴジュースも魚入り山菜もんじゃもモニの目の前で作っていた。  俺は、川の水を汲んできて彼女の口元に持っていった。  彼女はそれを一口飲んだ後言った。  「アタシ冷たいの嫌って言ったじゃん!冷たいの飲むとお腹が痛くなるの!すっごい痛くなるの!」  「ごめん、ごめん。すっかり忘れてたよ。今から温めて白湯にするね?」  「なんで忘れるの!?あたしのことどうでもいいって思ってるんでしょ!?どうせ死ぬから!覚えても無駄だって!思ってるんでしょ!!!!」  「そんなことないよ。そんなことない。ちょっと最近寝不足でさ、朝は頭が働いてないんだ。」  「あたしのせいってこと!?あたしの世話で寝る時間もないってことなんでしょ!」  「いや、違うよ。魔力の増加訓練が最近うまくいっててさ。ついつい夜更かししちゃうんだ。勘違いさせてごめん。」  「…………………………喉乾いた。」  「ん。わかった。」  俺は、鍋に水を半分投入し、沸騰するまで待つ。熱々の状態だと飲めないので、ちょうどいい温度にするため、残りの水で温度調整をする。我が姫は繊細な方なのだ。もちろん料理中は笑顔を絶やさない。真面目な顔をすると「怒ってるんでしょ?」と仰る。我が姫は臣下の気遣いもできるのだ。  ちょうどいい温度になった白湯をモニの口元に持っていく。  「………ゴクッゴクッゴクッ」  今度はお気に召した様で、一気に飲み干す。  「…………………おかわり。」  「はいはい。」  二杯目の白湯も飲み干す。二杯目は一杯目よりも少し熱めにする。ふふ…ここが出来る臣下の腕の見せどころよ。一杯目で慣れた舌にちょうどいい温度のはずだ。石田三成先生、あなたの意思はここに受け継がれておりますよ。  二杯目を飲み干した頃合いを見計らって、声をかける。  「どう?魚じゃなくて鶏肉なら食べられる?」  「………………食べる。」  俺は今朝の料理の魚を鶏肉に入れ替えたバージョンを作り直す。  先程作ったアラ汁風もんじゃは後ほど私めが頂くとしよう。  鶏肉もんじゃをモニに食べさせた後、一息つく。  「ん~~~~~、今日は結構いい天気だね。」  「…………………」  「だんだん暖かくなってきたし、やっぱりこっちにも季節ってあるんだね。」  「……………………」  「でも、花粉がなくてよかったよ。あ、知ってる?花粉症って病気が地球にはあったんだけどさ、春先は大変でもう涙鼻水ダラダラでさ~、本当つらいんだから。鼻のないメリィが羨ましいよ。」  「ギュシッwwwwwwギュシッwwwwww」  「……………………」  最近はメリィがよく話に乗ってくれる。モニが構ってくれないから暇なんだろう。まぁ、場が持つから正直助かってるが。  「そうだ!今日は天気が良いから、浮島の端にピクニックに行こう。風景もきれいだし、布団も日干ししたいしさ!」  「…………………行く」  「よし!そうと決まれば準備だ準備!メリィ!お前は食料運び係な!」  「ギュシッ!」  最近気づいたのだが、メリィは結構重量のあるものを運べる。  意外と力持ちなのだ。  だから、ストーンボックスに、アルゴの実と日干しした魚、山菜類と調味料、あと調理器具類をしまい、メリィに持たせる。  俺は、敷布団を屋根付きベッドの屋根の上に掛け日干しの準備を終える。  その後彼女を背負い、川の下流に向かって歩く。  昔だったら、速攻で息切れしてただろうが、今はそんなことはない。  頻繁に島を探索したりして、体力がついてきた。筋トレもしてるし、彼女を背負って歩く位わけない。  あと、肉体強化だが、実は歩くだけなら強化出来るようになった。早く走ることは出来ないし、高くジャンプしたりも出来ないからあまりうまくいってはいない。でもまぁ、長く歩き続けることは出来るようになった。…スピードは結構遅くなるが。ただ、この肉体強化を使えば、全くと行っていいほど疲れない。  なんかちょっと楽しいな。あそこの風景を見ればモニも少しは気分が晴れる。  「おっ!変わった鳥発見!」  「あれ?ここにも魚いたんだ!」  「メリィ隊員!ふらついてるようでありますぞ!」  「ギュシッ!wwwwギュシッ!wwwww」  「……………………プッ」  「…………………ッチ」  お、笑った。久しぶりにモニが笑ったようなきがする。  あ、最後のやつは俺がメリィの鳴き声を真似ただけだから。  結構似てると評判だ。細かすぎても通じるっていいよね。  は~、やっぱりこの景色は絶景だ。こんなの地球じゃ見れない。ここに来ていいことの一つだな。  今日は雲が多い。この浮島の下に敷き詰めるように雲が漂っている。  雲海…というのだろうか。まるで海みたいだ。他の浮島も見える。大きいのから小さいのまで、様々な島がある。南国の海の景色みたいだな。小島が沢山ある風景と似てる。あれなんか、城が見えるんだけど。そういうこともあるのか。ほら、あそこなんて海蛇が見える。あ~いう生き物もいるんだなぁ…。  ……ん?あれでかくね?だいぶ遠くにあるから遠近掴み損ねたが、大分遠くだよな。それで、あの大きさって…。  「あれはドラゴンよ。ドラゴン族の浮遊種。生まれてから死ぬまでずっと空を漂い続けると言われてるわ。」  「っへー、寝る時もってことだよね。交尾とかどうするんだろう。」  「空を飛びながらすると言われているわ」  「そりゃ贅沢な生き物だね」  「?なんで?」    「ベッドが雲海で天蓋が大空ってことでしょ?豪華な交尾だ。」  「フッ…そうね。」  久しぶりに穏やかな時間だ。  せっかくだからと昼食の用意を始める。  薪はそこらで集めてきたものだ。火をつけるのはもう簡単な作業になっている。だって魔法使えるし。  島の端は風が強いから、衝立を用意する。手で削り出すのも慣れ始めた。10分位で風から守るための石の板を削り出した。というより、こねくり出してるって感じだけど。ま、ちょっと硬い土程度だったからかもしれないが、かなり早く出来た。  今回はフライパンだ。  山菜と、鳥の油を混ぜて炒める。  炒めた後、塩、ジチの実で味付けする。  これをすり潰した後、今朝の残りの鶏肉スープの汁と混ぜる。少しおかゆのような感じになったが、なかなかイケる。  「はい、どーぞ。」  「……………モグモグ…………モグモグ」  うん。今回は気に入ったようだ。  といっても機嫌が悪い時の時間帯は大体決まっている。朝と夜だ。昼は割と調子が良い時が多い。  俺も干し魚を囓る。ジチの実があってよかった。魚の保存にも役立つ。今日は魚をどうしても食べたかったからな。やっぱり魚はうまい。  メリィはアルゴの実を囓っている。奴はこの実が大好物だ。  三者三様の食事が終わると、みんなしてぼけーっと空からの景色を眺める。  「上を向いて♪歩こうよ♪、涙が♪こぼれないよ~~~~に…」  適当に思い出した曲を歌う。別にうまいわけでもないが、のどかだったから、つい口ずさんでしまった。  「…………初めて聞く歌ね。故郷の歌?」  「そうそう。俺も少ししか知らないけど、悲しい時でも上を向けば涙が溢れないよ、涙をこらえて歩き続けようって曲だったと思う」  あれ?違ったかな?歌詞をそのまま翻訳した感じになっちゃったか。  「………………いい曲ね。」  「そうそう、いい曲だから、少し聞いただけでも耳に残るんだ」  「…ねぇ、故郷の歌聞かせてよ。」  「え~~~、正直うろ覚えのやつばっかりだよ?」  「適当でいい。聞きたいの。」  姫からのご要望だ、お答えしようじゃないか。俺は知ってる曲をずっと歌った。色々知ってる限り歌ってみたが、特にカントリーロードを気に入ったようだ。歌詞の意味までいちいち確かめるお好みっぷりだ。俺は日が暮れるまでこの歌を歌い続けた。モニもすこし口ずさんでる。  日が暮れた後、俺達は拠点に戻る。  フカフカになった敷布団をベッドに戻し、モニを布団の上に戻す。  そこで一旦、モニには休んでもらい、俺は風呂の準備をする。  水を貯めるのが結構重労働なんだ。最近はメリィも手伝ってくれる。大した量運べないと思ってたが、俺がリビング用のゴミ箱ぐらいの量を一回で運ぶとしたら、メリィはバケツ一杯分ぐらいの量を運べる。結構…、いや、体のサイズから考えればかなりの量を運んでる。俺に当てはめたら、車一台分の量だからな。だから、今となってはメリィ用のバケツを作って渡してある。結構助かっているから。十分水を貯め、ファイヤボールで水をお湯に変える。  ちょうどいい温度になったので彼女を呼びに戻る。  「ア”ア”ッッッッ!!!イ”タ”イ”ッ!!イ”タ”イ”ッ!イ”タ”イ”ッ!イ”タ”イ”ヨ”~~~~!ウウウ~~~!イタイイタイイタイイタイイタイイタイ!イタイ~~~~!イタイ~~~~!」  発作だ。  今までは朝しか無かった発作が、今は夜にも起こるようになった。  本当につい最近の話だ。しかも起きてる時に発作が起こる。今までは寝ているときに起きていたから、耐えていられたんだと思う。この発作が始まってから、どんどんやつれていって…。  「大丈夫……落ち着いて…ゆっくり深呼吸するんだ…」  俺は、彼女の頭とお腹を撫でながら、落ち着かせる。  「大丈夫!?大丈夫じゃない!痛いの!痛いのぉ!なんとかしてよ!大丈夫なんでしょ!」  「そうだね。ごめん…。適当なこと言って…。でも、心配で。何か出来ないかなって。」  「はぁ!?なにそれ!適当なこと言ってたわけ!?ぜんぜん大丈夫じぃぃぃぃ!大丈夫じゃないじゃん!痛い!」  「ごめん。ごめんね……。」  「嘘ばっかり!!!あたしは所詮他人だもんね!!!どんなに苦しんでてもショーには関係ないもんね!!」  「そんなことない。モニが苦しいと、俺も辛いよ」  「お前は痛くないだろ!!痛く!ないだろうがよ!!!何が辛いんだよ!!」  「………………………」  「あたしは!!痛いの!!すっごいすっごい痛いの!!痛いんだよ!!!!」  「……………………」  「あ”~~~~~~~痛い痛い痛い痛い痛い!!!痛い!!どうにかしてよ!!」  「……………」  「痛い~~~~~!!う”~~~~~~!痛い~~~~~~~!痛い~~~~~~~!痛い~~~~~~~~~~~~!!!!う”う”う”~~~~~~~!!!!」  「う”う”~~~~~~~う”う”~~~~~~~う”う”~~~~~~~」  「…なぁ、やっぱりヴィドフニルに行こう。なんとしてでもリヴェータ教の奴に呪いを解呪してもらおう。俺も強くなったし、モニを連れて逃げるくらい出来るさ。」  「う”う”~~~~~~~う”う”~~~~~~~う”う”~~~~~~~」  「ナガルス族のことを話さなきゃいけないんだったら、話しちゃおう。モニがこんなに苦しむことなんてないじゃないか」  「う”う”~~~~~~~…、…………それは、だめ!絶対、だめ!」  「なんでだよ!!何でモニだけが苦しまなきゃいけないんだ!!おかしいだろ!!」  「だめ!!絶対に、だめよ!だめだから。…大丈夫。しばらく我慢すれば収まるから。」  涙を流しながら言ったって説得力はない。絶対に大丈夫じゃないんだ。理由も分からず、俺も泣いてしまう。  彼女に毎晩なじられていると、涙が出て挫けそうになる。  「う”う”~~~~~~~……ふぅ~~~~~~~、う”う”~~~~~~~……ふぅ~~~~~~~」  どうやら落ち着いてきたようだ。ここからしばらく待てば、痛みが引いてくるようだ。  「ふぅ~~~~~~~、ふぅ~~~~~~~、ふぅ~~~~~~~、ふぅ~~~~~~~………………」  「……………………………」  「スーーーーーーー、ハーーーーーーーーーー、スーーーーーー、ハーーーーーーーーーー」  「…………………………」  「…………………」  「…お風呂、入ろうか」  「…うん…」  すっかりぬるくなってしまったお湯に、もう一度ファイヤボールを放り投げる。今度は少し熱めにしよう。体を動かしたから、大分体温が上がってるはずだ。ぬるい温度じゃ、温まった気にならないだろう。  十分温かい温度になってから、彼女を風呂に入れる。  彼女の体をカラシの実で十分に洗っていく。さっき運動をしたからか、少しベタついている。体を洗いながら、石化してない部分をゆっくりとマッサージしていく。気持ちよさそうだ。  彼女は気持ちいい時は口を半開きにして、少しパクパクする。  鯉みたいだ。そこが少し可愛い。  次は頭を洗う。カラシの実で洗うと髪がゴワゴワしちゃうのよね。と言っていた。やはりモニにも女の子の部分があるんだなぁと感慨深かった思い出がある。  でも、髪を洗っているときはどうやら気持ちいいようで、やはり、目をつぶって口をパクパクさせている。  「……ごめんね。……さっき言ったこと本心じゃないから…………」  「大丈夫だって。最初から信じてないからさ。」  「……………ありがと」  これだけで気分が良くなってしまう。  俺ってチョロいなぁ~~~。  ただ、彼女の頭を洗っていて気付いてしまうことがある。  彼女の後頭部、首に近い部分。少し石化が始まっている。本当に一部分だけ、斑に石化してる部分がある。この部分が石化し始めてから彼女が怒りっぽくった気がする。  なんというか、感情の起伏が激しくなったというか。モニが、モニでなくなったというか。  いや、モニはモニだ。これは病気なんだ。病気にかかった後の性格がその人の全てじゃない。    たとえ変わってしまったとしても、俺はモニを見捨てることはしない。  最後までずっといる。最後まで…。……なんとかモニを救う方法はないのか。…くそ…。  呪いを解く方法は?治癒魔術の訓練を今から始めるか。……いや、属性魔法が全然上達しない今じゃ無理なんじゃないか。そもそも治癒魔術は水の属性魔法から派生しているらしい。火、土、風については、少なくとも発動できるレベルにはなったが、水だけは殆ど発動していない。全然うまくいかない。  そもそも、モニの意識があるうちにヴィドフニルに辿り着けるのか?俺達は歩いて向かっているわけじゃない。この浮島の進むスピード以上の速さはでない。全てが終わって辿り着いたとして、意味があるのか?  「ねぇ、ショウ。」  「ん?」  「たぶんね、ショウがヴィドフニルにつくまで私は持たないわ。」  「…………」  「多分全部石化しちゃう」  「…………なんとかしてみせるよ」  「ふふ……子供みたいね。ショーは」  「…………」  「もし、ヴィドフニルに行ったとしても、私のことは人間達に黙っててほしいの。あいつらは何するか解らないから」  「…………モニがそう言うなら、人間には絶対言わないよ。」  「ありがとう、ショウ。ショウはやっぱり優しいね。」  「………紳士だからね」  「フフ……ショウ、好き。大好き。」  「……俺も好きだよ。愛してる。」  「うふふ……、私達相思相愛だったのね。」  「あぁ…知らなかったよ。」  「……嘘つき。」  愛してるなんてセリフ、人生で絶対に言わないと思ってた。  好きとか、大好きとかそんな言葉は言えたかもしれない。  でも、愛してるって言うことはないと思っていた。  でも、たぶん、これが一番正しい言葉なんだ。  俺達はその日初めて一緒に寝た。  彼女は殆どが石化してるから、思春期の男女らしいことはキスしかできなかったけど、それでも俺は幸せだった。  「ショー、ありがとう。ありがとう。あたし、幸せだわ。こんなに幸せでいいのかっていうくらい幸せ。」  「ショー、強く抱きしめてくれる?好きな人に抱きしめられて眠るのが憧れだったの。」  「ショー、さっき歌ってくれたあの曲歌ってくれない。あの歌で眠りたい。」  「ショー、歌い疲れたら私のおでこにキスをして?優しく、何回もして?」  「ショー、思い出した時でいい、好きって言って。」  「ショー、……・・」  「ショー、…・・」  「ショー、…」  彼女が眠りにつくその時まで、彼女の願いを叶え続けた。  偶然だったのだろうか。彼女の願いは全て俺の願いと同じだった。  ▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽  次の日の朝から彼女は叫び声を上げなくなった。  石化は進んでいる。ゆっくりと、確実に。ただ、脳まで進行してしまったのだろうか。  彼女は俺のことを忘れている。
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