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 わたしに関わらないでください―――導かれるままにゲームをプレイすることになった『渚』。ゲームのクリア条件として、彼の守らなければならないキャラ―――『次代勇者』の少女と、彼は何とか出会うことができた。しかし、彼は困惑した。何故ならその少女は、自らの死を望む、死にたがりの勇者だったのだ―――。
かいり
(ID r9hykKTBRCOCE)
5.とある妖精の過去
死にたがりの勇者と守り人
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「新入生呼名。コマンダー最高幹部補佐、梶野黒華」
「はい」
 私は私の仕事を全うしよう。今すべきことは、それだけなんだから!さっきは佳月君に警戒されて、あまり話せなかったし何も伝わらなかっただろうけど、今はへこんでいられない。切り替えは大事だよね……。
「新入生呼名を務めさせていただきます、コマンダー最高幹部補佐の梶野黒華です。今から新入生の皆さんの名前を一人ずつ読み上げます。名前を呼ばれたら返事をした後起立し、壇上の私の方へ一礼してから着席してください。一年一組、赤石楓」
 
 青蘭は変な学校だ。ただ、普通の「変な学校」とはニュアンスが違う。だって普通、新入生の呼名を生徒がやる訳無いもの。まあ、それが青蘭の一番特色のある部分だけど。
 青蘭は授業以外のことに、教員がほとんど干渉しない。だから生徒一人一人が自立し、自分たちの行動に責任を持つ。あえて生徒に干渉しないことで社会に必要な人材を作る───それが青蘭の目指す所だ。
 そんな青蘭に来る人は大人に干渉されることを望まない人や、自立したい人が集まる。「家から近いから」、「偏差値がいいから」という理由で入ってくる人は少数派だ。


積極的な人が多い、と言えばいいのか。まあ、私はその中に入らないけど。
 このスタンスで長くやって来ているから、評価はかなり高い。よく学校崩壊しなかったとも思う。しなかったのは、多分コマンダーのおかげ。青蘭の教育方針が変わってからずっとあるらしいから、下手な部活より歴史が長いし。
 コマンダーっていうのは、普通の学校でいう生徒会。青蘭の場合、生徒会だけだと学校が成り立たなくなるから、より強いリーダーシップをとれる組織が必要だった。それで出来たのがコマンダー。コマンダーが発達していくと、生徒会は不要になって、無くなってしまった。それが長く続いて、今もその体勢でやっている。多分、もう変わらないだろう。
 コマンダーの組織の仕組みについても話そうか。上から、最高幹部、最高幹部補佐、幹部、部所長、一般生徒と続く。一般生徒以上の役職を持つ人達がコマンダー。年にもよるけど、大抵最高幹部と最高幹部補佐は一人か二人。幹部は二十人くらいで、部所長は五十人に近いくらい。それで千人以上の生徒達の活動を支えてる。例えば、行事一つ取ってもコマンダーの存在は大きい。行事の企画、予算組み、運営、実行、後片付け……。それら全てにコマンダーは関わっている。コマンダーがいてこその青蘭というところだ。そしてまさに今、コマンダーの最高幹部補佐である私が新入生の呼名をしている、と。これくらい先生達がやってもいいような気がするんだよな。仕事だからやるけど
。たまに「おい、これくらいはやってくれよ!」と言いたくなるような内容の仕事もあるけど、今さら変えて伝統を潰すと下級生に示しがつかないし、そんな仕事もやっていた先輩達に申し訳ない。そうなると、やるしかないんだよね……。
 そんなことを考えていても、自分の仕事はこなしている。四百人前後いる新入生の呼名も半ばを過ぎた。名簿を一枚、めくって目に入った名前を見て、一瞬固まった。
 御影、佳月。
 駄目だ、平常心、平常心。落ち着け私、呼名はまだ続いている。仕事中に私情を挟んでいい訳じゃないでしょ。ましてや全校生徒に先生達も居るこの場で、コマンダー最高幹部補佐である私が取り乱す?あり得ないって。
 軽く咳払いして一息つく。よし、もう大丈夫。
「失礼しました。続きまして、一年九組の呼名をさせていただきます」
 呼名を進めながら、生徒達の様子を伺う。一般生徒からは不自然だとは思われていないようだ。微妙なのが、コマンダーの幹部達。ばれていなければいいけど、長く一緒に作業することが多いから。不安は残るが、取り敢えず大丈夫だろう。そうしているうちに、
「御影、佳月」
「……はい」



 ヤバい。これは確実に不自然だった。だって今までずっと噛まずに、詰まらずにやって来たのに、今詰まった。さっきといい今といい、コマンダーの面子が立たなくなる!すぐに返事が出来なかったのも、きっと佳月君が不審に思っているからだろう。うわあ消えたい。でももう、進めるしか、ないよね……?
「冬木茜」
「はいっ」
 もうどうにでもなれとしか思えないけど、なるべくさっきまでの調子を取り戻しつつやりたい。落ち着こう、茜の名前はちゃんと呼べたんだから。それにしても、茜って本当に白空の妹なんだろうか。一応二人とも私の従兄弟だけど、あまりに違い過ぎる。兄弟構成的な性格の違いならまだ分かるけど、それだけが違いじゃない。顔立ちも反対と言っていいかもしれない。茜は母親の汐音さんに似た可愛らしさが全面に出たものに、たまに結斗さんの面影を感じる。白空は隔世遺伝したらしく、汐音さんのお父さん、私とは血のつながりの無い方のおじいちゃんに似ている。というか若い頃のおじいちゃんに瓜二つだ。生意気さが隠しきれない、好戦的な表情をよく浮かべるから、屈託なく笑う茜と対照的。確かに兄妹なんだけど、隣に並んでいるところを見ただけでは、きっと初見で兄妹とは分からない。冬木家の兄妹が四人並んでいると、どうなるんだろう?取り敢えず紅兄と朱璃姉は双子だし、顔そっくりだから分かるだろうけど、白空と茜も兄
妹って分かるのかな……?あれ、もしかすると私の家も兄妹って分からないのかな?
 ……思考が脱線してる間に呼名が終わった。この次は軽く祝辞を述べて、そしたら私の仕事は一旦終わり。最後の最後でこけないようにしなきゃ。……途中駄目だったところあるけど、それはそれとして。
「以上で新入生の呼名を終わります。新入生新入生の皆さん、今日から私達は貴方達の先輩です。困ったことがあったら、ぜひ私達を頼ってください。これからの一年間、皆さんと共に、より良いものに出来たらと思います。新入生呼名を務めさせていただきました、コマンダー最高幹部補佐三年五組梶野黒華」
 一礼して壇上から降り、司会者の隣の自席に着く。……終わった、良かった。最後はちゃんと出来たよね、なんとかなった。私は、コマンダーの中の言わばトップツーの位置に居る。だとしたら、コマンダーの顔に泥を塗るようなことは出来ない。失敗なんてしていられない人なんだから。一年、最高幹部補佐として過ごすから、今まで以上に責任も期待も使命感も重い。潰されないようにしなきゃ……!そのためにも私のネガティブは邪魔なんだ。
「新入生歓迎の言葉、閉会の言葉。コマンダー最高幹部、三年八組冬木白空」
 一応、最高幹部の白空が入学式を閉めることになっている。けど、私の胸の中には一抹の不安がある。本当にならなければいいのだけど、どうだろう……。



「おう、じゃあもうたりぃからさっさと終わらせちまうな。入学おめでとう。だが俺に迷惑。かけるような行動すんじゃねぇぞ?面倒だからな。んじゃ、入学式はこれで終わりだ。新入生はコマンダーに誘導されるまでその場で待機。二、三年は一年が出てったら会場の片付けな。解散」
 
 うわあ消えたい。もう最悪だ………………。
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