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 ちょうど海斗達が辺りの蜘蛛を一掃し終わった頃、聞き慣れた高い声が森の中で響いた。三人がその方を見ると、雷と白夜、コノハが走ってきていた。白夜の背後についてくる黒い影の手は、蘭李を握っている。その傍では、蜜柑と秋桜が並游していた。 「いたいた! よかったー!」 「そっちは大丈夫だったのか⁈」 「うん! なんか悪魔どっか行っちゃったみたい!」  男子達の目の前で立ち止まり、どさりと影の手が蘭李を降ろす。蘭李は険しい顔で寝言を呟いていた。 「うう……マグロ……追いかけてくる……」 「マグロ?」  男子達についていた睡蓮が、不思議そうに蘭李を見下ろす。その彼女の頭を、コノハがペチペチと叩いた。 「起きなよ」 「う……?」  ゆっくりと瞼を開ける蘭李。そのまま数回目を瞬かせ、ガバリと勢いよく起き上がった。辺りを見回して、ぼそりと呟く。 「マグロは?」 「もういないよ」 「あ……夢か……」 「どんな悪夢だよ」  安堵したように息を吐く蘭李に白夜が問うが、彼女はへらっと笑っただけで語ることはしなかった。海斗は、立ち上がった蘭李の前に立つ。彼女は気まずそうに視線を逸らした。 「…………」 「…………」 「え、何これ」 「雷、しーっ」  槍耶が雷を黙らせる。沈黙が流れる中、先に口を開いたのは海斗だった。 「悪かった」  瞬間、蘭李の体がピシリと固まった。疑うような眼差しを彼に向ける。 「今回は俺が悪かった」 「…………あ、う、うん……」  思わず返事をする蘭李。しかし彼女にはにわかに信じられなかった。  ―――海斗が謝った⁈ たしかに海斗は悪いと思うけど、まさか謝られるなんて! いやでも、普段も何かあればちゃんと謝ってるか……あたしは謝られたことないけど……。  再び沈黙する二人。それを見かねた白夜が、蘭李の肩にポンと手を置いた。 「じゃあ帰ろうぜ。結構退治しただろ?」 「そうだね。えーっとたしか、闘技場はこっち?」 「あっちだな」  槍耶を先頭に、彼らは闘技場へと足を運ぶ。蘭李もついていくが、一番後ろにいる海斗の少し前について、小さく呟いた。 「あたしは謝らないからね」 「…………」 「だってあたし悪くないもん」 「本当ムカつくなお前。嫌味か?」 「違うよ! あたしだって好きで才能があるわけじゃないし……」 「それ以上何か言うとまた流すぞ」  蘭李は口をつぐんだ。溜め息を吐いた海斗は、スタスタと彼女の横を通りすぎ、前の雷の隣に並ぶ。蘭李は何となくスッキリしなかったが、言われた通り、それ以上は何も言わなかった。そんな二人のやりとりを、耳をすまして聞いていた紫苑は、ふと思った。  ――――――才能が無くて友達を守れなかった海斗は、力を求めて強者を選んだ。才能があったから友達を守れなかった蘭李は、その才能を封じ込めて弱者を選んだ。真逆の道を歩んだ二人だからこそ、衝突することが多いのかもしれない。  でももし、全く逆の立場だったら――――――。 「俺達は、会わなかったのかな……」  彼は、それ以上考えるのをやめた。そして、先へ進む仲間の後ろをついていった。 九話 完
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