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 家から車で約三時間。途中仮眠をとったから少しだけ体調は良い。車から降りてすぐの門をくぐって、まず目に飛び込んできた、巨大な城のような校舎。しかしそれは焼け焦げた半壊であり、窓ガラスもほとんどが割れていた。一目見て「何かあった」と分かる状態であった。  建物の中に入ると、ここが日本とは思えないような西洋風のエントランスホールがあった。だがやはりあちこちが損傷を受けており、決して綺麗とは思えなかった。床や壁には、染みのようなものも確認出来る。 「うわー……まさか当時のまま残ってるのか?」 「ああ。魔警察が調査の為に、誰にも手を出させなかったからな」  ということは、もう音を上げたってことか。本当にあの事件は迷宮入りしちゃうんだな。  直人と拓夜についていき、廊下を歩く。窓ガラスの破片や廃れた武器、服らしきものなど、そこら中に様々なものが転がっていた。 「気味悪いな……ここ」  拓夜がぼそりと呟く。たしかに私も感じた。それはこの惨状を見て言っているのではない。  幽霊が一人もいないということにだ。  普通、幽霊はどこにでもいる。それこそ、ここにはたくさんいるだろうと覚悟していた。それなのに、一人もいない。いる気配すらない。それが余計に不気味だった。 「幽霊はモノノケになる前段階。つまり、未練があれば存在する。よって、誰も未練を持っていなかったと考えるのが普通だが……」 「この学園に限ってそんなことあるか?」 「無いな」  私もそう思う。何が起きたのか分からないが、全員が未練無しなんて考えられない。どこかに移動している可能性もあるが、普通幽霊は一ヶ所に留まるから、その可能性も低い。  なら――――――。 「魂を消された?」 「いや、消されたんじゃない。恐らく、喰われた」  喰われた、か……たしかに消されたより可能性はあるかも。  魂を消す、っていうのはその名の通りなんだけど、天使悪魔の他に私達闇属性も出来ることだ。一方魂を喰うっていうのは、悪魔にしか出来ない。天使も出来ることには出来るらしいけど。  何が違うかって言われると、まあただ単純に消え方が違うだけなんだよなぁ。消されるか、喰われるか。それだけだ。  もし闇属性の誰かがここの魂達を消したのなら、闇軍総帥である影縫が知らないはずがない。さらに、悪魔が幽霊を食べるという行為は、私達人間の食事と同じように、エネルギーを得ることになるらしい。 「だから、幽霊はいないが悪魔はいる可能性が十分にある」 「だな……」 「気を付けてね白夜。いざとなったら守ってあげるからね」 「過剰な護衛はいらないからな」 「照れちゃって」  無視した。さっきまで仕事モードだったのに急に戻りやがって。こいつ仕事モードなら超優秀なのになぁ……。  私達は教室に入る。ここは被害が少なめらしかった。前方の教卓を基準に、弧を描くように並ぶ長机と椅子。相変わらず状態は酷いけど。 「だーれもいねーなー」 「それに越したことは無いだろ」  直人と拓夜が各々歩き回る中、私はふと視線を落とした。椅子に四角い白い紙のようなものか落ちていたからだ。拾い上げ裏面を見ると、それは写真だった。 「え………?」  思わず声が出た。直人に呼ばれた気がしたが、反応は出来なかった。  写真の中で笑顔で写る十一人の少年少女。恐らく制服なのか、黒い服に身を包み、皆楽しそうだった。  その中に、蘭李がいたのだ。  蘭李だけじゃない。コノハも、恐らく蒼祁と朱兎もいた。全員笑っている。蘭李と朱兎は、私の知らない誰かとピースしている。蒼祁とコノハも、いつもの仏頂面ではなく小さく笑っている。  なんだこの写真。  というか、なんでこんな写真がここにまだ残っている……? 「どうした?」  耳元で声が響き、思わず体が震えた。直人が後ろから写真を覗き込んでいた。少し離れ、写真を渡す。拓夜も直人の傍に寄った。 「これは……華城蘭李だよね?」 「ああ。蘭李だよ、間違いなく」 「へぇー。本当にこの学園にいたんだなぁー」  ―――――――――ガンッ  突然の音に、私達は顔を見合わせた。教室の奥―――窓側の後方から、その音は聞こえてきた。直人が拓夜を見てその方を指差す。拓夜は頷き、静かに向かった。私も音を立てないように太刀を抜き、じっと見守る。ある程度近付いたところで、拓夜が右手を振り上げる。影から何本もの黒い腕が周りに出現した。  そして、「一点」へと拓夜が右腕を振る。何本もの腕は、その「一点」へと襲いかかった。 「うわぁあああああああああッ⁈」  ――――――………え? 今の声って……⁈ 「おし! 捕まえた!」  腕達が蠢く何かを押さえ付ける目の前で、拓夜がガッツポーズをする。直後、その「一点」から大量の電撃が四方八方に放たれた。  電撃……やっぱり聞き間違いじゃなかった……! 「拓夜! そいつを離せ!」 「はあ⁈ なんで⁈ 抵抗してんだぞ⁈」 「敵じゃない! 私の友達だよ!」  不安そうな目で私を見る拓夜。少しの間の後、嫌々そうに指を鳴らした。一瞬で腕達が消える。  瞬間、何かが「一点」から飛び出してきた。それは目の前に飛んでくる。銃口を向けられた瞬間、《視界が暗くなっていく|・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・》直前、その姿を認識出来た。  思った通りだ……! 「蘭李ッ!」 「ッ―――――⁈」  ―――――――――――パァンッ
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