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 毎年夏にはここに来ている。だから春に来るのは、今日が初めてだった。かつては立派にそびえていた校舎も、今では廃れた廃墟になっている。そのくせ動植物は住み着かず、妖しげな雰囲気を醸し出していた。  あたしは建物の中へと入る。コノハも人の姿になり、二人でエントランスを歩いていく。どうやら蜜柑は、速さについてこれなかったらしい。電車にはついてくるクセに、何故なんだろうか。 「なんでここに来たの?」  コノハの問いは最もだった。出来ればここには来たくなかった。来るのは怖かった。ましてや一人でなんて、自分でもどうかしてると思う。  ここ、『シルマ学園』に来るなんて。 「……分からない。ここしか思い浮かばなかったから、かな」  コノハは何も答えなかった。じっとあたしを見て、だけど再び前を向いて歩き出す。  バカなことをしてると思う。「あの時」のことを思い出して、パニックになるかもしれない。それでも、ここしか思い浮かばなかった。逃げられる場所が、ここしかなかった。  結局あたしは、ここに戻ってくる運命なのかな………。 「これからどうする?」  比較的被害の少ない教室に入り、コノハと向かい合う。あたしは腕を組んだ。  誰かに頼ろうにも、どこで魔警察と繋がってるか分からない。みんなを信じてないわけじゃないけど、悟られる可能性はあると思う。  蒼祁なら……大丈夫かな。蒼祁に頼んで、悪魔を捕まえるのを手伝ってもらおう。 「コノハ―――」 「誰か来た」  突然口を押さえられ、小声でコノハが呟いた。緑色の視線をたどると、あたし達が来た方を向いていた。  誰か来た? まさか……魔警察⁈ ついてこれたの⁈ どうしよう……ここじゃ逃げられない……! 「とりあえず隠れよう」  急いで机の影に隠れる。息を潜めると、複数らしき足音が聞こえてきた。  通り過ぎろ……! ここには入ってくるな……! 「だーれもいねーなー」 「それに越したことは無いだろ」  ――――――最ッ悪だ! なんでドンピシャで入ってくるかなあ!  今のところ確認できた声は、男二人だった。ということは、カヤさんや風峰さん達ではない。滝川さんのものでもない。けど、仲間の可能性もある。  ちらりと見ると、コノハも緊張しているらしく、汗が頬を伝い落ちていた。あたしはコノハの手を握った。 「え………?」 「どうした?」  今の声は……女の子? さっきの二人のではないのはたしかだけど……一瞬だったから分からないな。  再び足音が鳴る。あたしから遠ざかったのはいいけど、まだ教室にはいるみたいだ。早くいなくなれ! 「これは……華城蘭李だよね?」 「ああ。蘭李だよ、間違いなく」 「へぇー。本当にこの学園にいたんだなぁー」  ―――――――――――…………は?  ―――――――――ガンッ  動揺して頭を机にぶつけた。まずいと思ったが、既に遅い。  だって、今、あたしの名前………まさか、ここにいることバレてるの……⁈  コノハと顔を見合わせた。握る力はいつの間にか強くなっていた。あたしなのかコノハなのか、どちらが震えているか分からない。  どうしよう……どうしよう……魔法で逃げられる……? 相手が雷属性じゃなきゃ逃げ切れる……? でももし無理なら……? もし捕まってしまったら………そしたらコノハは……!  ――――――不意に見上げると、何本もの腕が、襲いかかってきていた。 「あの時」のように。 「うわぁあああああああああッ⁈」  腕は全身に掴みかかった。物凄い力で押さえつけられる。  嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない――――――。 「おし! 捕まえた!」 「拓夜! そいつを離せ!」 「はあ⁈ なんで⁈ 抵抗してんだぞ⁈」 「敵じゃない! 私の友達だよ!」  友達……? そう、友達だ……「みんな」は友達………一緒にがんばってきた、ともだち―――。  ――――――そんなともだちが、あたしをころそうとしているんだ。  しにたくない………しぬのはこわいよ………。  だから…………だから……………!  腕が消えた。その瞬間、あたしは飛び出した。視界に教室と、三人の人。拳銃を構えながら、真っ直ぐ前にいた人へとあたしは跳んだ。 「蘭李ッ!」 「ッ―――――⁈」  ――――――――え……? なんでここに……⁈  ―――――――――――パァンッ
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