Before
 わたしに関わらないでください―――導かれるままにゲームをプレイすることになった『渚』。ゲームのクリア条件として、彼の守らなければならないキャラ―――『次代勇者』の少女と、彼は何とか出会うことができた。しかし、彼は困惑した。何故ならその少女は、自らの死を望む、死にたがりの勇者だったのだ―――。
かいり
(ID r9hykKTBRCOCE)
5.とある妖精の過去
死にたがりの勇者と守り人
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 乾いた大地をいくつかのトラックが走っている。
 しかしトラックの中身は日用品などではなく兵士である。
 そうこうしているうちにトラックは廃墟にたどり着き、エンジンを止める。
 エンジン音が止まったのを理解した兵士たちは一斉に荷台から飛び降りる。
 そんな兵士たちの間を隙間風の様に通り抜ける小柄な影。
 しかし、影の通り抜けた間を作っていた二人の兵士はその事に気づかず、風でも通り抜けていったのかと首をかしげる。
 その間に小柄な影どんどん先に進んで行く。
 しかしそれに気づいたものは誰一人として居なかった。
 凸凹道を抜け廃墟に入って暫くしてエンジン音が止まる。
 周りの兵士は皆荷台から飛び降りるので、便乗して私も降りて走り出す。
【速きこと風の如し】
 故郷で徹底的に鍛え上げた体術はもう人知を超えたものとなっていた。
 100メートルのタイムは6.35秒、跳躍力は4メートル、握力は40程度しか無いが速度があればどうと言うことはない。
 その速度で走れば周りは自分の小柄さもあいまって周りから見えなくなる。
 私のことが分かるのは通り抜けたあとの風が吹いた頃ぐらいだろう。



 そう走りながら考え、物陰に滑り込む。
 さっきのトラックからこの場所まで大体800メートル、普通はこんなとこまで戦闘開始一分では来ないだろう。
 ここまで来た理由は通信を行うためである。
 トラック付近で通信をすれば敵より先にスパイ容疑で味方に殺されてしまう。
 だから普通来ない場所で通信を行う。
 安堵から来る溜め息をしながら、通信機を始動させるために首に着けているチョーカーに偽造したスイッチをオンにする。
『あーあー、本日は晴天なり、本日は晴天なり』
 取り敢えずマイクテストは大事である。
 主に掴みとしてだが…
『はいはい、聞こえてるよ~』
 耳につけたイヤホンから投げやりに聞こえてくる声。
『よーし繋がった、第一目標はクリア?
『あぁそうだね、通信が確立できないと辛いからね』
 通信機から聞こえる少女の声は私の相棒兼上司の氏康。
 三代前から同じ名前を使っているそうなので男の様な名前でも見た目も中身も立派な
乙女である。
『で、氏康~今回のターゲットって何だっけ?
 そう私が尋ねると通信機越しに帰ってきた答えは溜め息と少し怒った氏康の声だった。
『そこの廃墟にある敵の通信設備の破壊および情報の仕入れだ』
『りょーかい♪』
 通信の向こう側から溜め息が聞こえたような気がするが気にせずに通信を切る。
 通信を終え、軽く辺りを見渡す。
 自分が走って来た方向から爆発音や銃声が聞こえたり、爆炎が見えるがこちらの方では銃声ひとつしない。
 それが逆に怪しさを増す。
「おかしいな…」
 降りた場所から離れたといっても高々800メートル、もうそろそろここらで銃声があってもおかしくないはずである。
 そして何となくで隠れている物陰からそこら辺に落ちていた瓦礫を投げる。
 そして物陰から瓦礫が出た瞬間に瓦礫が石ころに早変わりする。
「あ~あ面倒なことになって来たね!コンチクショウ!



 腰に付けたバッグからスモークグレネードを取りだしピンを抜いて投げ捨てる。
 そしてパシュッという炭酸飲料を開けた時に出るような音ともに透過率が少ない煙があふれ出していく。
 しかし私はそこから動かず、そこらの瓦礫を煙の中にある物陰に投げる。
「これでいいかな…?
 おそらくこれで敵スナイパーはデコイの物陰に釘付けだろう。
 そして私はその間にコソコソと逃げ出す。
「こういうのは特殊部隊の蛇とかがやるべきなんだよ~っと」
 一応で、とても不本意でとっても遺憾ですが逃げ足も速いんですよ?
 逃げ込んだ先は主戦場を広く見渡せて、建物内に大きな中庭があるところだった。
 入口には誰もいなかったが、ロビーには物陰に隠れる前に見えただけでも三人。
 チラッとだけ見ただけなので実際にはその倍くらいいると想定しよう。
 ひとまず身に付けている戦闘服を室内戦闘用に変えるために物陰に隠れつつ進む。
 -敵情報施設:女子トイレ内-
 音に気を付けながら個室に入り戸を閉める。
 鍵はわざとかけない。
 室外用の戦闘服を脱ぎ捨て、室内用の戦闘服、つまりスニーキングスーツに身を包む

 一つ問題があるなら体のラインが出やすいことだろうか?
 そして着替え終わった頃に通信が入る。
『そっちはどう?
『とっても楽しい室内戦闘に移行だぜコンチクショウ!
 とても楽しげに話しかけてくる氏康はとても憎たらしい。
 自分は楽なとこから指示出すだけの癖に偉そうなのが気にくわない。
『まぁまぁ、それで新しく支給したスーツはどう?
 きっと氏康はこの通信の向こうでニタニタ笑っているに違いない…
『もっと体のラインが出ないやつがいいね』
『あら?幼児体型なのにそんなの気にするの?…あっ、このお茶美味し』
 なんだろうとてもイラつく…
『肉体強化の薬のせいで成長は遅いんですぅ!オーケー、把握、アンダスタァン?
 仕返しとして煽ってみる。
『そうだったわねー、見た目だけ幼女さん』
 …成る程そう来るか……
『そうかいそっちがその気なら【蒙古斑】のことバラすよ』



 これ以上来るなら切り札を切るしかないな…
『えっ!?ちょっ何でその事しってんの!?
 もうちょっと聞いていたかったが流石に陣中でこれ以上の時間浪費は避けたい。
 せめて通信先がマトモだったら良かったのに…
 そのあとは装備を整えてトイレを出る。
 体にピッタリと張り付き、漆黒の色をしたスニーキングスーツに腰元には震電式小太刀を着けている。
 太股には小銃が左右に一つづつとマガジンがそれぞれ五つづつ装備している。
「さーて、私はアサシンじゃないし楽に行こうか」
 ちょうどいいことにトイレの前を通過中の見回り君を掴んで引き込み銃を突き付ける。
 そして最初は急なことに目を白黒させていた見回り君も銃を突き付けられて状況を理解してくれたようだ。
「動けば殺す、自殺しようとしても殺す、叫んでも殺す。聞きたいことは2つちゃんと答えれば命は保証してあげる」
 絶対に実行するという冷たい目で相手を睨み付ける。
 気分としては蛙を睨み付ける蛇の気分。
「民兵か?
 こちらには屈しないと睨み返してくる見回り君。
 恐怖体験は幼女ボディでは効き目が少ないってのは知ってるけど気分は害される。
 なのでグリップエンドで見回り君の側頭部を殴り一回頭を揺らす。
「大馬鹿者、貴様が聞くのではないこちらが聞くのだ。無駄な殺しはしたくない、こちらが聞きたいことを簡潔に話せ」
 飛びっきりの情の無い目で睨み付けながら次のチャンスが無いことを告げる。
 相当の変態でなければもう反抗はしないだろう。
「じゃあ第一の質問だ通信設備は何処だ?
 中庭で送受信用のアンテナは見つけることができたが、本体は別の場所にあることはもう分かっている。
 本体の場所に情報の書かれた紙だってあるはずである。
「最上階…最上階の五つある部屋の真ん中の部屋だ。そこに通信設備がある!
 最上階だけではさすがに足りないのでグリップエンドを見せたらベラベラ喋ってくれちゃってまぁ、ありがたいことこの上ない。
 刷り込みがうまくいったようだね。
「じゃあ2つ目の質問だ、米かみと額どっちがいい?



 そう言いながら片手で撃鉄を起こすと見回り君も何をされるか理解してくれたようだ。
「そんな!ちゃんと話せば命は保証してくれるんだろ!?
 確かにさっきそう言ってはいたがまさか本気にしているとは…と思いつつも引き金を引く。
 パシュッっというサイレンサーを取り付けた拳銃から音がしてトイレの床に脳奬をぶちまけられる。
 もちろん私ではなく見回り君のである。
 血ほどにぬめりを持ってはいるがゼリーのようなプルプル感を持つ脳奬を眺めることなくトイレの外へ出る。
 ロビーにいるのは白人男性五人、それも固まって全員同じ場所にいるので面倒だ。
 どうしたものかと思い頭を捻らせていると白人男性の一人が席を立って何かを話始める。
「なぁ、…か…つ」
 鍛え上げた聴覚でも幽かにしか聞こえない、これだから低周波な男の声は気に入らないのだ。
 しかし、聴覚がダメでも私には読唇術がある。
 読めた母音は『あぁ、おおうええあ、あいう』ここから導き出される文は『なぁ、遅くねえか?あいつ』である。
 つまりさっき殺した見回り君が遅いからなんかヤバくない?ってことだろう。
 まぁ、侵入者居るしヤバイとは思うけどもう後の祭りってやつだと言うことを知ってもらおう。
 都合の良いことにさっきのヤバくね発言の白人男性ともう一人の白人男性がライフル片手に私の来た方向とは逆の方向に見回り君を探しに行ってしまう。
 白人男性三人が相手だとこれは接近戦がいいかもしれない。
 スニーキングとは己の波長を辺りの自然に合わせて自然と一体になるものだという。
 まぁ、多少の色彩変更は出来るがこの波長合わせができなければすぐに見つかってしまう。
 私は上手く波長を合わせて物陰から物陰へと移動する。
 音は最小限に抑え、敵の視界内に私の姿は映らない。
 そうして、私は白人男性三人が座るソファーに忍び寄る。
 まずは一人目と、真ん中の白人男性の装備の襟を掴みテコの原理で頭から床に叩きつける。
 そして左右の二人が驚いて後ろに乗り出して来たところを下から顎を蹴りあげ脳震盪


を起こす。
 これで三人の始末は完了した。
 後は見に行った二人に気付かれる前に上に行くだけである。
 …・エレベーターって楽やな。
 エレベーターは無事最上階に着く。
 機械的な声のアナウンスとともに扉が開き、赤い絨毯が引かれた廊下が視界内に入る。
「うわー成金趣味かな?
 周りを見渡せば赤い絨毯に高そうな絵画、それに造形に凝ったランプや扉、正に高級と言う感じだった。
 しかし、ただ見とれて周りを眺めるだけでなく毒ガス等の為の噴出口等がないかもしている。
 エレベーターから少し進めば目的の部屋が見えてきた。
 目の前に広がる五つの造形が凝った扉。
 その真ん中の扉が今回のターゲットがある部屋である。
 その真ん中の扉を開けようと近づいた時アナウンスが流れてきた。
『あー、あー、いいかしら?最上階の中央の間の前にネズミが一匹居ますわ。今すぐ駆
除してください』
 そう言って最後はオーホッホッホという高笑いで終わったアナウンス。
 そして終了と同時に真ん中の扉以外の扉が開き、合計12人の男性が出てくる。
 その顔には余裕が浮かんでおり、たかが一人の少女だとたかをくくっている様子である。
 まずはその幻想を壊さないといけないようだ。
【侵略すること火の如し】
 まず手始めに最前線の一人の頭を撃ち抜き、周りが驚いている間に頭を撃たれた奴の後ろの二人に近寄り、片方は銃で撃ってもう片方は腹に蹴りを入れ、体を曲げたところに首に向けて小太刀をブスリと刺す。
 これで三人始末した。残りはもう九人しかいない。
 今更私がヤバイことに気付いた九人は各々銃を取り出すが、撃つ前に懐に入り込み小太刀をドスッと入れ込んで一人を殺しそのままその死体を盾にする。
 分厚い肉壁で銃弾を防ぎこっちは小銃で応戦する。
 肉壁がボロボロになる頃には全員殺していた。
 そして再び真ん中の扉の前に立ち、鍵をこじ開ける。
 まず誰かを先に入れるように扉を開ける。



 すると部屋の中から銃弾がいくつか飛び出して来る。
 想定通りの行動だが、面倒なことこの上ないので、扉から腕だけ出して足を撃ち抜く。
 すると中から少女の悲痛な叫びが聞こえる。
 中に入れば部屋の中心で倒れている一人の少女。
 名前を聞く気もないしさっさと始末しよう。
 そう思い引き金を引く。
 今度は悲鳴はなかった。
 その後通信設備を発見、破壊し重要そうな書類を仕舞い込み最上階からエレベーターを使い下へ降りる。
 ロビーには二人の白人男性が居たが睨めば何処か走っていった。
 誰もいなくなったので、私は終了報告と迎えの要請のために通信を開始した。
『任務完了、至急迎えを寄越されたし。Over』
『了解、今そっちに迎えの車が来てるからそれに乗って帰んな』
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