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プロローグ・四人 小国・《夜の帳|よるのとばり》。 黒髪黒眼が普通とされるその国では、異なった色の髪や眼を持つ者は『《突然変異体|とつぜんへんいたい》』と呼ばれ、見下している者達もいた。 そうして『《××××|化け物》』という蔑称で呼ぶ者もまた、存在していた。 昔日からの乾いた心を癒せぬまま、それでも《国主|こくしゅ》としての責務を果たす青年・《高遠夜霧|たかとおやぎり》。 ──────夕焼けの射し込む室内で煌めいたのは、月よりも海よりも、それよりも儚く脆く、何よりも綺麗な色。素直に綺麗だと、そう思えた。 ──────その深い深い青の瞳に、自分一人だけが映って。鈴を転がしたような可愛い声が、自分の名を呼んで。同じような寂しさと淋しさの匂いがする少女が、ひび割れた自分の心の中を満たしていく。 ──────少女の心も、身体も、全て自分一人のものになれば良いのに。そんな身勝手な独占欲の塊。まだこの姿は、綺麗な彼女には見せられない。 ──────《古月|こつき》が何も言わないのなら、俺が意地悪しちゃおうか? 《突然変異体|とつぜんへんいたい》として生を受け、死の淵をさ迷っていた所を救われた少女・《砂城古月|すなしろこつき》。 ──────とくん、とくん、と音がする。胸の中で、温かい音がする。 ──────わたしには、手の届かない、遠い遠い所にいる人なのに。気付いたら、わたしは目で追うようになっていた。 ──────わたしの名前を呼んでくれないかな、とか。わたしの頭を撫でてくれないかな、とか。この人を想うと、わたしはとてもとても我儘だ。 ──────《夜霧|やぎり》様になら、わたし、何をされても、嫌、じゃ、ない、です。 同じ血が半分流れる義兄弟を否応なしに殺すしかなく、血塗れの生存戦争の中で生き残った青年・《君原悟|きみはらさとる》。 ──────真っ白な雪と相反する赤に染まり切った自分は。もう二度と、綺麗なものに近付く事は許されない。その罪を、今日、自分は背負った。 ──────泣いて、怒って、また泣いて。それでも彼女は、最後は自分の前で笑うのだ。汚れきった自分の前でも、笑うのだ。 ──────口付けの理由は、『言わない』。まだ、綺麗な彼女の手を取る事は許されない。けれどもいつか、この責や枷を取り外せた、その時には。 『《御三家|ごさんけ》』と呼ばれる名家の正当後継者でありながら、己の生きる理由を見つけ、自分の生き方を貫いていく女性・《間宮詩織|まみやしおり》。 ──────最初の印象は、とにかく最悪だった。とても無愛想で、失礼で、正論の嵐で、こっちの気持ちなんてお構い無しに、言いたい事だけ言ってくれちゃって! ──────あんたのそういう所だけは、大っ嫌いよ。この世界全ての悪い事を自分のせいみたいにして、自分一人が悪いみたいに言って。あんたはいつだって、とっても優しいじゃない。 ──────ああ、やっぱり好きだなぁ。この声で名前を呼ばれるの。わたしの名前をこの世界で一番綺麗に呼んでくれるのは、彼しかいない。 ──────あんたが帰ってきたいのは此処なんでしょ。それならわたしは何時までも待ってる。お婆ちゃんになっても待ってる。これは全部、わたしの自由意思よ。あんたが帰ってくる此処で、わたしは待ってる。 四人が抱える過去、今、そして未来。 全て見守るは月の下。 優しい光が照らす下で紡ぎ出される、二組の和風恋愛絵巻。
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