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それから霊斬は、一人考え込んでいた。 どうして、毒塗りの刀が修理依頼として出されてきたのか? ――なにも知らない喜助を殺すためか? それとも他に目的がある? そう言えば、刀の持ち主を聞いていなかったな。 また会ったときに聞くことに決め、霊斬は思案した。 それからしばらくして、霊斬は千砂の隠れ家を訪れた。 「今回はどんな依頼だい?」 霊斬が顔を見せるなり、尋ねてきた。 「名取家の武士が、周辺の鍛冶屋の商品をすべて買い込んでいるらしい。それを止めてくれとのことだ」 「そうかい。二日で調べておくよ」 「分かった」 霊斬はそれだけ聞くと、隠れ家を後にした。 千砂はその日の夜、名取家に忍び込んだ。 「首尾はどうだ?」 その声を聞いた千砂は、動きを止め、天井の板を少しずらして様子を探る。 「は、二軒の鍛冶屋の商品をすべて買い込みました。三件目は幻鷲にしようかと思っております」 「駄目だ。あそこはどれも値が張る」 脇息に寄りかかっている男がそう言った。 「かしこまりました」 若い武士が頭を下げた。 千砂は内心で呟いた。 ――なんてこったい。 この武家はもしかして、江戸全部の鍛冶屋から商品を買い上げる予定だった? あり得ない。と言いたいところだが、二軒も成功させているため、否定もできない。 ――早く霊斬に知らせないと。 千砂は屋敷を後にした。 千砂はその足で霊斬の店に向かった。 「幻鷲、起きてるかい?」 戸を叩きながら、千砂が言う。 「開いているぞ」 霊斬の少し眠そうな声が聞こえてくる。 「遅くに悪いね」 「構わない。どうした?」 霊斬は盃を片手に酒を呑んでいた。 ――いち早く知らせなきゃいけないってのに、どうして酒がこんなに似合うんだい。 千砂は内心で突っ込みを入れながらも、本題を切り出した。 「名取家の連中、もう二軒の鍛冶屋の商品を買い上げていた。あんたの店も標的に入っていたよ」 「そうか」 霊斬は動じずそう言った。 「分かっていたのかい?」 「勘だがな」 千砂は思わず苦笑した。 「呑んでるところ、邪魔したね」 「気にするな」 霊斬の言葉を聞いて、千砂は店を後にした。 翌日の同じ時間、千砂は名取家に忍び込んだ。 昨日と同じ部屋から声がした。 「《右|う》《今|こん》様」 「なんじゃ?」 「二軒目の状態を報告をと思い、参上いたしました」 「どうだ、状態は?」 「これまでと同じく、雑刀ばかりでございます。上様に献上するような品は……」 ありません、とは言えなかったらしく、若い武士は口を噤んだ。 「見つかるまで探すのだ」 「は!」 「して、刀の修理は?」 「一週間かかるとのこと」 「一週間も経っておれば動けぬであろう。様子は見にいったか?」 「はい。それが……頼んだ鍛冶屋はまだ生きているようでして……」 「どういうことじゃ! 訳を聞き出してこい!」 右今は憤慨して言った。 千砂はそこまで聞いて、屋敷を後にした。
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