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「くそッ……! これ外してよッ! ねえッ!」  暴れる度にガンガンと、ジャラジャラと音が響く。だが、蒼祁特製の鎖は壊れる気配が全くなく、鎖が繋ぐ手錠も足枷も、外される心配はなかった。それでも蘭李は、負けじと床をもぞもぞと這う。だが、首から繋がれた重りのせいで、すぐに疲れて止まってしまった。 「健治ッ! 聞いてんの⁈ 外してッ!」  蘭李が興奮気味に、俺に怒鳴ってくる。珍しく本気で怒っているらしい。黄色い瞳は、びかびかと光っていた。 「残念だけど蘭李。俺には出来ないよ」 「はあ⁈ メルなら余裕でしょ⁈ 早くやってよ!」 「外れたら君は何をするつもりだい?」 「蒼祁を殺しに行くんだよッ!」  やっぱり。なら駄目だ。ここに置いておくしかない。  蘭李の奴隷発言後、蒼祁は何も言わずに彼女をこんな状態にした。重りまでつけさせたということは、相当今の蘭李はヤバイんだろう。まあ訊かなくても分かる。  今の蘭李は、おかしい。 「いきなり何すんの⁈ 蒼祁!」 「もうお前、コノハ持つな」 「はあ⁈」 「コノハ、お前だろ? 蘭李の頭イカれさせたのは」  蒼祁の右の手のひらが、コノハへと向けられる。次の瞬間、コノハにも手錠と足枷が装着された。必死にそれらを外そうと試みるも、無駄な足掻きだった。そうだと分かると、鋭く蒼祁を睨み付けるコノハ。 「変な言いがかりはやめてくんない?」 「なら誰がやったんだよ。首輪させとけばいいとか、家捜ししようとか、お前のことを奴隷だとか……。誰がどう見たっておかしいだろ、こいつ」 「どこが? 普通じゃん」  普通、ではない。むしろ普通か異常かと訊かれたら、迷わず異常だと答える。たぶん、本人達以外はそう思ってるはずだ。 「お前もイカれてるのか」 「イカれてないし。あんたこそ頭沸いてんじゃないの?」 「なら他の連中にも訊いてやろうか? おい、こいつらおかしいよな?」  沈黙。だが、雷や紫苑は小さく頷いた。他の子達も否定はしない。その反応にさぞ驚いたのか、蘭李は目を見開いて皆を見回した。 「なんで……? コノハ、何もおかしいこと言ってないじゃん!」 「それが分からない時点で既におかしいんだよ」  蒼祁はコノハのもとへと歩み、彼の右腕を持ち上げた。そのままズルズル引きずっていく。 「何すんだよっ……! 離せっ!」 「お前を魔警察に明け渡す」 「はあっ⁈」 「悪魔との関与もあったしな。喜んで受け入れてくれるだろ」 「ふざけんな蒼祁ッ! やめろッ!」  しかし、蒼祁はコノハを連れていってしまった。朱兎も続いて出ていく。 「誰かッ! 蒼祁を止めてッ! コノハが殺されるッ!」  蘭李が大暴れしながら叫ぶ。白夜達は困ったように顔を見合わせた。 「………さすがにやりすぎ、かな?」 「と、思う……コノハをわざわざ殺さなくたっていいはずだ」 「なら、急いで追いかけるか」 「ああ」 「魔警察に渡ったら終わりだ」  彼らは頷き、部屋を飛び出していった。隣に立つメルが、俺の顔を覗きこむ。 「主は行かないのですか?」 「こんな状態の蘭李を一人、置いていくわけにはいかないだろう?」  そんなわけで、俺とメル、そして蘭李だけがここに残っていた。 「くそっ……コノハが死んでもいいのかよっ……!」 「白夜達が行ってくれてるから大丈夫だよ」 「どうせみんなも変だって思ってるんでしょ⁈」  じんわりと蘭李の瞳が潤んでいる。なんだかその反応に、安堵した。俺は蘭李の傍へ行き、しゃがみこんだ。 「ねえ蘭李。君、コノハと何を話したんだい?」 「………?」 「コノハと仲直りしたって言ってたよね? その時一体何を話したんだい?」 「………………」  黙りこんで顔を逸らす蘭李。何故隠そうとするのだろうか。そんなにまずい内容なのか? 誰にも言えない何かを話し、そしておかしくなった………駄目だ。全く見当がつかない。 「蘭李。話してくれないと分からないよ」 「………なんでそんなこと訊くの?」 「そりゃあいつもの君達じゃないからだよ。何かあったと考えるのは普通だろう?」 「いつものあたし達じゃない、か………」  力無く笑う横顔。反応がいちいち不可解だ。 「健治と会う前まではね、普通だったんだよ」 「え?」 「コノハだけ使ってても、誰も文句言わなかった。蒼祁はこっち来なかったし、バレなかったからさ」 「だから、隠し通せたんだろう?」 「うん。ずっとそのままでいようと思ってたのに、蒼祁が余計なことばっかり言うからバレちゃった」 「でも君も思ったんだろう? 銃を使えた方がいいって」 「………ダメだったんだよ。それじゃあ」 「え?」  駄目だった? 一体何のことだ? 何を言ってるんだこの子は。 「あたしはもう銃は使わない。使っちゃいけないんだよ」 「何故だい?」 「………コノハを見捨てることなんて出来ないよ」  彼女の気持ちが分からない。だが、ただ一つだけの思いは分かった。  ――――――蘭李は、コノハを守るために狂っているんだ。
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