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 彼女は愛される人間だ。人懐っこい性格に、可愛らしい笑顔。男女関係なく、彼女はいつも愛されている。  そんな彼女は、いつも孤独を感じていた。何故ならば、その愛は永遠でないと知っているから。  彼女は愛はいつか消えゆくものと思っている。だから、《今》「愛されている」証拠が欲しいのだろう。彼女は色々な人の所へ行っては愛を求めていた。  そんな彼女を浮気性、と言えば浮気性なのかもしれない。でも、彼女は「好き」「愛している」と決して言わない。彼女は浮気をして、多くの人を裏切りたいわけではないのだ。ただ、彼女は本当の愛を求めている。  僕はそんな彼女を知っているから、そんな儚い彼女に魅了されてしまったから、彼女を拒むことなんて出来なかった。だから今日も、僕の隣に彼女がいる。  彼女の綺麗な声が、僕の鼓膜を震わした。 「ねえ、私のこと、愛してくれる?」  魅惑な笑顔を彼女は見せる。  僕はその言葉に頷こうとして、それを躊躇った。僕に、その資格があるのだろうか。 「君は、僕のこと、愛してくれる?」  僕は返事の代わりにそう尋ねた。 「私が愛さなければ、貴方は愛してくれないの?」  彼女はそう寂しげな瞳を見せた。  僕は伏し目がちに頷く。 「だって、相思相愛こそが美しいとされる世界で、片思いなんて虚しいだけだろう」  真剣にそう言う僕を、彼女は可笑しそうに笑った。 「相思相愛だなんて、人の妥協の積み重ねで生まれるものよ。本当の両想いは《奇跡》でしかない」  僕は何も言い返せず、黙り込んだ。  確かに、今まで付き合ってきた恋人は《妥協》だ。告白されたから付き合ったり、僕に気がありそうだから気になって声をかけたり、その繰り返しだった。決して脈がないと分かる子には、いつも何もせずに終わっている。  何気なく付き合った子でもその内好きになることがあるが、それは錯覚なのかもしれない。その子より好みの子が現れたら、きっと僕は揺らいでしまう。  いや、それでもその子を手放せないとしたら、それは相思相愛の自分を愛してしまっているからかもしれない。  ああ、自分で考えていて、訳が分からなくなってしまった。  ただ、今一つだけ言えることは、僕は彼女を愛していて、報われないと分かっているからそれを言葉に出来ない、ということだ。結局、彼女との関係が壊れるのが恐れているだけなのかもしれない。そんな臆病な自分に、心の中で嘲笑を浮かべた。  彼女はまるでそんな僕を見透かしているかのように、僕に抱き着いてくる。 「やっぱり、愛とかどうでもいいや。今は、私の寂しさを産めて」  彼女の甘い言葉は僕に逃げ道を与える。  愛されていない、という現実を忘れさせてくれる。  彼女が僕を愛している、という錯覚を感じさせてくれる。  だから、僕はいつまでも彼女から離れられない。そうして今夜も、僕は彼女をこの胸に抱いて眠るのだ。  いつか、彼女が僕を愛してくれることを夢見て。
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