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 夕日は闇の中にいた。  辺りは暗く、ここがどこなのかもわからない。  そんな闇の中、突然声が聞こえてきた。 「おーい」  聞こえた声は低く、老人のような声をしている。 (俺は死んだん、だよな? 何で声が聞こえるんだ?)  その声が何の声なのか夕日には全くわからなかった。 「おーい」  再び闇から聞こえてくる声。 (やっぱり聞こえる。⋯⋯ああ、そういうことか。この声は死んだ俺を天国から呼ぶ声か)  夕日は死んだ。  であればこの声は天国からの声なのだと解釈した。 「おーい」  またしても夕日を呼ぶ声が聞こえてきた。 (まだ聞こえる)  急かす声に夕日は返事を返した。 「わかったから。今そっちに行くよ」  夕日は闇に向け声を発する。  だが、返事はなく、夕日を呼ぶ声が聞こえるばかり。 (もうすぐで天国かな)  次第に夕日を呼ぶ声が近くなっていることから天国はもうすぐだと予想する夕日。  途端、夕日の顔に何かが触れた。  触れられた場所は頬。  場所を特定できるほどはっきりとした感触があった。 (俺は死んでるんだよな? どういうことだ?)  死んでるのに感触はある。  そのことを夕日はおかしく思った。 「起きろ」  さっきまで夕日を呼んでいた声が急に口調を変えた。 「⋯⋯さっさと起きんか!!」  口調はさらに尖った口調へと変わり、夕日は闇の中から抜け出すことに成功した。 「なんだ、ここ?」  闇を脱出した先には、天国、ではなく一面星のように光り輝く点が視界一面を埋めていた。  夕日は一瞬、宇宙の中かと思ったがすぐにそうではないと気づいた。 (床があるし宇宙というわけではないか。息もできるし)  だったらここはどこなのか確認するためキョロキョロと見回していると再び声が聞こえてきた。 「ようやく起きたか」  その声はさっき夕日を呼んでいたものと同じ声だった。  声のした方に目を向けると髭を生やした七十歳位のおじいさんがいた。  そのおじいさん以外に誰もいない。 (誰だ?) 「ああ、わしか? わしは神じゃよ。といっても力はほとんど無くなってしまったがな」  何も喋っていないはず、なのにおじいさんは自分のことを神といい、思考を読み取ったかのように返事を返してきた。 (何で俺の考えている事が⋯⋯。それに神って⋯⋯) 「なぜかって?それは、ここがお前さんの意識の中じゃからじゃよ」 (え?俺の意識の中?)  そう。ここは、夕日の意識の中。  夕日たちは意識の中に作られた部屋にいた。 (宇宙じゃないとは思ったけど、俺の意識の中だなんて) 「そうじゃ。だからお前さんの考えている事は全て筒抜けじゃよ」 (俺の考えてることは全て筒抜け。そんなこと⋯⋯神だったら出来る、のかもしれない)  人の考えていることを完全に理解するという芸当は神にしかできないだろう。 「じゃあ、俺の聞きたいこと分かりますよね?」 「ああ、分かるとも。全てな。それじゃあ最初に、なんで生きているのかについてじゃが、それはお前さんの魂をその体に入れたからじゃ」 (は? 今、何て言った? 俺の魂をこの体に入れた?)  神の口から出た言葉は夕日の理解を絶するものだった。 「じゃから、わしが作った体にお前さんの魂を入れこんだんじゃよ。その体はわしが作った体じゃ。お前さんの体は今も地球にある。地球に危機が迫った時、お前さんの心臓にわしが作ったナイフを刺し、こちらの体に魂を転移させるようあやつに言っておいたんじゃがな」 (何を、言ってるんだ?)  またしても意味のわからない話。  夕日はただ聞いていることしかできない。 「何を言ってるもなにも、あのナイフはわしが作った特別製でな、魂を転移させることができるんじゃよ。それに、その体はお前さんの魂にしか合わないんじゃ。まあ、他にも色々理由はあるんじゃが」 (この体が俺にしか合わない?)  夕日は体を確かめるように手を握ったり開いたりしている。  夕日は今、自身の体を離れ、神が作った体に入れられている。 (俺の魂がこの体にしか合わない⋯⋯それだけの理由で俺は死んだのか) 「何を言っておる。お前さんはあの生物に食われて魂もろとも消えるのが良かったのか?」 (良くないけど。というかあの生物はなんなんだ?) 「あの生物は地球ではないもう一つの世界の生物。天球からきた魔物じゃよ。生き物というのは体が死んでも魂は生きている。だから体はさほど重要ではない。だが、あの魔物は違う。食った者の魂まで食ってしまう」  その事実に夕日は安堵した。だが、すぐに夕日は焦りを覚える。 「てことは、こんなことしてる間にも地球が」 「それには心配及ばんよ。何せここは意識の中、こんなに喋っておっても時間が進むことはない」 (良かった。地球は無事か)  ホッと息をつく夕日だが、遂に考えないようにしていたある出来事を思い出す。 「ああ、その事か。あやつが抵抗するもんじゃからわしが操りお前さんを刺した」  夕日が考えないようにしていた出来事とは綾香に刺されたこと。 つまり神の言うあやつとは綾香だった。 (どういうことだ?綾香は神のことを知っている?)  綾香は夕日の彼女。  今さっき恋人になったとはいえ、綾香は夕日の彼女だ。  その綾香のことを神は知っている。  神だから知ってて当然とかそんな理由ではないことはなんとなく察しがつく。  だから夕日は困惑していた。 「それと地球と天球では、時間の感覚が違い、地球での一秒は天球での一年に相当するんじゃ。先程天球の神が地球に干渉してきて、沢山の魔物が送られてきた。が、しかし今はわしの力で地球、いや地球の存在する世界そのものの時間を止めておる。じゃがわしの力はほぼ失われてて地球を三秒しか止めれないんじゃ。天球の神と地球の神とじゃ、まさしく天と地ほどの力の差があるんじゃよ。それでも何とか耐えているんじゃ、誉めてほしいくらいじゃよ」 (なんでそんな事を俺に言うんだ?)  夕日の魂はその体にしか受け付けない。  それは夕日も理解した。  だが、そもそもその体を作る理由はないはず。地球に危機が迫っているから何なのだ。  その体を作って夕日に何をさせるのか。夕日は頭の片隅にある答えが浮かんでいた。  ただ、その答えはあくまで憶測にすぎない。なのにその答えは100%あっている自信があった。 「元々天球と地球は1つの世界だったんじゃよ。その世界の神が今の天球の神だったんじゃが、突如その世界が2つに割れ、今の天球と地球が生まれた。そして、わしは地球の神になったんじゃ。それから何事もなかったんじゃが今、あやつが地球を取り戻そうとしてきておるんじゃ」  神の話は夕日の思っている答えに少しずつ近づいている。 「じゃから、お前さんにはその体を使って天球の神を止めにいってほしいんじゃよ。三秒で神を倒してこい」 「三秒って、そんなのどうやって」  三秒で神を倒せという夕日の想像を超えた発言に、しばらく傍観に徹していた夕日だったが、それには黙っていられなかった。 「まあ、そう言ってもわしが止めれることのできるその三秒は、あっちの世界では3年分になるがの」  夕日の思っていることを見透かした表情で神はそう付け加えた。 「それと、その体には地球には存在しない『魔力』というものがある。天球で生きるためには必須じゃ。それにその体にはお前さんだけのスキルがあっての、そのスキルはお前さんの感情によって使える魔法が変わるというやつじゃよ。まあ、どっちみち行かせる予定だったんだ、それが早まっただけのことじゃ。とりあえず、わしが説明するより実際に見た方が早いじゃろ。それじゃーのー」 「お、おい、ちょっ、待って、まだ⋯⋯」  神は別れの挨拶と共にその場からいなくなる。  神がいなくなった瞬間、意識の中にある部屋が消えた。 「話は終わってな、い。⋯⋯⋯⋯な、んだ⋯⋯ここは!?」  部屋がなくなるや否や、夕日は見知らぬ大地に置き去りにされていた。 「なん、なんだよ!!!!!!!」  夕日は怒りに我を忘れ、叫び続ける。  夕日は確かに見た。  綾香が泣きながらそして、苦しそうに夕日の心臓にナイフを刺しているのを。  夕日は綾香にあんな顔をさせた神に対し激しい怒りを覚えていた。  自分の置かれた状況よりも綾香のために。  辺りは夕日の怒りに呼応するように燃え、どんどん強さを増していく。  草木は一瞬で灰に変わり天球にある全ての物を焼き付くしてしまうのではないかと思われた。  だが、夕日は急な脱力感に襲われ、全身に力が入らなくなっていく 「なん、だ、これ」  夕日の意識が朦朧としていくなか 「大変。人が⋯⋯」  誰かの声がする。 (なんだよこれ。こっち来た途端に俺、死ぬのかよ)  自分の置かれた状況に苦笑いを浮かべ、自分の意思とは裏腹に勝手に目は閉じていく。  夕日の意識はそこで途絶えた
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