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「僕たちはここに。」 ~プロローグ~ 『ある時、僕らはネットで知り合った。』 その後も約5年に渡り関係が続き、今ではかけがえのない存在となっている。出会い自体はありきたりで、特筆すべき様なことはないけれど、今思うと感慨深いものがある。この物語は、僕らが出会い、そして深い関係を築いていく過程である。 ~メンバー紹介~ 【風海ユウ (通称ユウさん) 】 この小説の筆者。生まれつきの対人恐怖に30余年に渡り苦しめられ、今なおギャンブル依存と戦っているというどうしようもない人生を送っている。気付けばもう40歳、いい歳だ。 【ソウスケ (通称そうちゃん) 】 複雑な家庭環境に生まれ、彼自身人生に思い悩むも明るく気丈にふるまい、仲間を思いやる心優しき青年。最近になりようやく過去を振り払うことができ、今後の展望を思い描いている。加えて彼はイケメンである。 【クロスケ (通称クロピ) 】 彼もまた、複雑な家庭環境に生まれ、今なお苦しんでいる。クリエイターを目指して邁進するこのグループの最年少。たまに空気が読めないのはご愛敬(筆者目線) 【おちゃ】 グルチャの初期からいる女性メンバーで、最初こそ女の子らしくふるまっていたが、男勝りな部分もあり、また理解しがたい行動をとることもしばしば。我が強く、よくソウスケと対立していた。 【りんさん】 グルチャの後半に加わった女性メンバーの1人。ノリのいい性格でグルチャのいじられ役となっている。ソウスケのラジオ配信の元リスナー。 【シオン】 現在のところ、グルチャの最後の女性メンバー。加わることになったのは最後だけど、俺たちがつながることになったきっかけの人物。彼女もまた深い闇を抱えている。 第一章 【出会い】 僕たちが知り合ったのは、とあるネット仮想世界からだった。 そのゲームを始めたきっかけはもう覚えてはいないけれど、大した理由ではなかったと思う。だけど心のどこかに誰かと繋がりたい、そんな気持ちはあったように思う。 ◇ 俺たちがいる仮想世界は、各々のアバターを操作して、コミュニケーションをとるゲームだ。そのゲームには、他にも自由にカスタマイズができる自分の部屋を持つことができたり、スクリーンショットを添えた日記を投稿したり、コミュニティ、つまり一般に言うグループを作ったりといった機能も備わっている。現在はもうログインをしていないため、今の状況はわからないけど、その時既にユーザー離れが進行していた頃だった。俺は人もまばらなゲーム内をさまよい歩き、それでも何人かと繋がることができた。その一人にシオンという女性がおり、彼女はゲーム内で寂しそうにひとりたたずんでいたので、声をかけたのだ。 ある時、そのシオンという女性を追跡し、後をつけてみたことがある。そしてたどり着いた場所は、茶屋と呼ばれる狭いコミュニケーションスペースだった。その場所に行ったことがすべての始まりになるとは、その時はまだ知る由もなかった。 その時の俺と言ったら、まだゲームを始めたばかりということもあり、身なりはデフォルトのままだった。俺はその場所にシオンさんと話すつもりできていたのだけど、とある一人のキャラが妙に絡んできた。 「よう、初心者さん」 長年やっていたであろう、個性的な格好をしていたキャラクターはそう俺に話しかけてきた。邪険にする理由は一つもなかったため、俺は素直に挨拶を返す事とした。 「はじめまして」 何でもない挨拶をしたつもりだったけど、それが場違いかの様に、そのキャラは眉をひそめ、俺を挑発するような言葉を発する。 「堅苦しいな。服装からして、ここに来たのは初めての様に伺えるけどもしかして秋休み中に、親のパソコンでも使って登録したガキンチョユーザーか?」 俺は言葉を失ってしまった。言っていることの半分はあっているけど、ガキンチョユーザーと言われた事には少し心外だった。だけど、元々争いを好まない俺は彼の言葉を静かに聞くことにした。 「…。」 《黙す|もくす》俺に対して、彼はさらに挑発めいた言葉を重ねる。 「そんで、いくつなの?」 こういった場所では年齢はあまり明かしたくなかったけれど、ガキンチョと言われては黙っていられず、つい実年齢を口にしてしまった。 「36歳です」 それを聞いて恐縮するのは今度は彼の方だった。 「おっと…これはこれは恐れ入りました大先輩! タメ口きいてすんませんでした。」 実際俺はそこまでに気にもしてなかったし、謝ってくる彼のことが少し可哀そうにも思えてきたたため、あえて受け入れるような口調で言葉を口にした。 「いいよ今更。タメ口でいいから、気にしないで」 その後も彼は俺に対して気さくに話しかけてき、それに対して嫌な気分はあまりしなかった。ただ、その言葉の端々にどこかしら棘のようなものを感じていた。 だけど、その時はなるべく気にしないようにしていた。ひとしきり、チャットや、アクションを楽しんだ後、そのキャラクターはフレンドになりたいというので、それを快く受け入れた。 彼と別れた後、俺はゲーム内で初めての日記を書いた。自分としては単純に友達ができたことがうれしく、その気持ちを素直に日記に乗せた。後に彼もその日記を目にし、想像以上に喜んでくれたのを覚えている。 シオンさんがきっかけを与えてくれたおかげで、彼と知り合うことができ、度々会話をするようになった。とはいっても、俺は基本的に部屋にいて、彼が一方的に訪ねてきてくれていたのだ。後に彼が人生の中でも大親友という存在になるとはその当時はまだ思ってもみなかった。 ◇ 仮想世界の自室に独りでこもっていると、毎晩のようにソウスケが訪ねてきてくれて、とりとめもない会話をしていた。 俺の部屋は、まだ必要最低限といった感じで。ベッドと机が置いてある程度で、簡素なものだった。そこで話していた内容というのは、取り上げるほどでもないようなことで、ある時などは、俺がインフルエンザにかかった時の話をした。 「あのねソウスケ。俺、最近初めてインフルエンザなるものにかかったんだけどチョー元気で、何食わぬ顔でペロリとカツ丼食っちまった」 「何かと思えば…自慢話にもならねぇぞ (笑)」 「実はまだインフルなう。高熱出てるんだけど全然平気だぜ」 「はいはい。永遠におやすみ」冗談のように言った俺に対して、ソウスケは案外冷たいセリフを返してきた。 そんな感じで毎晩のように笑いあって、夜通し話をしていた。 ◇ 世の中の人たちは一日をあくせく働き、その疲れを癒すため、眠りについている時間。街は街灯以外に明かりもなく、静まり返り、冷たい空気だけが吹き抜けている。そんな暗い街の一室は夜も煌々と明かりが灯り、静かな部屋にタイピングの音だけがこだまする。その部屋の一角で、一人の男が真剣なまなざしで画面に向かい、時に笑ってる姿は、傍から見ると、げに滑稽な姿と思われる。 その当時の俺たちはというと毎晩のようにそのように過ごしていたのだ。俗にいう引きこもり、世の中から排他されるべき存在だ。 俺たちは、引きこもりに対して真っ向から否定するつもりはない。引きこもりにならないとわからないこともあるし、彼らは、その中で何かを見つけやがては世の中に出ていくのだ。実際俺は引きこもる中で、会話の仕方を学んだし、様々な考え方を学んだ、それは今でも役に立っている。 ◇ 今日も相変わらず、殺風景な部屋に独りでいるとソウスケが訪ねてきた。 「しっかし何もねぇよな? この部屋。」 彼は呆れた感じで部屋に来るなり、そう呟いた。 「ほとんど触ってないからね」 俺は何の気なしにそう言うと、ソウスケの目は丸くなり、何も知らないんだなと言わんばかりの顔をした。 「模様替えとかガチャとか出来るの知ってっか? あとは着せ替えも出来るんだぜ」 彼は得意そうに、俺に問いかけてきた。 「ほう、そんな事もできるの?」 「おうおう。せっかくの機会だし、この何の面白みもないシケてる部屋をオシャンティーな部屋にリフォームしようぜ! どうよユウさん?」 相変わらず彼は生意気な口をきき、目を輝かせてそう提案してきた。 俺たちのいるこの仮想世界は課金制で、リアルマネーをゲーム内マネーに換金することでおしゃれをしたり、好みの部屋を作ったりすることができるのだけど、俺はそこまでこのゲームに対してお金をかけるつもりもなかったので、見栄えなど気にせず、あるものを置いているだけだった。彼はそんな俺を見かねたのか、アイテムを手に入れる知恵を教えてくれ、少しずつ部屋が色づいていった。 俺はそんな彼の行為を単純に嬉しいと思った反面、申し訳ないという気持ちもいっぱいだった。その頃からいつか恩返しがしたいと思うようになっていた。彼のおかげで俺自身のアバターの格好はおしゃれになり、部屋も好みの部屋へと変貌していった。俺はその部屋がすっかり気に入り、ログインするたびに口元が緩んだし、その部屋にいると心が和むようになっていた。俺の気持ちにも少しずつ変化が現れたのかもしれない。それは部屋がそうしたのか、ソウスケがそうしたのか、あるいはその両方かもしれない。 ◇ そんなあるときのことだった、彼はゲーム内のコミュニティつまり、グループの話をしてくれた。ゲームをまだ始めたばかりということもあり、コミュニティの存在は知らなかったため、その話を新鮮な気持ちで聞くことができた。聞けば彼は古くからそのゲームをしており、その中で様々な人と関わりコミュニティを築きあげきたのだと話してくれた。ただ、俺に出会う少し前に、そのコミュニティでいざこざがあったらしく、ソウスケはその時の話をしてくれた。
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