フォントをダウンロード中
ページの左右でマウスを左クリックします。
または、 キーボードの左右の矢印キーを入力します。
ページ上で指先を左右になぞると、 前/次ページへ移動します。
メニューはページをタッチすると現れます。
× ヘルプを閉じる
 肌寒い冬の季節が終わり、始まったばかりの冬の残る春にクダリのいたフランシアル学院である行事が行われた。 「えー、では、今から第九十三期生の卒業式を始めます」  今は亡き校長に変わって、キリアが卒業式を進める。 「卒業生起立!」  起立したのは第九十三期生、クダリと同級生のサリィやリュウカたちだ。 「君たちはこの三年間ワールドブレイカーになるために勉学、訓練ともに励み、今ここに立っている。今日、君たちはこのフランシアル学院を卒業した。しかし、我が学院の卒業生になるはずだったクダリくんの活躍により、偽りの世界はこの世界と融合したことはみんなも知っているだろう。だから、君たち九十三期生がこの学院最後の卒業生だ」  この後もキリアの話は続いた。  クダリとアイフィの運命を変える能力により偽りの世界はこのカイナたちのいる世界と融合した。それにより、様々な人種、また、自分と似た外見を持つ人物が広大な世界に住むこととなった。千を超える偽りの世界がこの世界と繋がり、世界千個分の土地を持ったこの広大な一つの世界でそんな外見と出会うことは一生に一度の経験だろう。世界が融合しても自分の世界で暮らす者もいれば、異なる世界で暮らす者も現れた。そして、このカイナたちのいる世界も異なる世界から移住してきた者がたくさんいる。 「サリィやリュウカもこれで卒業ね……」  廊下を歩きながらカイナ、サリィ、リュウカの三人は話す。  卒業式が終わり、生徒や教師も半数以上が学院を去った。生徒や教師の姿が必ず一つはあった廊下は今や誰もいない寂しげな場所に変わっていた。  カイナはサリィとリュウカを見るとどうしてもクダリもいるのではないかという考えを心の中で思ってしまう。それはサリィも同じだった。 「……クダリは卒業……できないんですよね。それどころかもう、生きてすら――」 「サリィ、そんなこと……ないよ。クダリは、きっとどこかで生きているさ」  リュウカがサリィを元気づけるが、かくいうリュウカも目が潤んでいる。この場の誰も、クダリのことを一日でも忘れた者はいなかった。 「そう……かな……。そう……だよね。簡単に諦めちゃいけないよね……」  そうは言っているが、もう二年以上経過している。悲観的になるのも無理はないことだった。 「ほら、偽りの世界はなくなったけど、異世界人同士の揉め事は後を絶えないわ。明日から私たちはその対処で忙しいわよ。今日はもう休みましょ」  カイナが暗くなった二人を慰める。  そんな姿が映る水晶玉に涙がこぼれる。 「みんな……がんばっているのだな……」  どこの世界とも繋がらない、独立した世界、神界。豪華な装飾が施された玉座に女神、アイフィは座っている。赤い旗、赤い絨毯、玉座のあるいかにも王の間といった言葉が似合う部屋には、アイフィ以外誰もいない。 「女神を統べる女神、アイフィアス様、伝説の英雄が我らの騎士となりて、この城に来られました」 「通せ」 「はっ」  世界に伝説を残した英雄は死後、その活躍が認められると神界を守る騎士として神界に連れて来られる。  アイフィの命令に従う若いメイドは煌びやかな扉を開けて英雄を連れて来る。  アイフィはまるで興味がないかのように水晶玉から目を離さない。 「――女神を統べる女神、か。随分出世したものだな、アイフィ」  その少年の声を聞いた瞬間、アイフィは水晶玉からその少年へと目を向ける。 「……そっちこそ、あっちでは偽りのワールドブレイカーだなんて呼ばれているではないか」  この神界に帰ってから笑顔を見せなかったアイフィがここで初めて笑顔を見せた。  少年は赤い絨毯をたどってアイフィの下まで歩く。 「おかえり、我が愛しの英雄さん」 「ただいま、大好きな俺の女神様」
1
15
シリーズ一覧
感想を送る
作品を紹介
ブックマーク
しおりを挟む
作品情報
使い方
登録が完了しました!
確認事項
戻る
実行