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 シンは箱根から東京まで帰還していた。  すげえ。この脚パーツがあれば……!  シンはかなりの期待を抱いていた。今までに体験したことのない速さ。そして常軌を逸した菊間博士の改造術。これらが組み合わされば、優勝も夢ではない。と、まだ。この時は。そう思っていた。 「くっそ……なんだこれ……」  シンは、菊間博士の工場、つまりシンが居候している家にいた。パイプ椅子に座り、彼の前には少し古い型のテレビが置いてあり、試合のような映像が流れている。  遡ること一時間前。 「ただいま。博士」 「おお。シン。無事に帰ってきたか。遅いから心配したぞ」 「それより、見てくれよ。この脚パーツ。東郷博士からの土産だ」 「おお。これは珍しい。わしも見たことがないな。たしかにレア中のレアだ」 「あとは、博士にパワーを上げてもらえば……!」  シンがそう言った途端、博士は黙り込んでしまった。 「ん?どうしたんだ博士?」 「そう上手くいくかの」 「どういうことだ……?」 「とりあえず、これを見るんじゃ」  博士は、部屋の奥から旧式のテレビを運んできた。かなり埃をかぶっている。そして、何やら数字の書かれたメモリーディスクを入れた。  一体何が始まるんだ?  シンは、近くに会ったパイプ椅子に腰かける。 「よく見ておけ。これは、去年のアーティカルグランプリの映像だ」  アーグラ?!  シン自身も、アーグラの試合映像を見るの初めてだった。しかし、そんなに大した奴は出場していないと、高をくくっていた。  だが、しかしだ。  一試合目で、自分がどれだけ無知かを思い知らされることになった。 「なんだ……これ……」 「どうだ。勝てるイメージはあるか。」 「いや、全く湧かない。こんな戦いは初めてだ」  パワーがすさまじい。スピードが速い。だけの話なら、なんとかなったかもしれない。だが、そういう次元の話ではなかった。  第一試合。アーグラでは、かなり目立つ試合である初戦は、大体、実力者が試合をするとは言え、あまりに異常だった。  まず、互いの特徴。H型のアーティーと、O型のアーティーの戦いだった。  H型の方は、ミサイルや銃弾を大量に搭載し、それを撃ち込む、いわゆる「砲撃型」とよばれるアーティー。  対してO型の方は前回の準優勝者だった。このアーティー、見た目は普通で、ボディが大きいわけでも、レアパーツがたくさんというわけでもない。だが、試合開始のゴングが鳴って、その理由がすぐに分かった。  実は、このO型アーティー、【復活】という特技を持っているらしかった。  この特技は、パーツがバラバラになっても、中心のAIさえ破壊されなければ、パーツ同士の電子力で引き合い、修復ができるのだ。まさに無敵だが、攻撃力が大幅に削がれ、また一撃必殺系の相手に弱いという弱点もある。  それにしても……  アーグラのルールは、一人での戦闘とすることと、レアパーツの一部制限、あとは観客への危害は禁止することだけだ。試合専用のコピーAIをつけるので、ノックアウトしてもアーティーでなくなるわけではない。  このコピーAIは、自分のAIの能力を完全に模倣しているので、性能が劣ることはない。  ここまでの試合になるか……  結果は、O型アーティーの圧勝だった。攻撃型のH型アーティーは、はじめは首尾よく大砲、追撃ミサイル、鉛弾を撃ち込み、レーザー、接近戦闘など積極的に攻撃したが、O型アーティーの復活に攻撃が間に合わず、とどめが刺せなかった。それにより、燃料切れとなり、O型アーティーは、一度も触れずに勝利したのだ。ちなみに、AIは電気、ロボットパーツは燃料で、人間は食物で機能する。どれかが欠けると、機能が停止してしまう。  まだこれの上がいるのか。 「どうだ。これがアーグラじゃ」  博士の声が耳に入ってきた。 「ああ。でもわくわくしてるよ。こんな強いやつがいるなんてな」 「ふん。さすがシンじゃな。そういうと思っておったよ」 「もう分かっていると思うが、アーグラでは正攻法で戦うやつは勝てん。頭を少し使わん  といかん。」 「まあそれは……」 「わしもそれは知っておる。ただ、自信を過信に変えるなよ。お前は度々詰めが甘いことがあるからな。それに、ずばり今一番強化すべきは、お前じゃない。sariのほうだ。」 「え、sari?」  その言葉に反応してsariが起動するのを、シンは胸の動きで感じた。
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