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「特別訓練?なんだそれ?」  博士から急に話をされたシンは、ひどく戸惑っていた。 「その名の通り、特別な訓練だ。まだ説明していなかったな」  それから、博士はその訓練について話し始めた。 「そもそも、アーグラ出場の為には予選を突破しないといけないのはもう知っているだろう。各県の予選通過者が東京で行われる決勝リーグに進める」 「なるほどなるほど」 「しかし、この特別訓練で優勝すると、決勝リーグの参加権と、初戦シード権を得られるのだ」 「それじゃあ、これは訓練じゃなくて、特別試験ってことか?」 「ああ、そう言った方が正しいかもしれんな。」 「それで、そこでは何をするんだ?」  そこが一番の問題だった。特別訓練と言われても、全くピンとこない。 「それはわからん。毎年の訓練内容は公開されていないし、参加者は黙秘が義務付けられているからな。ただ、噂によれば、相当きついのは確かじゃ」  博士がきついと言う特別訓練。見当もつかないな。 「それにしても、ずいぶん急だな。明日なんて」 「言おうと思っとたんじゃが、忘れていてな。明日から、1ヶ月間だ。ただ、1ヶ月以内に終わった例もあるから、大体の数値じゃがな」 「1か月!?長くないか?」 「長いか短いかはお前次第だろうな。まあせいぜい頑張ってこい」  長いか短いかは自分次第、か。いまいち真意は掴めないな。もしかしたら、博士は何か知っているのかもしれない。明らかに挙動不審だし。 「ほれ。一旦sariは返そう」  博士はシンの体にsariを取り付ける。  明日から一か月。どんな訓練なんだ……  その日の夜は眠れなかった。気になっていることがあると、人はどうしてこうも眠れないのだろうか。そして、朝になった。  その来訪客が訪れたのは、朝の8時ちょうどだった。家の前に、小型ドローンが降り立った。 「参加者番号170番 シン様。 この画面の場所に今から行ってください」  機械的な声で、ドローンが喋った。そうか。どこか別の場所でその特別訓練はあるんだろう。 「んーと。沖縄か。 Hey,sari。目的地を沖縄に設定して飛行モードだ」 『目的地 を 沖縄 に 設定 します 脚 パーツ を 変形開始』  なぜ沖縄なのか疑問には思ったが、気にはしなかった。シンの体が宙に浮きだす。東郷博士の改造のおかげで、前よりはるかにスピードは上がっている。 「飛行中、そして到着してからも、他のアーティーへの接触は禁止です。接触があった場合、即失格とします」さっきのドローンがそう言っていたのを思い出した。  でも、あっちから襲ってきたらどうすんだ。逃げるしかないんだろうな。逃げられずに負けてしまえば、その時点で失格ということなんだろう。  程なくして、沖縄のとある無人島についた。大きさはそこそこで、中央に大きな山がある。全体的に、緑が多い気がする。  シンは、島めがけて降下し始めた。それなりのアーティーが集まっていた。 「sari,何人いるかわかるか?」  空中からしか全体の多さはわからないので、今のうちに把握しておこうと思ったのだ。 『168人 です。間違いありません』  あ、そうか。昨日博士に改造してもらったんだ。いつもは、約何人です。としか言わないのに。確か、対象認識プログラムをアップデートしたとか言ってたな。  シンは島に足をつけた。実に様々な種類のアーティーがいたが、比較的若いアーティーが多かった。 「参加番号170番シン様ですか?」  STAFF と背中に書かれたジャンバーを着た男がシンに近づいてきた。 「あ、そうです」 「了解です。すいませーん。乾さん。全員揃いました」 「お、揃ったか。じゃあ始めるぞ。みなさーん!今から発信するデータを受け取ってください」  シンに尋ねてきた男は、乾という男に報告し、その乾が、その場にいるアーティーに向かって、突然叫びだした。  ピロン  sariに、データが送られてきたようだ。シンは胸についているパネルを取り外し、その内容を読み始めた。  しかし、その内容は、なんとも奇怪な内容だった。 【アーティー特別訓練ルール】  今現在、この島には多くのアーティーが存在する。今からあなたたちには、一か月間、この無人島でゲームをしてもらう。このゲームは、マイル と呼ばれるポイント制で行う。一か月後の午前6時に、マイルを一番多く保有していたものが一位となり、それ以降はマイル順に、二位、三位と順位が決まる。三位までは、賞金が用意される。各々のパネル式の端末で、参加者全員の番号、容姿、名前が確認できる。ただし、生存しているか否か、生存者の数はわからない。  マイルを獲得する方法は以下の通りである。  1.アーティーの撃破 1000マイル  ただし、自分も撃破された時点で失格となる。尚、このゲームではアーティカルグランプリ同様、コピーAIを使用するので、失格になっても修復が可能である。  2.チャンスタイム マイル上限なし  一か月間で三回、チャンスタイムと呼ばれる時間を設ける。時間は1時間で、他のアーティーの保有するマイル数をメールで申請し、正解すれば、そのアーティーは失格、持っていたマイルをそのまま獲得できる。  3.同盟 マイル上限なし  5人以上のアーティーが集まれば、同盟を組むことができる。同盟仲間内での攻撃は禁止である。  同盟仲間の者には、毎日、その同盟内で一番マイルが多いアーティーの100分の1のマイルが支給される。  ただし、同盟を組むときには、山の頂上の装置に申請をすること。同盟に新しく入る、抜ける、は新たに申請する必要はないが、同盟を脱退した場合、1時間は他のアーティーに攻撃を加えることができない。同盟が設立された場合、その同盟の名前だけが各々のパネルで確認できる。  4.裏切り マイル上限なし  同盟を組んでから3日後以降、裏切りが可能となる。裏切りとは、同盟の脱退ではない。  同盟に加入しているアーティーは、メールで、同盟内で一番多くマイルを保有しているのが誰かを当てれば、そのアーティーのマイルをそのまま獲得できる。マイル数を当てる必要はない。当てられたアーティーは、マイル0となり、脱落処分。ただし、外せば、自分が0となる。この場合は両者脱落にはならない。  禁止行為は、上空100メートル以上を飛行すること、島の領土から出ること、これらは即失格となる。リタイアは、メールで申請すること。その後、ドローンの指示に従うこと。  さらに、このゲームでは、マイルで物資購入も行える。購入希望の際は、自分のパネルで申請すること。翌日午前6時に、ドローンが物資を運んでくる。ただし、一部例外はある。購入可能な物資は多くあり、劇のものはほんの一例である。  燃料及び電気 500マイル  修復キット 500マイル  各パーツ レアリティによって異なる(コモン300マイル ノーマル500マイル レア800マイル)  探査用ドローン 1000マイル  洞窟 2000マイル など (洞窟の期限は24時間で、洞窟の場所は他のアーティーにはわからず、中にいるときには攻撃されない。最大10人まで入ることができる。購入した際は、自分にだけ洞窟の位置が知らされ、翌日午前6時から利用可能。)  ルールは以上。12時からゲームが開始する。それまでに充電スポットで充電をして、受付でコピーAIを装着するように。  と、書かれてあった。  まさかこんな内容だと、誰が想像しただろう。このルールの巧妙なところは、アーティー同士の攻撃によってマイルを獲得するもあり、同盟や獲得スポットで稼ぐもあり、さらに、その同盟という要素に、裏切りという要素があることだろう。勝ち方は様々だ。一見、単純そうに見えて実は複雑だと思う。  例えば、ずっとアーティーを倒し続ければ、当然一位になれるが、ダメージを受けたり、同盟から集団攻撃を受ければ、失格となってしまう恐れがある。なんとも難しい。  そして、シンはあることに気づいた。上空からこの島のアーティーを確認したとき、sariは168人と言っていた。それにシンを加えて、169人。シンの参加番号が、170番だったので、最低でも170人はいるはずだ。一体どういうことなのか。sariの間違いか?いやそんなはずは……  とりあえず考えても仕方がない。今は充電スポットに行こう。  訓練開始まで残り3時間だった。一波乱ありそうだな、と、シンは眉間にシワを寄せた。
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