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小休止1  気がつけば、コトリと出会って数ヶ月の時間が過ぎた。彼女の魔術の腕はどんどん上がり、かなり上級の魔術も使えるようになっていた。出会った当時の彼女は口数も少なくどこか人に怯えているようだったが、今では明るくなりよく人を振り回すようになった。静かな方が好きだが、彼女と賑やかに過ごすのも嫌いじゃない。 「おはよう、コトリ。今日も早いな」 「おはようございます、師匠」  ここ数日は、私が起きると既に起きていて玄関先にある、魔導書が天井まで収まっている本棚の前で色々と読んでいることが多くなっていた。今日も階段を降りて本棚の方を覗くと、彼女は座って本を広げていた。 「今日はどんなのを覚えるんだ?」  そう声かけると、コトリは視線を上げて笑みを浮かべて質問に答えてくれた。 「自分の血筋的に得意な、空間魔術でも覚えようかと。テレポートや結界とか」 「それは凄いな。やってみるといいさ」 「はい。まずは、朝御飯にしませんか?」 「そうだな。私もお腹が空いた。」 「今日はハムエッグとヨーグルトですよ」 「お、楽しみだな」  二人で会話をしながら、広げていた本を閉じてダイニングへと向かう。コトリがいるこの生活も、もうだいぶ慣れたものだ。 「今日はこの後、街に薬草で作った薬を売りに行ってきますね」 「わざわざありがとうな、コトリ」 「これくらいさせてくださいよ、師匠。それに、せっかく知識も材料も揃っているのに、このまま腐らせるのは勿体ないですし」 「そうだな、コトリの言うとおりだな」  十歳になったコトリは、様々な知識を付けてはこうして実行に移している。このままいけば、私よりもずっと偉大な魔術師になると感じている。 「ごちそうさまです」 「ごちそうさま、美味しかったよ。日々料理の腕も上がっているじゃないか、コトリ」 「それはよかったです。それじゃあ、行ってきますね」 「食器は私が洗っておくから、気を付けて行ってくるんだよ」 「はい、わかりました」  席を立って紺色の上着を羽織り、調合した薬の入った籠を持って街へと向かうコトリを見送り、私は後片付けを進めた。彼女の成長は嬉しいが、同時に別れの時が近づいてきているのだと自覚させられ、寂しくもなるものだ。どんなに願っても、私と彼女の生きれる時間は違う。だからこそ、少しでも彼女が幸せで過ごせるように努める。 「どうか、コトリの未来が明るいものでありますように」  年老いた私にはこれくらいしか願えないが、少しでも良いものであることを心から思っている。
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