フォントをダウンロード中
ページの左右でマウスを左クリックします。
または、 キーボードの左右の矢印キーを入力します。
ページ上で指先を左右になぞると、 前/次ページへ移動します。
メニューはページをタッチすると現れます。
× ヘルプを閉じる
 充電スポットには多くのアーティーが列を作っていた。こうして見ると、実に様々な種類のアーティーがいることがわかる。シンは、並びながらこの訓練の攻略法を考えていた。  考えを巡らせていると、急に列の前方から大きな声が聞こえた。 「今からここに、バーブ同盟を発足する!入りたい者は、訓練が始まる前に、俺に言え!」  数人のアーティーが近寄って行った。  どうやら、訓練が始まる前から同盟を作ろうとしているらしい。もう既に戦いは始まっているのだ。  どうするかな……  自分の立ち回り方に不安になっていた時、突然背後から声をかけられた。 「もしよかったら、僕と手を組まない?」  振り返ると、同い年くらいの青年が、シンを見ていた。 「手を組む?俺とか?」 「ああ。君スピード型だよね?僕は砲撃型なんだけど、スピード型のアーティーがなかなかいなくて」 「そういうことか。砲撃型はスピード型の天敵で、相性最悪だから、スピード型の俺なら手を組むと思ったのか」  ご名答。といったような顔で青年が微笑む。しかし、ここは手を組んだ方が得策だろう。いくらシンでも、砲撃型全員に勝てるかどうかはわからない。そういった意味では、足りないものを補うために、ここは手を組むべきだ。 「いいだろう。手を組もう。だが、お互いに裏切らないという保証はないんじゃないか?それとも、承知の上で俺に掛け合ってるのか?」  初対面の相手を初めから信じきるのもお人よしすぎる気がするが。 「いや、ある意味これは賭けだよ。さっき、同盟を作ると言って仲間を集めていたバーブってやつがいただろう。あいつがいる限り、僕に勝ち目はないんだ。だから、誰かと手を組まないと、一位を取るのは不可能だろうね」 「バーブってやつはそんなに強いのか?」 「もちろん強いさ。パワー型の中でもトップクラスの出力数だ。あの巨体の割に、スピードも悪くない。けれど、バーブの側近に、グレンってアーティーがいる。やつは、頭脳型で作戦を立てさせたらピカイチだろうね。戦闘面ではそんなにだけれど、そのグレンとバーブのコンビには勝てないよ。」  なるほど。あの二人を落とすには、俺も一人では無理だろうな。だが、パートナーを作るのは、メリットはもちろん、それなりのデメリットもある。もしパートナーが弱くて足手まといになれば、こちらが痛手を負うことになる。 「君が今何を考えているかは大体わかるよ。僕の強さについて疑問なんだろう?」  シンは、考えを当てられ、心底驚いた。 「戦闘面では君の方が優秀だろうね。砲撃型とスピード型っていう相性を考えても、君には勝てないな。だからこそ、頭で証明するよ。この中なら、誰にも負けない自信がある」  断言するほどなので、相当の頭脳というのは伝わってくる。それに、戦闘面では負けることはなさそうだから、裏切られたとしても負けることはない。もしも使い物にならなければ、途中で切り捨てればいい。 「じゃあよろしくな。俺はシン。知っての通りスピード命のH型アーティーだ。この訓練、1位を獲りに行く。それ以外はない」 「ああ。もちろんだよ。僕の名前はコルン。頭脳型に寄った砲撃型さ。基本的に戦略を立てて勝ってるよ。経験値がほかのアーティーより低いから、少し迷惑をかけるかもしれないね。でも、できるだけ君を援助するよ」 「まあ足手まといにならなければそれでいいさ。最終結果で俺たちが一位を獲れそうな場合、マイルを譲渡して同率にすればいいんだな?」 「そう。そうすれば二人とも一位で終われるからね。これは二人だからできるけれど、同盟に入ればそうはいかないからね。一位になりたいなら、最終的に同盟は抜けなきゃならない。同盟のトップ以外はね」  まあ同盟を作るやつの目的は最初からそれだろうな。あるいは…… 「気づいたみたいだね。バーブとグレンは、助け合うために同盟なんか作らない。全ては、勝つためだよ。この特別訓練、マイルを集めるっていうルールは単純だけれど、根幹はかなり複雑みたいだ」  そういうと、コルンは目を逸らし、難しい顔をした。  充電スポットに並んで20分、ようやくシンの番が来た。  コードを拾い上げ、背中のプラグに差し込む。  さて、どうするか……  さっき話しかけてきたコルンというアーティー。頭は確かにキレそうだし、砲撃型なら相性も悪くない。最高の選択といえるだろう。当然、あちらもそう思って近づいたはずだ。しかし、こういった状況では、常に見誤ってはいけないことがある。なぜか人は、少なくとも一部分は、他人より勝っているという考え方をするものだ。そういう場合も多いが常に相手の力量を見極めなければならない。  やっぱりバカに見えるか……  まあいい。始まる前に少し調べてもらうか。  そう言って、シンは博士にメールを送った。  特別訓練開始まで、残り10分だった。 「あ、ここにいたのかシン。今ちょうど充電が終わったよ。コピーAIも貰ったし」 「コルン、お前、現段階の作戦を教えてくれないか」  すると、コルンは少し顔をしかめた。 「そうだよね。作戦は君にも知ってもらわなきゃいけないし。なんだか緊張するなあ」 「大丈夫だ。集団で襲われでもしない限り、負けることはない」 「頼もしいね。じゃあ始めから言うよ。まず、訓練が開始されたら、3つのパターンに分かれると思う。一つ目は戦闘。二つ目はスポット。三つめは拠点」 「まあ、大体そうだろうな」 「僕の見解では、戦闘を行うのは少ないと思う。戦闘しても、同盟での集団攻撃だろうね。スポットを探しに行くアーティーもそこまで多くないはずだ。なにしろリスクが大きいからね。となると、恐らく多くがとる行動は一つ」 「まあ、拠点を探しに行くだろうな」 「そうだよね。この島は相当広い。さっき測ってみたけれど、外周30キロほどだった」 「それに加えて、木や岩が多くて隠れやすいし、滝や山なんかもあるからな。洞窟だってある程度用意されてるだろうしな。」 「そうなんだ。だから、多くのアーティーが今夜は行動はせずに拠点で待機か、偵察を行うはずなんだ。そこで、僕らは早速仕掛けに行く」 「で、俺は何をすればいいんだ」  シンはコルンの話を、慎重に聞いていた。 「シンには、偵察に出てほしい。君のそのスピードを活かして、できるだけ多くの拠点を見つけ出してほしいんだ」 「なるほどな。先にほかのやつらの拠点を突き止めて、有利に運ぼうってわけか。期間も長いし、悪くない作戦だ」 「ありがとう。ところで参加者は全員0マイルからのスタートなんだけれど、やはり始めに調達したいものがあるから、何体かのアーティーは倒す必要があるんだ」 「調達?なにを買うつもりだ?」  シンは、自分の胸からパネルを取り外し、購入可能一覧を眺める。 「トランシーバーとソーラー充電器だよ。この二つがあれば、盗聴器を作れる。改造がダメなんて、どこにも書いていないからね。それに、将来的にはドローンも必要だ」  改造して盗聴器が作れるのか。改造ができるという仕組みに気づいただけでも、選択肢がかなり広がる。 「それで?俺が倒せばいいのか?」 「いや、そこは二人で行こう。万が一もあるし」 「なんだと?」  シンは少しカチンときた。砲撃型に対しても、勝率は大いにある。 「そうじゃないよ、例えば、集団戦闘になったら、大変なことになるし、勝ったとしてもそこを別のアーティーにやられちゃ意味がないよ。それに、シンだけが先に充電を使い切ると、まずいことになる。充電にもマイルがかかるから」 「そうか。じゃあ俺とお前で何体か倒せばいいんだな。足引っ張るなよ」 「もちろんさ。精一杯頑張ろう」  訓練開始まで残り3分。いよいよ、戦いが始まる。血が沸騰するような、熱い勝負がしたい。体が、勝利に飢えているのが、直に分かった。
1
15
シリーズ一覧
感想を送る
作品を紹介
ブックマーク
しおりを挟む
作品情報
使い方
登録が完了しました!
確認事項
戻る
実行