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 ―――この世界は、なんて醜いのだろうか。  この世界で地位の高い者は私利私欲のために争い、人々を戦争に巻き込み、尊い命を何百、何千と踏み潰していく。  ―――この世界は、なんて醜いのだろうか。  命は生きていくためにいろんな命を喰らって生きていく。人間は、この世界の全てを喰らって生きている。  ―――この世界は、なんて醜いのだろうか。  永遠なんて存在しないのに、永遠を求めて人は争い合う。  永遠を手に入れるために、たとえどんなに小さな子供でさえ、大人はそのために殺してしまう。  ―――この世界は、醜い。 「はぁ…はぁ…」  雪の降る村に、二つの人影があった。  一人は少年で、一人は女だった。二人は未だ降り積もる雪の上を走っている。  辺り一面、雪に覆われている。太陽の光が反射して、女の目に光が射し込んでくる。 「……」  女の隣を歩く少年が膝をつく。彼はまだ子供だ。体力も女のようにある訳じゃない。 「大丈夫ですか? …あそこで休みましょう」 「うん…」  山の中にある村の家に身を潜める。この村の住人はもう居なく、廃村と成り果てていた。  その理由を彼女はよく知っている。こうなったのは全て、彼女がいたからこそ起きたことだ。 「……追っ手はいません。しばらくここに隠れましょう」  少年に優しく言うと、無言で頷いた。寒い空間で不安がる少年を女は寄り添って抱きしめる。 「…大丈夫ですよ。…大丈夫だから……」  そう優しく少年の耳元で囁いた。  と言っても、正直彼女も不安で仕方がない。この先、どうなってしまうのだろうか。人を殺して、あの場所から逃げて、挙句の果てにはこんな罪もない子を巻き込んで。こんなクズ、世界のどこを探しても見つからないだろう。女は自分自身を心の中で嘲笑った。 「しょっ、と」  女は毛布を引きずり出して、眠りについた少年に被せる。  女は今も吹雪に見舞われる外を見てため息をついた。まだまだ、この吹雪は止みそうにない。 「これから、どうしましょうか……」  女は誰にも聞こえないほどの小さな声で呟く。今は誰も頼れる者がいない。頼れるのは自分だけ。弱気になっていた女はバシっと自分の顔を両手で叩いた。 (自分が弱気になっては、申し訳ないですね…)  自分から、この人を守ると決めたのだ。自分でそう決めたからには、何がなんでも守り通す。そんなことも忘れかけていた。 「よし…私、頑張りますから」  女はそう言って、少年の隣に横になって眠りについた。
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