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 改めて考えてみると、桃華は将来のことを考えたことがなかった。  『お嫁さん』も将来のことと言えばそうなのだが、漠然としすぎている。大体、結婚は桃華の中では既定路線だ。将来とまで言うほどのことではない。  私は何になりたいのだろうか。何になるべきだろうか。  お、哲学的かもしれない。知性を感じさせるね。  桃華は自分でそう思って、そんなわけないだろう、と勝手に落ち込んだ。  翌日、夏期講習が終わった後、桃華は大樹とラーメン屋に向かった。 「将来の夢がない?」  ラーメンを啜りながら、大樹は復唱する。 「そりゃまた、難儀な問題だなぁ」 「ですよねぇ」  桃華は相槌を打つ。一朝一夕で解決する問題ではないからこそ、難儀なのだ。 「単純にだ、お前の得意なことを伸ばす方向で決めたらどうだ?」  得意なこと。  自画自賛だが、桃華は何でも器用に卒なくこなすことができる。ただおっちょこちょいで、結果は惨憺たるものになることが多いだけだ。  そう考えると、長所がすべて短所に早変わりしている気がする。 「まあ、将来何になりたいかは、自分で見つけるしかないからなぁ。他人任せにすると、後々後悔するだけだぞ」 「ですよねぇ」  桃華はため息を吐く。勢いでラーメンのナルトをムシャムシャと食べ、スープを飲む。魚介系の出汁が効いていて美味しい。  おっちょこちょいでもできる仕事は何かないだろうか。 「先輩、おっちょこちょいでもできる仕事って何かないですか?」  大樹はしばし考えた後、こう言った。 「桃華、賢い働き者は人に使われる立場が一番いいらしいぞ。何かの格言でそういうのがあった」 「私、賢くないですよ」 「何言ってんだ。少なくとも馬鹿じゃあないだろう。いわゆる参謀タイプというか、そうだな、考えを出して、人に伝える仕事、っていうのはどうだ?」  なかなか限定的な仕事だ。すぐには思いつかない。 「うーん、ピンと来ないなぁ」 「まだ一年あるんだ、ゆっくり考えたほうがいいぞ」 「はーい」  桃華はラーメンを食べた後、大樹と別れた。  帰り道、桃華は大樹の言葉を反芻する。  考えを出すだけなら、おっちょこちょいは関係ないかな。人に伝える仕事——記者とか、ライターかな。小説家なんていいかもしれない。少なくとも、人の生き死にに関わることはないだろう。  なら、文学部志望でも問題ないね!  桃華は、そんな考えを頭の中に巡らせていて、結局転んだ。  そしてその現場を、ちょうど夏期講習から帰ってきた純に見られた。
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