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そこは、おおよそ人類の生息していたであろう土地だった。大地は細かい砂で覆われている。その砂は、時折吹き抜ける突風に飛ばされながら、どこかへふらふらと移動し続けているようだ。この建造物らしきものも、全体が風化しており、長い年月をかけて風に削られ続け、とうとう原形をとどめていられなくなっている。 「ここも、そろそろ何も無くなってしまいそうだな。」 建造物から女性が出てきた。全身を布で覆い、ゴーグルをかけている。周りを少し見渡した後、女性は建造物に入り、中央付近の床の土を払いのけた。すると鉄製の扉が出現した。女性は、その重い扉を開き、中へ入っていった。 中の様子は外の世界とは大きく違い、光も、ガラスも、温かい空気もあった。外観とは少し違うようで、それほど古くないように見える。それはつまり、人類の住処であろうことが一目で分かるような代物であった。コンクリートの廊下をコツコツと音を立てながら歩いていった。左右へ自動で開く扉を潜り抜け、女性は食糧庫へ入った。中を確認するとふうっとため息をつき近くの椅子に座った。そして、部屋の奥で作業をしているロボットへ向かい、ハル!と言った。すると、ハルと呼ばれたロボットは作業をやめ、女性の方へ移動してきた。ハルは、本と何も映っていない写真を手にしている。 「この建物は、元は民家のようですね。しかし、それも数百年ほど前の事でしょう。どうやら夫婦と子供一人の三人暮らしの家族のようです。こちらにある写真は劣化しており、家族を認識することができませんでしたが、記念に取っておきますか?」 ハルは写真と、この建造物のような建物の資料を手渡してきた。 「この辺りは何も無くなると思いますよ。この食料もすべて口にできませんし、洪水による飲料水の備蓄がありますが、次にそれがいつ来てくれるか分かりません。食料も全てが栽培用の肥料として使うしかない状態です。移動したくても、私自身、ここ最近の吹き荒れる風では外に出ることができませんからね。機械は埃に弱いんですよ。」 キュルキュルとモーターを動かす音が聞こえる。ハルは人間っぽく拗ねる素ぶりをみせ、また作業へ戻っていった。 「何もかも、結局無くなるのか…。」 女性は、栽培部屋へ行き植物の様子を確かめる。部屋の隅に置かれた複数の瓶を持ち上げて、中身の種子を確認する。この瓶の中には、特殊な液体で種子が長期保存されているが、数百年という年月により種子自体の発芽能力が失われつつある。この種子であれば、黄色く変色しているものはもう使えない。 女性は、残りの瓶の数を数えてメモに記入し、作業場へと移動した。PCに向かい、タッチパネルと音声データによる記録を残す作業をしている。 【覚醒から90日が経過した。地上では砂漠化が進んでおり、生物の発見は愚か、植物の確認もできなかった。今まで人類が築いてきた歴史や文化の証が、この地球上から消え去ろうとしている。】
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