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 いよいよ始まった特別訓練。サキを新たに仲間に加え、スピード型で火力担当のシン、砲撃型で作戦担当のコルン、防御型でサポート担当のサキと、相性はかなりいいチームが出来上がった。 「実は僕の作戦は、マイルを多少稼ぐところから始まるんだ。チームバランスの確認がてら、行ってこよう」  コルンがシンたち二人に言った。 「よし。じゃあなるべくこのあたりがいいだろう。不意打ちを避けるために、一旦海のフィールドに行く方がいいかもな。ここは山の中腹だから敵に見つかりにくいが、逆にこちらも見つけにくいし」  シンは海での戦闘を提案する。 「そうね。とりあえず、防御でサポートするにしてもここじゃ狭いわ。砲撃型が複数来たら終わりね」  サキからしてもこの地形はやりにくいようだ。拠点としては向いているが、戦闘には向いていない地域なのは明白だ。 「さすがだね二人とも。僕もそうするつもりだったんだ。戦い方はシンプルに、シンが敵の強キャラにダメージを与えて、僕が援護射撃、サキはもっぱら防御に回ってもらおう」  まあそうなるだろうな。この状況なら。シンからしても異論はない。 「早速行こう。早く倒して早く帰るんだ」  シンが二人を先導する形となった。 「Hey,sari 飛行モード。 速度は100kmかな。近くの海まで」 『了解 速度 100km で 海に移動 開始』 「お前ら。気をつけろよ。油断はするな」 「分かってるわ。それはお互い様でしょ」 「3000マイル、三体倒したら終わりにしよう」 「じゃあ行くか!」  シンから青い炎が出て体が浮き出す。  コルンとサキも同様に飛行モードに入っている。  海は割と近いので、すぐに着くはずだ。しかしながら、シンにはずっと引っかかっていることがあった。  この会場に着いたときの違和感。120番まで番号が発行されているのに116人しかいないこと。  コルンに伝えるべきか……  シンは少しの間悩んだ。しかしすぐに森を抜けそうなあたりまで来てしまった。  だめだ。今は集中しないと。 「もうすぐ森を抜けて海に出るぞ!気をつけろよ!」  後ろにいるはずの二人に叫ぶ。  海を出た瞬間、そこには驚くべき光景が広がっていた。  地獄とも言える戦場だったのだ。多くのアーティーが戦闘を繰り広げていた。まだ1日目だというのに。 「なっ?!」  シンは驚きもあまり思わず叫んでしまう。大きな音がしていたから戦闘が起こっているのは予測できたが…さすがに予想外だな……しかし、不運にも、叫んでしまったせいで複数のアーティーに気づかれてしまった。そして、一斉に攻撃を仕掛けてきた。  こいつら……!同盟か……!  5人ほどのアーティーがシンを仕留めようしてくる。同盟内での攻撃は禁止。すると必然的に、チーム戦となるので、ソロプレイヤーは圧倒的不利だ。まずはじめに、同じスピード型で、中年のおっさんアーティーがこちらに向かって突進してきた。 「一人で来るなんて勇敢だねぇ。仲間になりたいって言っても生憎うちは満員でね。これ以上いらないのさ。だから1000マイル美味しくいただくぞぉ」 「よぉおっさん。1対6で勝ちを確信したか?寝言は寝て言いな」  シンは余裕の表情でおっさんの攻撃をかわす。負ける気は毛頭ない。 「ふふん。流石早いねぇ。うちの同盟に欲しいくらいだ。もちろん戦うのは私一人じゃないのさ」  続けてパワー型のアーティーがパンチを繰り出してくる。シンは慌てず、これを避ける。スピード型のおっさんアーティーとよく似てるな。親子ってとこか。 「流石にコンビネーション抜群だな。でも悪いけど、負ける気はしないね」  シンは高速で斬撃を放った。空中に高速で切り込みを入れることで、その衝撃波でダメージを与える技だ。その斬撃は、パワー型アーティーの肩を破損させた。 「うわぁぁぁ!」  とても驚いたのか、悲鳴をあげている。 「む、息子よ!おのれ……ラウド!あいつを行動不能にしてやれ!」  今度は奥にいた若いアーティーが反応する。何型かはわからない。 「了解です。悪いけど終わりだよ〜 それ、クアトロチェーン〜」 【クアトロチェーン】という名前の特技を出してきたようだが、まだ何も起こらない。いかにも中二病っぽい名前の特技だが、いったいどんな技なのだろうか。 「ふっふっ。3秒後にはその顔が恐怖の色に染まるでしょう」  おっさんが気持ち悪い笑い方をする。  そして、それは急に現れた。  ガシィィィィン!!!  どこからか、謎の鎖が現れて、シンの両手両足を動けなくしてしまったのだ。 「くそっ……!」 「お。あーしの出番じゃね。じゃあ処理班いきまーす」  上空からギャルのアーティーがやって来る。ここにきて、シンと相性最悪の砲撃型で、ミサイル弾を容赦なく撃ってきた。どうやらこのおっさんと息子が引きつけ、あのラウドというやつが動きを止め、このギャルがとどめをさすのか……しかもまだ2人もいる……  どちらにせよまずい状況だな。まずはこの鎖を外さないと。  しかし、鎖は一向に外れない。この鎖!外部からの攻撃じゃないと外れない仕組みになってやがる!  なんとまさかの1日目で終わってしまうのだろうか。  飛んでくるミサイルに加え、パワー型のアーティーも再度パンチをしてくる。  絶体絶命……その時だった。  背後からミサイル弾が飛び、自分の目の前には何かが現れて視界が遮られた。そう、コルンとサキだったのだ。 「シン!速すぎるよ!先に行っちゃっていざ来てみたらこんな状況で!」  コルンが飛んでくるミサイル弾に応戦しながら説教をしてきた。 「あ。俺が速すぎたのか。二人ともどこ行ったのかと思ったぜ」 「全く……身勝手すぎる……」  パンチを受け止めながらサキが言った。乱戦の中、いつの間にか鎖が外れていた。何か衝撃を受けたのだろう。 「何はともあれ無事でよかった。ぼくたちが攻撃を捌くから、倒すのは頼むよシン」 「任せなって。Hey,sari レーザー射出用意」 『了解 レーザー 射出 準備 完了』 「ほお。仲間がいたのか。だけどまだ6対3さ。こちらが圧倒的有利だねぇ」 「面倒な雑魚は一斉に処理するものさ。おっさん。最高濃度のレーザーを浴びたことはあるか?」 「なにぃ?」  そう言ってシンは上空に飛び出した。 「冥土の土産に受け取りな。ほらよっと……!」  コルンとサキに当たらないよう配慮して、右腕からレーザーを放出した。  強い光で、様子は見えないが、パワー型の1体以外は5体全て巻き込めたはずだ。 「くっそぉおおお」  叫び声が聞こえてくる。あのおっさんのもので間違いない。  レーザー放って10秒間経ち、止めてみると、予想通り5体は撃破に成功していた。 「さすがシン!あとはあのパワー型だけだ!」 「ちょっと早く仕留めてよ!こいつ…!なかなか強い!」  サキはかなり苦戦しているようだ。ただ、敵の体力は残りわずかなはずだ。 「サキ!一旦下がれ!」  サキに指示し、シンは1対1に持ち込んだ。 「うおおおお!父さんとみんなの仇だぁぁあああ」  パワー型のアーティーは腕を振り回し、範囲攻撃を繰り返している。 「悪いな。これはそういうゲームさ。H型もO型も関係ない。あるのは敵か味方かのみさ」  集中しろ。一瞬の隙を突けばおそらく……  ふぅ……………  手の先端を尖らせ、一瞬で敵のAIを貫く。そうすればパワー型には勝てる…!  そしてチャンス見計らいながら避け続けること3分後、燃料の残量が少なくなったからか、敵の動きが一瞬止まったのを、シンは見逃さなかった。  ここだ!!!  シュンッ  グサッッッ!  シンは目で追えないほどの速さで接近し、敵のAIを破壊した。パワー型のアーティーはその場に倒れた。こちらの勝利だ。 「よかった……」  サキが安堵のため息を漏らした。 「とりあえず拠点に戻ろう。ここは危険だ」  コルンは拠点に戻る準備をしていた。  シンもコルンに続いた。今度は置いていかない程度の速さで。 「とりあえずお疲れ様。シン、今稼いだマイルで修理キットと燃料を頼んでおいてね。今頼めばすぐ来るはずだ」  拠点に戻ったコルンは満足そうだった。それもそのはず。3000マイル獲得が目標だったのに、思いがけず6000も獲得できたのだ。 「やっぱりシンはすごかったよ。最初はびっくりしたけどね」  コルンが苦笑いして言う。 「本当よ。着いた瞬間ピンチなんて、あと少し遅かったら完全に終わりじゃない」  サキが呆れた表情でこちらを見てくる。 「そのことに関してはマジで申し訳ない……」 「ただ、シンの戦闘力の高さがないと勝てなかったね。相手もなかなかの強さだったし、何より6体だった」 「そうね。特にレーザーの威力なんかは流石としか言いようがなかったわ」  シンは褒められて嬉しくなり、にやけるのを必死に抑えた。 「二人の動きも良かった。コルンは正確に捌いてたし、サキはなるべくダメージが少ないようにパンチを受けてただろ」  そう言ったところで、ドローンが物資を運んできた。  シンはダンボールの中身を開けてみた。  ええっと、燃料が3人分と修理キットか。あとは?なんだこれ?  見知らぬ物が二つあった。 「それが今回の作戦の目玉だよ。盗聴器とドローンさ」  コルンの作戦道具のようだ。 「そういえば作戦を聞いてないわ」  サキは修理キットを使いながらコルンに尋ねる。 「じゃあ説明するよ。ただ、今はまだ全部は話さない。そっちの方が今後うまくいくからだ。そこは許してほしい」 「全貌が知らされないのはちょっと気になるわね。信用してないわけではないけれど」 「確かにそうか。じゃあ今回に限って書面契約を全員でしておこう。念のためにね。途中でいらないと思えば破り捨てればいい」  そう言って、シンたちは紙で契約を交わした。 「僕たちはこれから二週間、夜以外は全て別行動になる。夜だけここに集まろう」 「日中は何をすればいいんだ?」 「3人が全員、違う同盟に入るんだ」 「同盟に入るだと……?」  シンは、意外な作戦に驚いてしまった。 「そう!今回狙うのは同盟の内部崩壊さ。つまり裏切り制度を利用する。そして1日目の今日に同盟に入らないのも理由があるんだ。1日目は戦闘が多いだろうと僕は予想してた。同盟を組んで戦闘して、誰かがマイルを得ると、明日には全員にマイルが配布されるよね。だから全員がマイルを得た状態になる。そこで敢えて2日目以降に同盟に加入して、誰かが同盟内のマイルをある程度特定できる状況を避けるんだ。確か、チャンスタイムって制度があった。それに利用される可能性が高いから、あえてバラけさせたんだ」  なるほど。だから今日戦闘したのか。 「じゃあ今の俺のマイルは全員で分けておいたほうがいいな。リスクの分散のために」 「そうしよう。あと、寝るときはやっぱり見張りが必要だと思う。だから3人で交代にしよう。3時間ずつでいいかな。今日は僕が一番疲れがないだろうから、僕が先にするよ」 「わかったわ。私は修理キットが終わってから寝る」  そうして、拠点の入り口付近でコルンが見張りをし、シンは早めに寝ることにした。  寝る体制になると、サキが話しかけてきた。 「ねえ、あなたはコルンを信用しているの?」 「あ、ああ。してるけど。なんでそんなこと聞くんだ?」 「初対面でしょ?私も信用してないわけではないけど、やっぱりちょっとは疑いの気持ちがある」 「確かにそうだ。けど、この特別訓練は、確実に一人じゃ勝てないようになってる。結局、大事なのは信頼だからな」 「まあ……わかってるけど……」  サキはどこか納得できない様子だ。 「お前は既に信頼を得てると思うぞ。コルンはさっきの戦闘でも、お前の心配をしてたし、俺が危ない所を助けてくれたじゃないか」 「まあそうね。感謝してほしいわ」 「そうだな。危なかったよ。ありがとな」 「うるさい黙って」 「え?なんで?」  シンはわけが分からず硬直する。感謝に暴言で返されるとは… 「は、早く寝たら!?疲れてるでしょ!」 「お、おう……」  よくわからないが、まあいいだろう。とりあえず寝ることにした。  とは言え、俺もコルンの真偽に関しては調査段階だが……  どちらにせよ、1日目が快挙であることには変わりない。明日からも厳しい道のりが待っているだろう。だが、この3人なら乗り越えられる。そう信じることにして、シンは眠りについた。
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