フォントをダウンロード中
ページの左右でマウスを左クリックします。
または、 キーボードの左右の矢印キーを入力します。
ページ上で指先を左右になぞると、 前/次ページへ移動します。
メニューはページをタッチすると現れます。
× ヘルプを閉じる
「にしても、ココ最近の死亡事故数は異常ですね」 車の中で亜月正義あつきまさよしは呟いた。助手席に座ってい資料を読んでいた風和拓斗ふわたくとは一言。 「亜月…お前は何も感じなかったか?」 「…? いえ…」 「妙な所は幾つかあった。例えば、あの崩れ落ちたフェンス…鑑識が調べたが、錆も傷んでもいない。全く新品のものだ」 「ネジが緩んでいた…とかではなくて?」 「あぁ…根元からポッキリと折れていた。こればっかりは偶然や運が悪かったなんて都合のいいものじゃない…実は誰かによって仕組まれた殺人…とは思えないが、全くの事故とも言いきれない…おかしな話だ…」 「…いくらなんでも考えすぎでは?」 「…そうだな。少し休むか…昼も近いし、どっかで弁当でも買っていくか…」 「はい」 亜月は返事をしつつ、エンジンをかけて車を出してその場を去っていった。 ☆★☆★☆ 「……はぁ」 肌寒い寝室のベッドの上で時雨は大きくため息をつく。ココ最近、溜息をついてばかりだ。外を見ると既に日が昇っている。どうやら、寝ずに十二時間以上も考え事をしていたみたいだ。 「ニャー…」 ソラが心配そうにこっちを見て鳴き出す。そしてひょいと時雨の足に乗り移る。 「…ごめん。ちょっと降りてくれないかな」 ソラに降りてもらって時雨はポケットからスマホを出してメールの連絡先を見る。義母と義姉と、それから奏心。 「………」 かけてみるべきだろうか。一言、謝っておくべきだろうか。時雨の頭の中でいろんな考えが交差していた。色々迷っているうちに、スマホが鳴り出した。画面を見ると、義母の華澄からだった。 「…どうしたの? 義母さん」 奏心ではなくて安心したような、奏心ではなくて残念だったのか。二つの感情が入り交ざったような顔をしながら耳をスマホに傾ける。 『あぁ、時雨? 実は…』 ☆★☆★☆ 「えーと…人参、じゃがいも、玉ねぎ…牛乳二本と…」 華澄の頼みで、時雨は近くのスーパーに買い物に来ていた。なんでも「冷蔵庫がすっからかんだけど仕事で買いに行く余裕が無い」との事。千尋も仕事で帰りは遅く、同じく買い物に行くことは出来ない。だとすると、常に暇な時雨に頼むしかなかった。 「あとは…あったあった」 肉商品のコーナーにある牛肉に手を伸ばす。腕を伸ばして、隣の人と肩がぶつかる。 「あ、すみませ…」 気づかなかったが、隣には奏心がいた。 「き、奇遇だね…」 奏心は笑顔で時雨の方を見る。全くの作り笑顔で、演技もバレバレだった。 時雨にはなんとなく察しがついていた。恐らく義母の差し金だろう。本当に抜け目のない人だ。 「あぁ…黒華さん。黒華さんも買い物?」 「うん、まぁね…」 「そう。じゃあ、僕はまだ買い物あるから…」 「待って」 その場から去ろうとして、奏心に腕を掴まれる。この場でこの手を振り解こうと思っても、周りに人がいる。時雨は極力目立たないことを選んだ。 「………」 「この後、時間ある…?」 どうせ、時間なら作らされるだろう。時雨は心の底から諦めていた。 ★☆★☆★ 「はい。僕の部屋で待ってて。冷蔵庫にこいつら詰めてくるから」 「お邪魔しまーす…」 時雨に無理矢理時間を作らせて、奏心は時雨の家に来ていた。どことなく懐かしい感じの臭いが家中に漂っている。 「…ん?」 時雨がリビングのドアを開けて、一つ気になるものが見えた。男の人が笑顔で写真に写っているものが、仏壇に飾ってある。彼の父親だろうか。 時雨の言う通り、奏心は彼の部屋に入ってベッドに座り込む。それと同時にベッドの下でのんびりしていたソラが出てきてぴょこんと奏心の膝の上に乗る。 「よっ…と。おまたせ。ココア持ってきた」 「あ、ありがとう…」 荷物を詰め終えた時雨はココアの入ったカップを二つとお菓子の盛られた皿を載せたタライを持ってきて床に置く。 「ねぇ、鑑崎くん」 「なに?」 「あの写真の人って、鑑崎くんのお父さん?」 「…うん。僕がここに来る前に亡くなったんだって。義母さんはいい人だって言ってた」 自分の父親の事を知らないのか、彼は何処か他人事で、楽観的だった。 「義姉さんに聞けば色々わかると思うけど」 「…ううん。なんかごめん」 「いいよ。正直、よくわかんないし」 ココアを飲み干した時雨はクッキーの入った袋に手を伸ばして、袋からクッキーを取り出して口に放り込む。 「…学校。行かないとかな」 奏心は時雨の言葉を聞いて目を見開く。それを無視して時雨は続ける。 「昨日色々考えたんだ。別に高校卒業しなくても大学には行けるけど、人と会話しとかないと、後々大変そうだし、それに…」 言葉は続かず、誤魔化すために時雨は立ち上がって椅子に座り込む。すぐにパソコンの電源を入れて、ヘッドホンを付ける。 「そっか…」 時雨に聞こえてはいないだろうが奏心はそう返した。スマホに着信が来て確認すると、時雨から。 『わからないことは教えてくれるんだよね?』 奏心はふふっと笑い、ココアを飲み干して時雨の肩に両手を伸ばす。 「なに?」 「ふふーん」 「どうしたのさ…」
1
15
シリーズ一覧
感想を送る
作品を紹介
ブックマーク
しおりを挟む
作品情報
使い方
登録が完了しました!
確認事項
戻る
実行