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 周りの明るさで目が覚めた。目の前にはゴツゴツした岩ばかりだったので、一瞬なぜ自分がこんなところにいるのかわからなかったが、数秒の後、昨日の戦闘の記憶が蘇る。 「おはよう、シン」  そう声をかけたのはコルンだった。 「あ。そういえば俺、見張りしてない……ごめん……」  寝るときに3人で見張りの交代をすることを約束していたのに、いつの間にか朝になってしまっている。 「大丈夫だよ。昨日はシンの仕事が大きかったし。今はサキに代わってもらってる」 「例の作戦、今日からだろ?」  例の作戦というのは、昨日コルンから聞かされた、同盟の内部崩壊を狙う作戦のことだ。今日から準備する必要がある。 「もちろん。今日からだよ。そこでなんだけど、シンに盗聴器の役割を頼んでいいかな?1日かけてくれればいい」 「分かった。見つかっても逃げられるからな。俺は。あのバーブの大集団と他の集団の場所を突き止めてそこに仕掛ければいいんだろ。だいたいどれくらいだ?」 「そうだね。今のところ確認してるのは大きな派閥だと三つ。砲撃型では有名なセントってやつが仕切ってるAグループ、そしてバーブが仕切るBグループ、三つ目はリーダーの名前がわからないんだ。大きいと言ってもまだ10人ほどらしいんだけど」 「というかその情報はどこから得てるんだ?」  この状況でここまで把握しているコルンに驚いた。 「盗聴器を早速使ってみたんだ。多くのアーティーが集まりそうな中央広場に一つ仕掛けてみた。そしたら話しているのが聞こえてね」  本当に行動が早いな……やはり目に狂いはなかったか? 「とりあえず今日は位置把握と一緒に、この訓練のエリアの全体を測ってくる。恐らくだが、この訓練のエリアは相当広いぞ。今俺たちがいるところを第一地区とすると、あと二つはあるはずだ」 「そんなに広い?確かに昨日はシンが北のほうに行っただけだったからね。最初のスタート地点はかなり北寄りだったし」 「独断で動いていいのか?」 「それはもちろん。ただ、集団戦闘は避けてくれ。そして、SOSの場合は着信を二回かけてすぐに切ってほしい。お互いにね。シンは大丈夫だと思うけど。サキにもあとで伝えておくよ」  それじゃあ、勝手に動かせてもらうか。 「了解。じゃあ俺は、飯食べてすぐ行くよ」  アーティーはAIを埋め込んだロボット。だと思われがちだが、実はそうではない。実際は、人間なのだ。最新技術により、人間の皮膚とロボパーツを自在に変えることができる。なので、脚だけ加速装置、とか、腕だけ大砲。みたいなこともできるのだ。そして、燃料やエネルギーというのはあくまでAIの食事であって、人間なので普通の食事も必要なのだ。 「ご飯は既に頼んでおいたよ。そこにあるはず」  コルンが流石の手際で食事を用意してくれていたようだ 「予想はしてたけど栄養ドリンクとビスケットね。やっぱり味気ないな……」  この無人島で熱々のご飯が出るとは想像し難い。短い食事を終え、シンは洞穴を出ることにした。 「お、お疲れ。コルンがそろそろ行動開始だから飯食えってさ」  入り口付近で見張りをしているサキに会った。 「わかったわ。今日からね。いよいよ。お互い頑張りましょう」  なぜかサキは一向に目を合わせてくれない。 「おう。Hey,sari 飛行モード」 『脚パーツ を 変形 します』  数秒後、前方に飛び立った。ここでふと、東郷博士のことが頭を過った。そういえば東郷博士の部屋にあった写真の女の人は誰だったんだろうか。訓練が終わったら菊間博士に聞いてみよう。  ブーン  続いて、埋め込まれた端末が振動し、コルンからのメッセージが届いた。 『追加情報。バーブの同盟は今日で50人ほどになってるらしい。同盟でポイントがもらえるようになるのは加盟して3日後、つまり明日から。だから、明日になって洞窟を買われたら盗聴器作戦が無効になる。今日中に頼む!』  やれやれ、困ったな。今日中にと言われても。  ただ、独断で動けるなら問題はない。シンにとって、唯一怖かったのは、自分の実力が露見することだ。コルンとサキとは仲間だが、こんなにすぐ信用しろと言われても無理がある。そこで、シンはコルンの作戦に従いつつも、確実に勝てる計画を練っていた。わざわざなぜそんなことをするのか。それは、コルンの実力を測るためだった。コルンが優秀なら自分の素性を明かし、この訓練が終わった後も、仲間として動いてもらえる存在になる。逆に、見切りをつければ、それまでだ。サキの加入は完全に予想外だったが、いまいち防御に欠けるシンとコルンの二人にとっては有益な仲間と言える。  さてと……じゃあAグループから行くか。  Aグループのリーダーは砲撃型。砲撃型は、すごく開けたところを嫌う。敵の目につきやすいと、接近戦に持ち込まれ、不利になるからだ。しかし、狭いところや視界の悪い場所では、無類の強さを誇る。ホーミング弾が急に飛んできて逃げ道がなくなるなんてこともある。  よって、Aグループのアジトは恐らく島。そして、あまり大きくない集団なら、そこまで遠くはない。とすると……  シンは端末で地図を表示する。今シンがいるのは、仮に第一地区と名付けた、北東の小島。スタート地点は、中心からやや北寄りの大きめの島。そこから少し南に行くと、中央広場のある、巨大な島がある。見てはいないが、多分そこは街エリアなんだろう。そういえば、最北の島にも街エリアがあったな。  それらの情報から、Aグループのアジトを特定する。 「南の大きな島はバーブの同盟が取る確率が高い。そして残るのは……」  北北西の中くらいの島、もしくはそれより少し北の島の二つか。  よし、行ってみよう。  端末を胸にはめ直し、移動体勢に入ろうした時、  シュンッ!  シンの頭のすぐ後ろを何が飛んでいくのが聞こえた。 「なっ……!」  すぐさま上昇し、その正体を確認する。  シンの目に映ったのは、高校生くらいの少年だった。 「あらら、残念。まさか動くとは思わなかったな。まあ、死ぬのが早いか遅いかの違いだけど」 「誰だか知らんが、ずいぶん余裕だな。敵の力量を図ろうともせずに戦闘に持ち込むなんて。それほど自信があるって事なのか?」  ヘラヘラ笑いながら、その少年は言った。 「力量を測る?やだな。冗談はやめてよ。僕は勝てると確信した相手としか勝負しないよ。それで、お兄さんに勝てると判断した。それだけさ。時間ないからそろそろ死んでもらうね。お兄さん、スピード型でしょ。そのパーツ構成見ればだいたいわかるけど」  すると、パッと少年の姿が消えた。すぐさまシンは後ろに向き直り、大砲を構える。 「やるねえ。お兄さん。これで仕留められなかった事はあったけど、向き合う事になったのは初めてだよ」  シンと少年は互いに手のひらを向けあっている。 「お前が最初に撃った弾。遠くから弾を撃ってくるなんて、砲撃型しかいない。だが、お前のその装備はどう見ても砲撃型じゃない。ここから得られる結論は一つ。お前はスピード型で、俺がスピード型だと分かったのも、自分自身がそうであって、スピード装備に詳しいから。では、なぜいきなり仕留めずに弾を撃ったのか?それは、お前の使う特技がスピード型のなかでも最もレアな位置に分類される特技、【瞬間移動】だからだろ。それを使えば一瞬で移動できるが、移動距離が限られている。だから、俺を瞬間移動で仕留めようとしたら、俺の視界に入ると思った。違うか?」 「すごいねえ。大正解。まさかバレるとは思わなかったよ。もちろんスピード型と一口に言っても、あんたみたいに特技が、【音速斬り】のやつもいるし、俺みたいに【瞬間移動】の特技を持つ者もいる。けどね、お兄さん。スピード型の中で瞬間移動は最上級特技って知らないわけじゃないよね?リタイアする方が賢明じゃないかなあ」 「確かに。この状況では確実に撃ち負けてしまうだろな。でもそれは、俺がスピード型だったら。の話だろ?」 「あははは!何言ってるんだよ!その装備じゃどう見てもスピード型だよ。もういい。死んでくれ」  そう言って、少年は手からレーザーを連発してきた。  ドドドドドドン!!!  あたりに凄まじい音が響く。  一通り撃ち終わった少年は、次のアーティーを狩りに行こうと、腕パーツを元に戻した。 「ふう。めんどくさかった。次のエリアは……」 「もう終わりか?」 「え?」  少年は、凄まじく驚いた顔で振り向いた。そこには、腕パーツを盾に変形させ、無傷のシンが立っていた。 「なんだお前!?なぜ盾があるんだ!?お前はスピード型じゃ!?」 「だから言っただろ。スピード型だったらの話だと。悪いが俺はそんなヤワじゃない」 「くそ!こうなったら!」  その少年は、後ろに下がり、シンがいつもやるような、広範囲レーザーの構えに入った。 「そんなに溜めの時間が長い技を使っていいのか?」  なんと、少年の耳にそのシンの声が届いたのは、少年のすぐ後ろからだった。 「なにぃっ!?」  少年には冷や汗が流れていた。 「誰が瞬間移動が使えないと言った?お前は既に俺に特技を見せた。その時点で負けさ」 「まさかお前の本当の特技はっ……!」 「それ以上はいいさ。じゃあな」  ドンッ!  シンは、レーザーではなく、銃で少年のAIを貫通させた。  パリン!とAIの壊れる音がして、少年は地上に落ちていったが、すぐさまドローンが来て、どこかに運んで行った。 「ふう。破損個所はないな。じゃあ目的の島に向かうか」  そう言って、シンはその場を去った。 「なんなの……今のは……」  気配を消して付いてきていた、サキに気づかずに。
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