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「天に光あれ」  漆黒の闇のなか女の声が響き渡る。 闇が払われ、真っ白な世界の中心にいたのは女性。  金色の髪に黒檀のような褐色の肌。平たい顔に低い鼻。笹穂状の耳に紅と翠のオッドアイ。  いろいろな人種の特徴を混ぜ込んだような容貌である。 「天と地と」  女の声が響き渡ると、彼女の頭の上に蒼い空が生まれ彼女の足元に大地が生まれる。 「地に満ちよ」  大地が裂け、そこから炎で出来た巨大な蚯蚓が何匹も現れた。  蚯蚓は大地を焼きながら食い荒らす。  喰われて削れた大地が谷となり、《放|ひ》りだす糞が山となる。  蚯蚓による蹂躙は空が10度暗く10度明るくなるまで続いた。 「天に満ちよ」  蒼い空に巨大な氷の鳥が生まれ、大地にいる炎の蚯蚓に襲い掛かる。  氷の鳥と炎の蚯蚓の戦いは空が10度暗く10度明るくなるまで続く。  氷の鳥と炎の蚯蚓の全てが死に絶え、大地に出来た谷のいくつかは川となり、窪んだところは湖になっていた。 「命よ」  女が歩くとその足跡に草木が芽吹き、川で喉を潤すと魚が生まれた。  湖で水を浴びるとその湖は塩辛くなった。 彼女は空が10度暗く10度明るくなるまで遍く大地を歩んだ。  やがて空には鳥が大地には動物が生まれた。 「初めてにしては上出来」  彼女が最初に創った世界はこうして出来た。 チュウカナ大陸。  世にいる余多の神々の間では、『創造神の箱庭』とも『見習い神の卒業試験場』と呼ばれる世界。  まずこの世界。球体ではない。  大地は動かず、太陽も月も星もこの世界を中心に回っている。  そして、四方が透明な壁によって遮られている。  創造神の箱庭とは言い得て妙である。  住んでいる生物は《異世界|ファンタジー》である。  犬や馬がいる。地球では既に滅んだサーベルタイガーや幻獣であるドラゴンもいる。  人族と呼ばれるものだけでも、人、エルフ、ドワーフ、獣人、爬虫類人、悪魔、天使、巨人。  吸血鬼やリッチといった《不死者|アンデット》。  ゴブリンやオークといった定番の魔物たちも知性があり言語が扱える種族であれば人族として数えられる。  知性がある犬の獣人を《犬人|ワードック》、知性のない犬の獣人をコボルトと呼び区別することもある。  そして、魔法があるが化学は無い世界だった。  チュウカナ大陸の見た目は、地球でいう極東アジアが忠実に摸倣された地域である。  解り易く言うなら、日本まで描かれている中国の地図を想像してもらえればいい。  シミュレーションゲームが好きなら、三國志を題材にしたゲームの画面といえば解り易いだろう。  そして、ゲーム画面のように東西南北が透明な壁によって仕切られている。  透明なケースに入れられて再現された情景模型のような世界だ。  もっとも東は海、西は砂漠、北は氷土、南は堅牢な山脈。  過酷な自然の脅威によってその先へ行くことを阻んでいるので壁の存在はあまり知られてはいない。  チュウカナ大陸の歴史として、箱庭の住人が集落を作り、村となり、街を育て、国を興したのがいまから4000年ほど前。  やがて国と国が争い魔法が暴走し、大陸南部で栄えていた都市群が消滅。  瘴気が濃く滞留し、強力な魔物を産み出す魔の荒野と呼ばれる荒れ地が生まれた。  それから千年。天使族の王が治める渦という国が箱庭のなかで乱立する国々を統一した。  天使族の王は暦と色々な単位を定め、今に至るまで続く大陸歴と貨幣単位が生まれたのもこの時である。
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