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 結奈と出会ってから3日目の朝が来た。  気だるい体に力を入れ、ベットから体を起こす。眠たい目をこすりながらふと脇下を見るとそこには可愛らしい容姿をした俺の妹、水原 結奈がまるでお花畑にいるかのような幸せそうな表情を浮かべて眠っていた。 「おい、結奈」  結奈の肩をさすり、起こそうとする。不本意ではあるが、仕事もあるし話しておきたいこともある。夢の時間はここまでだ。   だがしかし、何度もさすってはみるが一向に起きる気配が見えない。そんなにお花畑から出たくないか!  それならと俺はベットからでて、カーテンの閉まっている窓へと向かう。今日は晴天。こちら側のカーテンを開ければ太陽の光が直接この部屋に差し込むのだ。そう、俺がこれからやることはただひとつ。 「こうしてやる!」  窓のカーテンを勢いよく開けると閃光弾のような強くまぶしい光が部屋に容赦なく差し込んだ。  そして部屋が慌ただしくなったのを感じとった結奈はうっすらと目を開ける。 「!」  目を開けた直後、直射日光が少女の瞳に飛び込み結奈は目を押さえる。 「あ~目が~」  そう言いながらベットの上で悶える結奈のさまは天空に浮かぶ城で有名な映画の中に出てくる悪役大佐の動きと重なって見えてクスッと笑った。    結奈が目覚めてから俺たちはふたりで朝食をとることにした。何気ない会話が続く中、俺はある話を切り出す。 「結奈、大事な話がある」  真剣な俺の一言に結奈は首をかしげる。 「なに?お兄ちゃん」  頭に疑問符を浮かべている結奈に俺は振り絞るように声を発する。 「今月、給料でないかもしれない」 「え?」  唐突な俺の発言に変わらず結奈はポカンとしている。  「でもお仕事しているんでしょ?なんでお金がもらえないの?」 「おかしい話だが、昨日仕事に遅れたからだ」  それを聞いた結奈は顔を曇らせる。 「もしかして……昨日私がお兄ちゃんを引き止めたから……」  自分のせいだと言うような口ぶりをする結奈に俺は断ち切るように否定する。 「それは違う!あれは俺がそうしたかったからそうしただけで、結奈は何も悪くない。本当に悪いのは俺とあの工場の社長なんだ。遅刻をすればこうなることぐらい前もあったから分かっていたのに……ごめん」 「けど、なんで遅刻しただけで給料がなくなるの?少なくなるくらいなら分かるけど」  やや声を強めて結奈が言った。 「おかしいだろ?あの社長は法律……ようはルールを無視して工場をやっているんだ」 「うん、おかしい。だからさ……」  そこで一度口ごもり、改めて話す。 「その工場で仕事するの、もうやめない?」  そんな提案を結奈がした。 「お前はそんなにやめて欲しいのか?」  昨日も結奈が話していたことだった。 「うん、やめて欲しい。だってお兄ちゃんには自分の夢をかなえて欲しいから」  その言葉に俺は溜息を一つこぼした。どうやら俺にまだ公務員になれと言いたいらしい。 「まだそんなこと言っているのか」 「しつこいって思うかもしれないけど私は何度でも言うよ。子供のときのお兄ちゃんは公務員になるんだって目をすっごくキラキラさせて言っていたの。それよりもすごい夢が出来たのなら分かるけど工場で働くことが夢なわけないよね?お兄ちゃんが勉強ができないなんて考えられない」  結奈の発言には言葉にできないようなしっかりとした芯があって俺が本当は勉強ができるということを信じて疑わないようだった。 「……じゃあお前は昨日の俺の言葉を嘘だって言いたいのか?」  声音を強めた俺の言葉に結奈は一瞬ひるむがこくりと頷いた。 「お兄ちゃんのことを疑いたくないけどお兄ちゃんが勉強ができないってことは考えられない。」 「そうか……」  霞むような静かな声でそう返した。そこでさらに結奈は押すように話す。 「生活は苦しくなるだろうけどいい機会だし、お金も切り詰めて頑張っていこう?」  確かにこのままの生活を続けて良いはずがない。金銭面ではもちろん、精神面にもよくない。けど…… 「だけど、簡単に辞められるとは思えない」 「どうして?」  何も知らないようで結奈は再び疑問符を浮かべる。それもそのはずだ。結奈はまだ幼い。ましてや10年前にはブラック企業って単語も一般化されていなかったのだから知らなくて当然だ。 「簡単に悪い会社だからって理由でホイホイ辞めれるんだったら悪い企業はさっさと潰れるだろうからブラック企業なんてものは最初から存在しなくなるはずなんだ」 「そ、そうなんだ……。でも、ルール破っているのはあっちなんだよね?おかしくない?」 「ああ、おかしい。……うん?」  俺の頭にあるアイデアが思いつく。 「どうしたの?」 「仕事、辞めれるかもしれない」  
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