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「馬鹿だろお前」  純の一言に、桃華はぐさっと傷ついた。 「高校生の恋愛に結婚なんて持ち込むか、普通。いや、ないわけじゃないだろうけどさ、それってお前が俺と拓真に告られて困った末に言い訳に使ってるようにしか思えないんだけど」  ぐさっ、ぐさっ、ぐさっ。  純のいちいち傷をさらに抉るような言葉の畳み掛けに、最初の勢いは何処へやら、桃華は完全に意気消沈していた。  ——そうだった、純はこういうやつだった。昔から桃華は純との口喧嘩には絶対勝てない、正論に正論の輪をかけてぶん殴ってくるようなやつなのだ、純は。 「そこに拓真いるよな? 替わってくれ」 「……はい」  桃華はスマホを拓真に押し付ける。困惑した拓真はスマホを受け取り、喋りはじめる。 「拓真っす。え、はい。桃ちゃん、スピーカーってどれ?」 「……右下」 「右下っと」  拓真は桃華のスマホを操り、スピーカー状態に設定した。おのれ純め、まだ言い足りないのか。 「あー、桃華もこれで聞こえるな。とりあえず拓真、桃華はまだやめとけ。大学入ってまだ諦められないなら、桃華の言うとおり結婚を前提にした付き合いでも何でもやればいい」 「はあ」 「何でやめとけになるのよ!」 「お前、今の状態で自分が結婚できると思ってるのか? だとしたら、相当頭の中お花畑だぞ」 「どういう意味よ」  「どうもこうも、家事はできないわ仕事持ってるわけでもないわ、ただ単に花嫁に憧れてるだけの妄想女と何が違うんだよ。それともあれか? 拓真に頼って生きていく、って意味で結婚を前提にした付き合いだって言ってるのか? お前、年下だぞ、相手は」  ぐさっ、どころか、ざしゅっ、だ。  それはもう、桃華のハートを日本刀で一刀両断した後、細切れにするレベルの言葉のきつさだった。  安易な桃華の考えは脆くも純の言葉で崩れ去り、桃華はそのままテーブルに突っ伏した。 「拓真、聞いてるか?」 「あ、はい」 「そういうわけだから、桃華の考えがまとまるまでもう少し待とう。馬鹿だからあいつ」  ——また馬鹿って言った。  確かに、純が区切った三学期まで、まだ四ヶ月弱はある。その間に言い訳、もといちゃんとしたお付き合いの理由と断る理由を考えろ、ということだ。  なぜ高校生の恋愛にそこまでの確固たる理由が必要なのだろうか。桃華はそう思いつつ、若干泣いた。 「そう言う純先輩は、桃ちゃんのどこが好きなんすか?」 「何でお前に教える必要があるんだよ」 「やっぱ、ちゃんと知っときたいじゃないすか。桃ちゃんだって知りたいよね?」 「……別に今は知りたくない」 「あれ!?」 「そういうことだ。じゃ、バイト途中だから切るぞ」  一方的に切られたスマホは、自動的に元の画面へと戻る。 「桃ちゃん……どんまい」  拓真の精一杯の慰めも、傷心中の桃華の耳には届いていなかった。  あれやこれやと騒いだお詫びに、コーヒーショップのクッキーを二人で買って、桃華と拓真は店を出た。  コーヒーショップの店主は、何やら複雑そうな表情をしていたが、帰り際「頑張れ」と声をかけてくれた。桃華に対してなのか、拓真に対してなのか、はたまた両方に対してなのかは分からないが、桃華の泣き腫らした顔を見て言ってくれた可能性が高いかもしれない。  ——今日は散々だ。  ぐしゃぐしゃに泣いた桃華は、拓真に背中をさすってもらいながら、自宅のアパートまで送ってもらった。まるで小学生の頃と逆転したような立場に、桃華はなおさら惨めさと切なさと——あと、拓真の優しさにちょっと打ちひしがれた。
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