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 それから翌日の朝になるまでの時間。人生で最も長く感じた時間かもしれない。シンは興奮で眠れなかった拠点として使ってきた洞穴には、Cグループのメンバーもいるので窮屈だ。   これで……最後か………  吐いた息は白い。もう12月なのだ。続々と仲間が起きてきた。そういえば、仲間ができたのなんて初めてだ。 「おはようシン。いよいよだね」  コルンの爽やかな声。 「ここまで来たら勝ってやりましょう。私達ならできるわよ」  サキの性格もだいぶ柔らかくなった。 「よろしく、シン。最後までついて行くつもりよ」  Cグループのリーダー、ラフィールだ。彼女の快いOKがなければ、今頃3人で戦うことになっていた。 「よし、みんな。今日はよろしく。と言っても俺は今日で終わらせるつもりだ。今の時刻は午前7時。2時間後の9時に戦闘解禁される。敵側がそれより早く奇襲をかけてくる可能性は、ない。敵はこの拠点の場所を知らないからな。必然的に、俺たちは南の島に、外から攻撃を仕掛ける必要がある。そこで、昨日言った作戦だ。今回は、コルンと一緒に考えた」 「じゃあ、ここからは僕が説明するよ。昨日も言ったけれど、もう一度聞いて欲しい。まず、13人を4,4,5の3つに分ける。シン、サキ、そして僕がそれぞれバラバラになるように。各隊のバランスも考えて、編成してる。サキの隊は前線に張ってもらって、シンの隊は中心で戦闘、僕、コルンの隊は上空での敵の処理と地上への援護射撃がメイン。バラバラじゃ勝てないから、広がりすぎないように。ある程度倒せてきたら、敵陣営に突撃する。シンプルな内容さ。バーブは、シンにトドメをさしてもらう。皆、これはコピーAIだからアーティーじゃなくなることもない。恐れは一番の敵だからね。頑張ろう」  コルン、あのスパイのことは俺とサキ以外には言わないのか。 「シン、皆に何か一言ないの?」  サキが俺の顔を覗き込んできた。 「そうだな……じゃあ一言だけ。ありがとう。他に言いたいことはないさ」 「まだだよシン。勝ってからだ。泣かせるのは」  コルンが言うなり、歓声が起こった。それが、特別訓練最後の平和な時間だった。   午前8時59分。シンは風の音に耳をすませる。怖いくらい静かだった。 「残り1分を切った。これより、三班に分かれてBグループの拠点の南の島を襲撃する。サキから行ってくれ」 「了解よ。なぎ倒してくるわ」  そして、全隊が出発した。最後に拠点を出たコルンは一度だけ振り返り、ずっと使ってきた洞穴に向かって「ありがとうございました」と呟いた。   飛行して数分後、シンはsariに尋ねる。「Hey,sari 南の島までの残り時間は?」 『あと、3分ほどで到着します』  いよいよか。見えてきたぞ……ん……?  霧でよく見えないが、所々に何か点のようなものが見える。  なんだあれ……?まさか……!? 「全員注意しろ!目の前から銃弾が来る!」  サキの隊の誰かがそう叫んだ。  もう攻撃が始まってる………!   やがて、霧がないエリアに出た。そこには、目を疑うような光景が広がっていた。目前に広がる無数のアーティー。奥にバーブとグレンの姿があるので、恐らく、全員出ているはずだ。  バーブは下品な声で笑った。 「お前は確か、先日うちの同盟に加入してきたやつだな。すぐに抜けたから何かおかしいと思ったが……そういうことだったのか。この状況を見て、まだ戦う意志があるなんて、状況判断力に欠けるバカだな」  そして、側近のグレン。 「いやはや、出力は高そうですがねぇ。正に宝の持ち腐れ。皆さん、さっさと仕留めますよ。かかりなさい!!」   その合図で一斉に総攻撃が開始された。そこは紛れもない戦場だった。  第一部隊は、サキ中心に防御に長けている。その隙を狙って、俺たちの部隊が攻撃を仕掛ける。 「サキ、コルン、左側から攻めるぞ!」 『了解!』  俺は、特技【双剣乱舞】を発動させる。両方の腕パーツが双剣となり、振り回すだけで敵を駆除できる。   カキン!!ガッ!!  激しい攻防に、火花が散る。 三体同時にかかってきたので、ちょうどチャンスだ。 「まとめて串刺しにしてやるよ」 「何だと?」  ザクッ……  シンの剣は、三体のアーティーのAIをピンポイントで貫いた。しかし、敵はどんどん集まってくる。  しかも、バーブとグレン、あと少しのアーティーは島の中に引っ込んでしまった。 「こうなったらしゃあないな。Hey,sari, 特技、【クロックストップ】発動!!!」  カチッ…カチッ……カッチッ…………チ…… 「あれ?敵の動きが止まった?!」  コルンの驚きの声が聞こえる。  この特技は、指定したアーティーの時間を、3秒間だけ停止することができる。ただし、連発はできない。 「一気に仕留めるぞ。【音速斬り】発動」  シンの脚パーツが、鋭利に変化していく。最もスピードの速い形状となり、腕の双剣で相手を斬っていく。 「おらぁぁぁ!」  グサッ!! 「4体が限界か」  時間停止が解け、4体のアーティーが落下していった。  他の仲間も、そこそこ倒せたようだ。  しかし、そこで事件は起こった。 「みんな!頭上にいるわよ!逃げて!!」  サキの叫び声だった。  ふと上を見上げると、大砲を充填して、今にも解き放ちそうな状態のアーティーがいた。しかも、あの状態は……変身状態……!  これはまずい。 大規模な戦闘で、範囲攻撃ほど効果のあるものはない。 「くそっ……クロックストップの直後で一瞬の硬直が……間に……合わな……」  直撃なんてしたら…………動け……!俺の体!!!くっ…………  ガチャン!!!!!  機械的な音が耳元でした。何かと思って振り向くと、それはなんと、変身したコルンだった。 「コルン!?その姿は……?」  黄色い角のようなものが生えて、全身は緑で統一されている。背中に積まれた銃たちが増えている。  周りには強い電流が溢れ出ていた。 「僕もこんなところで使いたくはなかったさ。だけど、何があってもシンとサキだけは守る。そう決めた!この大砲だけは止めてみせる!」   コルンは、飛んでくる大砲の弾全てを倍以上の弾とミサイルで迎え撃った。 銃弾と大砲が空中で衝突し合って、物凄い爆発が起きた。 ただ、防げたのはシンのところに飛んできている大砲だけで精一杯だったので、他の仲間はどうかは分からない。 爆発の黒煙で、敵が視界を奪われている隙に、シンは持ち前のスピードで敵の背後に回った。振り向く前に、腕を変形させて銃にして、弾を撃ち込む。 呆気なく落下していった。 「他の仲間は大丈夫か?!」  あれ?明らかに少なくなってるぞ……  1,2,3………  今までの攻撃で、残りの仲間は、シンとコルンとサキ、それとCグループのメンバー5人だけになっていた。 「かなりやられているわ!一旦下がりましょうシン」 「そうしたいのは山々だが、この数を巻けるかどうかは分からない」 「大丈夫だよシン。任せてほしい。変身した僕の真骨頂を」   アーティーには「変身」という概念がある。 最後の切り札でもあるが、その発動タイミングは全くわからない。完全にAIの気まぐれで発動する。 どれだけ自分のAIと繋がっているかが重要だ。 そして、変身したアーティーは1時間その効果が持続し、全ステータス大幅UP、威力強化などの恩恵を受けられ、さらにそのとき限定の特技も発動できる。 「ここからが本当の僕だ。見せてあげるよ。変身特技、【不死鳥】!!!」  コルンの目が赤く光り、彼の周囲の電流がビリビリと震えている。コルンの周りに、次々と何かが出現する。 しばらくして、それが、銃を内蔵した小型の鳥型ロボだとわかった。   その数は、10,100,1000…と増えていった。 「sari,何匹いるかわかるか?」 『およそ10000 体 と推定されます 匹と数えるのは 正しく ありません。正しくは 体 です』  実際に鳥の群れを見たことがある人ならわかるだろうが、あの集団行動の群れ方は鳥肌が立つ。 それくらいの数の鳥型ロボが、残っている敵のアーティーを飲み込んで行き、ついには何もなくなっていた。 30体以上のアーティーを、コルンが一瞬で倒してしまった。鳥型ロボは、役目を終えて消滅した。 「すごい……コルンにそんな力があったなんて……」  サキが感嘆の声を漏らす。 「同感だ。だが、ここでコルンが切り札を使ったから、バーブとの戦いではもう使えない。サキも俺も、残りの5人も、変身が発動するかどうかは分からない」 「一層気を引き締めて行こう。切り札の特技は使ってしまったけど、変身の効果は持続してるし、今のうちに行こう。島の中には、バーブとグレン、あと3体のアーティーが居るはずだ。あのテンドもいる」  とコルンは落ち着いて説明し、 「行こう。決着はもうすぐだ」  と決心していた。 「……そうだな」  sariには、早打ちするシンの心臓の音がよく聞こえた。
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