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 ——純なんか大嫌いだ。  桃華は一週間、純とすれ違っても言葉を交わさず、何とかやり過ごした。  告白なんてなかった、そう思いたいくらい深く傷つけられた——自業自得ではあるが。桃華としては、他にいい案が浮かばなかったのだから、あれはしょうがなかったのだ。  どうしてああも純は乙女心を平気で踏みにじるようなことをするのだろうか。小さい頃からそうだ、桃華の人生の転機には必ずと言っていいほど純が絡み、桃華が傷つく。  これはもう、告白は断ったほうがいいのではないだろうか。  しかしだ、よく考えたら、なぜ純は桃華のことが好きなのだろうか。  桃華は純が大嫌いである。一方で、告白をするくらいなのだから、おそらく純は桃華のことが好きである。この温度差は一体どこから来ているのか。というか、純の行動原理が分からなさすぎるのだ。  確かめたい気持ちもあるが、純のことが大嫌いモードの桃華は、純と喋りたくなかった。  では誰かに頼もうか? ——いや、それでは意味がない。あの強情な純のことだ、きっと本心は喋らないだろう。  桃華には、状況が好転する道筋がまったく分からなかった。  なので、大樹に聞くことにした。相談事といえば大樹、大樹といえば相談事である。  受験に向けて勉強中とはいえ、桃華は昼休み、何とか大樹と放課後に小町へ行く約束を取り付けた。桃華が大樹の教室でほぼ一方的に、強引に切り出した話を一度も噛まずにひたすら喋りとおして、締めに「じゃあ放課後、小町で!」と言ってそそくさと去っていっただけである。桃華もやればできるのである。  教室に戻る途中、何か言いたげな純とすれ違ったが、桃華は足早にその場を離れた。憎々しいことに、純は女子に囲まれていた。あんなののどこがいいのやらだ。  そう、純はとにかくモテる。女子に優しい。桃華には優しくない。なのになぜ他の女子の告白を断ってまで、桃華に告白しようだなどとトチ狂ったことを考えるのか。アレか? 自分のものにならない女を手に入れたいタイプか? そう勘ぐってしまう。きっとそんなことを考える男は、ゲットした魚に餌をやらないタイプだ。純がそんな男でないことを心から祈るばかりだ。  その後、五限、六限、七限とぼーっと過ごした桃華は、もはや教師にも呆れられているのか、不思議なことに一度も注意を受けることはなかった。ただ、ぼーっとしていても、来週小テストがあることを聞き逃さなかったし、教科書の小テストの範囲もしっかり耳に入っていた。我ながら、ちょっとしっかりしすぎているかもしれない、と桃華は逆に不気味だった。  そして運命の放課後。  大樹は先に校門前にいた。何だかんだ、後輩思いの先輩である。 「せんぱーいぃ!」  桃華は喜びのあまり走って——転けた。  猫の子よろしく首根っこを掴まれて大樹に助け起こされるまで、桃華は涙を堪えていた。 「おいおい、どうしたんだよ。痛かったのか? 保健室行くか?」 「違いますー! 小町行きましょー!」 「お、おう、ならいいけどよ」  半ば戸惑う大樹とともに、桃華は小町への道のりを急いだ。
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