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ナーラ一族に従わざる者には、永遠とも思える苦しみを── ナクラ─最も美しい世界。彼の地でナーラ一族に永遠の忠誠を誓いし者には、神の祝福を── 城は燃えていた。反逆者への咎めではない。主人からの理不尽なものだった。「ただの有力貴族」は一夜にして滅ぼされた。それこそが主人の力を示すものだった。当主、その家族、使用人、抱えられていた獣人、奴隷までもが、全ての生き物が皆殺しにされた──はずだった。燃え盛る焔、崩れる煉瓦作りの壁、遠くから聞こえてくる低劣な嗤い声。たった一人の気まぐれな感情が、本来あるはずの無かった惨状を生み出した。本来生まれるはずの無かった焼け野原が出来た。本来必要の無かった制裁は、数多くの命を奪った。何故。この言葉が数多くの「ヒト」だったものの最期の言葉となった。自分たちが殺される理由も何も知らず、無数の命が一晩で消えていった。 一面の焼け野原があった。何も動かぬ。何も聞こえぬ。城の周りにあった森さえも燃やされ、動物も鳥も居ない、と思われた。 瓦礫の山の一部が崩された。それがそこに居るたった一つの生命体であった。それに名など無い。何も知らない、それはただ生きるために知識など無い頭を必死に働かせていた。 「ハァ…………ハァ……み、水が、欲しい…………」 それは確かに生きていた。あの惨禍の中を生き延びたのは奇跡と言って遜色無いだろう。しかし、それはそんなことなど知らなかった。 「ハァ………………生きて……やる…………!絶対、に…………」 それは昨晩死んだ者と同様に、何故自分がこのような惨劇に遇わねばならなかったのか知らなかった。それは煉瓦などの耐熱性のある瓦礫の山で出来た空間に「たまたま閉じ込められた」だけだった。それが生き延びたのは、幾重にも偶然が重なったおかげだった。それはその事を知らなかった。自分が助かったことが幸運だということだけは本能で理解していたが。奴隷として生きてきたそれには、何故助かったのか、その理由はどうでもいいことだった。考える思考など無かったのである。 「絶対、に…………!」 それは、ただ「生き延びる」ことしか考えていなかった。 ナーラ一族……エンダという世界を束ねる一族。エンダの全域を知らずにいるが、エンダの全ては彼らの物だと主張している。彼らに歯向かうことは死を意味すると恐れられているが、ナーラ一族に心酔している者は少ない。 ナクラ……エンダに初めて出来た都市。エンダの中心地であり、ナーラ一族はナクラを初めて支配下に置いた一族である。「最も美しい世界」、「女神に愛された都市」と名高い。貴族等が集まる地。
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