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「箱」を開けると、煙ではなく魔力が飛び出した。とめどなく溢れる魔力は全身を駆け巡り、皮膚から体外へ放出される。それが一ヶ所じゃなく複数点だから、身体は悲鳴を上げた。ピッタリとのりでくっついた封を開けられる封筒のような―――身体から無理矢理引き剥がされるような感覚に陥った。しかし、尋常じゃない痛みでも、意識だけは失わなかった。  吐血すると、真っ赤な血の溜まりが冷たいコンクリートの床に出来た。ついに身体が耐えきれなくなり、血溜まりに手をつく。その腕は震えていた。違う。全身が震えていた。痛みのせいか、魔力が抜けてるせいか―――分かったとしても、どうにも出来なかった。  ――――――轟音。次の瞬間には、吹き荒れる砂煙で視界が覆われていた。衝撃波のせいか、魔力は吹き飛び、体内にほとんど残っていなかった。  ガラガラと何かが崩れるような音がし、ドスンと地響きが鳴った。何かが連続的に落ちている。視界が遮られていて確認が出来なかった。 「これは酷いですね」 「ひゃー! 喧嘩かァ? 楽しそうだなァ!」  上空から二つの男声が降ってきた。成人男性のシルエットだけが煙の中に確認出来る。早く早くと待っていると、痛みと共に砂煙も収まっていった。  突き破られた壁から覗ける外の世界―――真ん丸の月が昇る夜空をバックに、銀髪と金髪の男が並んで宙に浮いていた。銀髪の方は背中から白い羽を、金髪の方は黒い羽を生やしている。 「しかも、貴様のような者とセットで喚び出されるとは……」 「いいじゃねェか! 仲良くやろうぜ?」  銀髪男が嫌そうな顔をすると、金髪男は笑って彼と肩を組もうとする。しかし銀髪男はその腕から逃げ、金髪男を睨みつけた。金髪男がそれを気にする様子はない。 「それよか、オレ達の主さんってあのチビだよなァ? うわっ、ボロボロじゃねェかよ」 「どうやら何か事情がありそうだな」 「オレ達を喚べる奴って、大体ワケアリだろ」  四つの目玉が見下ろしてくる。彼らには見覚えがあった。彼ら自身を知っているのではない。彼らと同じ「種族」であろう二人を、家族が各々従えていたのだ。片方は白い羽を生やし、もう片方は黒い羽を生やす―――まさに、今そこにいる二人のような種族だ。 「初めまして、主様。私は天使です」 「おーっす。オレは悪魔だ」 「我々はあなたに召喚されました。あなたが我々に命令し、我々がそれを受理したその瞬間、我々はあなたのしもべとなります」 「アンタ面白そうだし、オレはいいぜ。ついてってやるよ」  銀髪の天使はかしこまって、金髪の悪魔は面白がって言った。やはり想像していた二人だった。  立ち上がり、辺りを見回す。地下室は召喚の衝撃によって倒壊していた。だが、それがよかった。天使と悪魔を見上げ、拳を握る。 「――――――今すぐ僕を自由にさせろ!」  叫び声は、夜に響き渡った。真顔天使と微笑悪魔は頭を軽く下げ、同時に言い放つ。 「かしこまりました。我が主よ」  そして僕は、自由を手に入れた。 「箱」は鎖を取ったまま、隅に置いておいた。
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