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「海斗、銃の扱い方教えてくれないか?」  突然の発言に、白夜達は皆振り向いた。発言主の槍耶は真っ直ぐに海斗を見ている。廊下を歩く歩みは止めず、槍耶は続けた。 「俺遠距離が滅法弱いから……。弓でも良かったけど、せっかく海斗が銃使えるんだし……」 「別にいいけど」 「やった! サンキュー!」  紫苑が突き当たりのドアを引き、白夜達はトレーニングルームに入った。海斗と槍耶は、迷わず射撃場へと向かう。雷が二人の背中を見送りながら呟いた。 「遠距離攻撃かあ。うちも何かやろうかなあ」 「雷も?」 「うん。魔法で出来るっちゃあ出来るけど………あっそうだ!」  雷がくるりと振り向き、メルの手を取った。 「槍耶が銃ならうちは弓でいこう! メル! 教えて!」 「かしこまりました」 「よぉーし! 早速練習だー!」  雷がピョンピョン跳ねながら射撃場へ行く。メルはスタスタとそれについていった。トレーニングルームには、白夜と紫苑だけが残る。紫苑は困惑したように眺めた。 「あんな軽いノリでいいのか……?」 「まあいいんじゃね? 紫苑はやらないの?」 「いや……俺は魔法をもっと磨かないと……」 「そうか」 「白夜、そろそろ魔法使えそうか?」 「うーん……もうちょいかも」 「そっか……じゃあ槍耶達でも見に行くかなー」  そう言って、紫苑も射撃場へ行ってしまう。トレーニングルームに静寂が広がる。白夜は壁際に向かい、そこに寄りかかった。虚空を見つめ、昨日のことを思い出す。 「蘭李と会ったの? 小四だから………三年前かな?」 「ならばその前に何かあったかは聞いておるか?」 「その前……? いや別に……」  白夜が答えると、蜜柑は「うう……」と唸った。胡座をかき、くるくると体が回っている。珍しく真剣に悩むその姿に、白夜は不思議そうに彼女を見た。  蜜柑達が白夜のところに訪れてきたのは、彼女が眠ろうと床についた夜……蘭李の護衛任務の次の夜だった。  今までもたまに夜に来たことはあったが、大体蜜柑と睡蓮が好き放題暴れて帰っていく。無視してもハエみたいに付きまとわれるから、白夜にもどうにもならない。そろそろ何か策を考えなければいけないと彼女は密かに思っていた。 「なんで? 何かあったの?」 「いや、たぶんこの人の思い違いだから気にすんな」 「思い違いかどうかは分からぬではないか!」 「だからってこいつに聞いても解決しないだろ」 「ぐぬぬ………」  秋桜に言われ、再び唸る蜜柑。しかし結局それだけ聞いて、三人は去っていってしまった。一人取り残される白夜。特に詳細も言われないままの彼女にとっては、少し歯がゆい。  なので翌日の今日、もう一度三人に訊こうとしたのだが、なんと蘭李がインフルエンザで学校を欠席したのだった。当然、彼女を守る存在の三人も来るはずもなく。しかもインフルエンザということは、実質一週間程は休むということだ。一週間もこのわだかまりに悩まされるのかと思うと、彼女は気が重かった。 「何なんだろう……すげぇ気になる……」 「あれ? 白夜だけ?」 「ああ……健治」  健治がトレーニングルームに入ってきた。辺りを見回して、他に誰もいないのを尋ねてくる。白夜はざっと説明した。 「へぇ、遠距離ねえ。で、白夜はやらないのかい?」 「うん……まあやりたいんだけど……」 「ん?」  白夜は健治をじっと見た。彼女は昨日のことを彼に話そうか迷っていた。雷達には話していない。彼女自身も何が何だかよく分からなかったからだ。  白夜はふいっと顔を逸らした。 「……なんでもない」 「そう。ところで蘭李は?」 「インフルで休み」 「うわ……君達の間で流行らないでよね」 「最善は尽くす。ところで健治ってさ、ずっと思ってたんだけど」  健治が白夜の目を見る。栗色の瞳は、紫色の真っ直ぐした視線を向ける白夜を映していた。 「何か武器って使えるの?」 「銃とナイフだけ、使えることには使えるよ。護身術としてね」 「へぇ………」 「なんで? 俺に習いたいと思った?」 「いや、それはないけど」 「それはないのか……」  残念そうに肩を落とす健治。ちょうどその時、射撃場から紫苑が戻ってきた。彼は二人を見つけると、興奮気味にあちらであったことを話し始める。あらかた話し終えたその後、白夜は紫苑の魔法克服のため、彼の練習に付き合った。  治ったら訊いてみればいいだろ。気になるけどしょうがない―――彼女はそう自分に言い聞かせ、特訓に集中したのだった。
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