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 木ばかりが生い茂った道を抜けると、小さな広場が広がっていた。そこから町を一望することが出来る。  恐らくここは、山の頂上だった。なんで突然山にいるのかは分からない。けど、六支柱の仕業なんだろうっていうのは分かる。  うちらをバラバラにして、確実に双子を殺すために………。 「険しいお顔をなされてどうしましたか? 雷様?」  背後からした声に、急いで振り向いた。山の中から、ゆっくりと歩いてくる男。黒いスーツに、黒いハットを被っている。その姿に見覚えがあった。  こいつは、六支柱のリーダー………。 「師走《卯申|ぼうしん》……!」 『卯申』は金茶の目を光らせ、ニヤリと笑った。  師走卯申。幻術魔法の使い手で、六支柱のリーダー。お父さんの命令に絶対で、反抗する者に容赦ない。何回か会ったことがあるけど、掴み所の無い奴で、あまり近寄りたくなかった。 「そう睨まないでください。私は貴女と取引に来たのですから」  卯申はくすりと笑い、指をパチンと鳴らした。すると、彼の背後から男が一人現れる。真っ黒な髪のその人は、眠る蘭李を抱えていた。 「蘭李っ!」  蘭李がどさりと地面に落とされる。手足には鎖が繋がれていた。コノハも取り上げられている。うちは卯申を睨んだ。 「何をする気……⁈」 「それは貴女次第ですよ、雷様」 「うち次第……?」 「ええ。貴女がこちら側に来ると言うのでしたら、彼女には……いいえ、彼女だけでなく、その他のご友人にも我々は手出しを致しません。いかがですか?」  うちが………お父さんの側につく? そんなの絶対嫌だ。絶対につきたくない。死んでも嫌。死ぬ方がまだマシとも思える。 「そんな取引やんないよ!」 「雷様……貴女は何も分かっておりませんね。取引に応じなかったら、貴女方の負けは確定なのですよ?」 「え………?」  卯申はやれやれとため息をつく。金茶の瞳を光らせ、こっちを睨んできた。 「貴女も分かっているでしょう? 貴女方では、我々には勝てないと」  思わず呼吸が止まった。唇を噛み締め、拳を強く握る。図星を突かれて、何も言い返せなかった。  助けたい―――その一心で来たけれど、実力が追い付いてないのは分かっていた。うちも、みんなも。蘭李や蒼祁に「必要ない」と言われても、来なきゃいけないと思った。少しでも、何かの力になれたらって思って。  でも、いざ六支柱と対面したら………戦わなくても格上だと分かった。卯申とは会ったことがあるから余計にそう思ったのかもしれないけど、雰囲気が他とは全然違う。足がすくんでしまう。  怖い? 恐れてる? いや、それは違うかも。うちは、お父さんの周りの雰囲気が嫌いだからかも。お父さんは、お父さんの信じる正義しか認めないから。それに仇なす者は、誰であろうと許さないから。たとえ、実の娘でも。 「このまま神空蒼祁と神空朱兎が死ねば、貴女方も謀反者として殺される。それなら今のうちに許しを貰って、生き長らえた方がよろしいかと思いますよ?」  たしかにそうだ。きっと双子が殺されれば、うちだけじゃなく、みんなも殺される。散々かき乱してきたんだ。特に蘭李と白夜には酷いことをされるかもしれない。  唐突に、脳裏に浮かんだ光景。みんなが血を流して倒れている。とても見ていられるものじゃなかった。  嫌。みんなのそんな姿見たくない。それなら……それならやっぱり………。 「…………本当に?」  しばらくの間の後、うちは俯いていた顔を上げた。卯申を睨み付けながら、言葉を絞り出す。 「本当にみんなに手を出さない?」 「ええ。貴女が命令通りに動いてくれるのなら」  卯申は終始ニヤリと笑っている。余裕そうな態度に腹が立つ。でもこれが現実なんだ。あっちの方が優位で、こっちはそれに従うしかない。  ごめん……みんな。もうみんなとは遊べないや。ごめん……双子。結局守れなかった。  ごめんなさい。ごめんなさい。うちの力じゃ、どうにも――――――。 「それが本当の目的か?」  突然響いた声に、うちも卯申達も目を見開いた。声の方を見てみると、木々の中から蒼祁が現れた。蒼祁は朱兎を肩に担いでいる。蒼祁の青い瞳はうちを見て、そして卯申達を見た。卯申は鋭い視線を蒼祁に向ける。 「神空蒼祁……!」 「実の娘を味方に引き込む。端から俺を殺すつもりはない」  蒼祁が朱兎を地面に降ろす。朱兎は寝息を立てていた。  最初から蒼祁を殺すつもりはない……? もし本当にそうなら………! ああ……でもダメだ。蘭李は卯申に捕まってる。結局うちは従うしか………。 「あっ―――蒼祁! 蘭李を助けてよ!」 「あ?」  思わず叫んでしまった。守らなきゃいけないはずのターゲットに、助けてくれと。  でももうそれしかない。お父さん達に双子に勝つ術が無いのなら、蒼祁が卯申に勝つ可能性は十分にある。いや、十分すぎるかも。とにかく、この状況を打破出来る。  だからお願い……! 「断る」  ――――――…………えっ。 「えええええええええ⁈ なんで⁈」 「それはこっちの台詞だ。なんで助けなきゃいけないんだよ。守るって言ったのはお前らだろ?」 「うっ………」  たしかにそうなんだけど……! そんなこと分かってるけど……! でももうそんなことを言ってる場合じゃ……! 「……盛り上がっているところ悪いのですが、本当の目的は変わらず、神空蒼祁と朱兎を殺すことですよ?」  卯申が蒼祁を睨む。蒼祁も睨み返した。卯申の背後の男は、相変わらず無機質な真っ白い目で眺めている。  なんだ……やっぱり殺す気で来たのか……どうにかなると思ったのに……。  ちらりと、卯申がうちを見た。 「雷様、そこで寝ている神空朱兎を殺してください」  ―――――――――………え? 「出来ますよね?」  ニヤリと笑う卯申が憎い。そんな命令になんか従いたくない。だけどもし従わなかったら、蘭李が殺される。  こんな究極な選択……決められるわけない……! 「――――――――――ッ⁈」  突然、お腹に強い衝撃が与えられた。急速に意識が闇の中へと誘われる中、目の前に、蒼祁の姿が、見えた、気が、し、た―――――――――。
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