フォントをダウンロード中
ページの左右でマウスを左クリックします。
または、 キーボードの左右の矢印キーを入力します。
ページ上で指先を左右になぞると、 前/次ページへ移動します。
メニューはページをタッチすると現れます。
× ヘルプを閉じる
とある世界に、美しい茶、金髪の髪の毛を持った国民のみが住む『帝国』と呼ばれる国があった。 そこではみな、平和に過ごしていた。 これは美しい国でのただ一つの汚点、黒髪で生まれてしまった王女の物語である。 彼女の生き様を、僕は書いていこうと思う。 え?僕はなにかって?ただの騎士だよ。 ーーカラカラカラ…午前7:00。城の廊下でワゴンを1人のメイドが押している。 「姫様はもう起きてらっしゃるかしら。」 部屋の扉を開けると、ベッド上に座っている少女がいた。 「あ、おはようカレン。」 「ええ、おはようございます姫様。どうしたのですか?ボーっとなさっていますね?」 この少女こそが、黒髪の姫…リオン・フィールである。 「夢を見たの。森の中に誰かいるの。私は声をかけようとしたんたけど…」 平凡な会話をしながら、リオンは支度を済ませて行く。今日のドレスは新しい。 「このドレス、王妃様がドラゴンの村の視察の中でお選びになって送ってくださったのですよ。」 カレンがそう言うと、リオンは目を輝かせて笑った。 「じゃあはやく帰ってきた母様に見せなくちゃ!」 タタタタっ、リオンは軽いステップで廊下を走る。目指すは食堂。作法なんか知らない。 どうせ彼女はカツラを被らなければ城の外には出れないのだから。 「母様!お戻りになられたのですね!ポーシャ姉様もおかえりなさい!」 王妃のアオイナ・Q・フィールに抱きつくリオン。 食事中よ、と姉のポーシャ・フィールは注意するが、少し嬉しそう。 しばらくして、3人とも食べ終わるとアオイナはポーシャを連れて行ってしまった。 王、つまり父に村の視察の報告があるとかなんとか。 リオンは基本的に暇で自由だ。 長女ではない上に、忌まわしき黒髪。 やることと言えば、剣の稽古か勉強。 勉強はつまらないから、1日のほとんどを稽古につぎ込んでいるのだ。 15歳にして、城内で負けることはないだろう、という腕前にまでなっていた。 リオンが稽古場として使っている中庭に向かっていると、辺りを右往左往している少年がいる。 「どうかしましたか?迷子さん?」 「あ、えっと、その、王様に新入りだということをお伝えした帰りなのですが、寮までの行き方がわからなくて…」 見れば、少年は輝かんばかりの金髪だが、服は少しボロい。 細長い剣を腰に下げているから、兵士…いやリオンと歳は近そうだから騎士志望なのだろう。 「軍の寮はあっちをこう行って曲がってこうよ!」 近くの窓から身を乗り出して指で指し示す。 ありがとうございます、と言いながら少年は走っていってしまった。 名前を聞こうと思ったのに…。 リオンは少し残念そうにしながら中庭へ向かった。 「ああ、あの子なら守れるかもしれないわね…」 リオンと少し離れた所にいて、やり取りを見ていた誰かが呟いた。 午後3:00。 お昼の後のお腹が落ち着いた頃の時間。 リオンは兵士たちの訓練場にいた。 たまに気が向くとこうして兵士や騎士たちと共に剣の腕を磨くのだ。とは言っても負けたことはないが。 「さあ次!かかってきなさい!私を負かすのは誰なのかしら!」 見れば次の相手はさっき出会った少年だった。 挨拶を交わして剣を構える。 リオンは片手剣を左右の手で1本ずつ持ちながら、少年はフランベルシェと呼ばれる長剣を逆手で構える。 「ファイッ!!」 教官の合図と共に両者が飛び出して… 負けた。初めてリオンは負けたのだ。新入りって彼は言っていたはずなのに負けた。涙まで滲んできてしまった。くそぉ。 いつまでも土の上で大の字になっているわけにも行かないので、教官の手を借りながら起き上がる。 「ねえ私に勝ったあなた。名前は?」 ここぞとばかりに嫌味ったらしく聞いてみる。 「パロン・ヴェルデンド、16歳です。 これからもよろしくお願いしますね、リオン姫。」 と言いながらリオンの手の甲に軽くキスをする。 突然、見ていた周りがざわついた。 姫、という立場であるリオンに敬意を表すのは当然なのだが彼女は黒髪。 誰も彼女に触れようとはしないし、城の外に彼女の事を言ってはいけないのでそもそも関わらないようにしているのだ。 だから兵士達にとって、またリオンにとってもパロンの行動は驚くべきことだった。 パロンの唇の感触は、しばらく健気な少女から消えてはくれなかったらしい。 午後7:00。 パロンは寮に帰れずワゴンを押していた。 ワゴンに乗っているのは2人分のハンバーグ。 「まったくあのカレンとかいうメイド、たまたま通りかかった僕に姫様の所に持ってって一緒に食ってこいとか酷いよ…」 いや本当は嬉しいのだ。あの可愛らしい姫と一緒にいられるのは嬉しい。 だが自分は今は兵士。 騎士志望だが、実力不足なのだ。 姫という立場の人とそんな簡単に一緒に居ていいのか…と少し疑問に感じていたのだ。 コンコンっ、失礼します。と言い返事を待つ。 返答がない。 少し開けて部屋を覗くと、シャワーの音が聞こえた。 直後、ぎゃぁぁっ!!という悲鳴が! パロンは本能のままに 「大丈夫ですか?!」 とシャワールームのカーテンを開ける。 「へ?」 そこには尻餅をついたリオンの姿があった。 タオルを取り損ねたのだろう。床に落ちてしまっている。 そう、リオンは裸である。 パロンはわけも分からず叫びながらカーテンを閉め、わけも分からずハンバーグを食べた。 「(は、初めて見たぞ…その…いろいろと!あんなに、美しいものなのか…)」 紅茶をがぶ飲みし終わった頃、リオンがシャワールームから出てきた。 「ごめんなさい!」 先手必勝だ。パロンは綺麗に背筋を90°曲げて謝った。 「ああ、いいのよ怒ってないわ。私が叫んでしまったから来てくれたんでしょう?あとカレンの代わりってことよね?ハンバーグ私の分よね?」 いつもより饒舌気味になってると自覚しながらも大好きなハンバーグを目の前にして興奮せざるを得ない。 裸? リオンにとってそんなものどうだっていいのだ。 どうせ誰も見ないから。 午後10:00。 夕飯の後、ずっとパロンとおしゃべりをしてしまっていた。 寮の門限はもうすぐだし、リオンも寝なくてはいけない。 「それじゃあリオン様、また今度。おやすみなさい。」 お互いに手を振りながら一方は部屋の外に出て、もう一方はベッドに潜る。 「ふふ、ハンバーグデートかぁ…」 リオンは1人、つぶやく。 明日も平和でありますように。 パロンと街にハンバーグを食べに行けますようにと。 城の屋上に誰かがいる。 1人で何か言っている。 いや、よく見ればガラスの鳥と話している。 「え?ええ分かってるわよ。次の満月の時でしょう?今夜は三日月だから、もうすぐね。」
1
15
シリーズ一覧
感想を送る
作品を紹介
ブックマーク
しおりを挟む
作品情報
使い方
登録が完了しました!
確認事項
戻る
実行