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 彼は、僕にこんな感じで話を切り出した。 「彼女は僕を好きでいてくれるし、僕も彼女を愛している」  彼には家庭がある。  その事実を、彼女には告げているという。裏切りが成立してからの恋。  これほど残酷な結末を二人以外に強いる関係ははない。僕は、不倫を否定するつもりはない。僕には出来ない、ただそれだけだ。  僕の持っている”物”で、約束できることは、  ”裏切らないこと”  話すことに”嘘”を、入れないこと。聞かれていない事や聞かれたくないことは、そう答える。それが唯一、僕が、恋人や、好きな人たちに言っていて実行していること。だから、僕には不倫は出来ないと思っている。  彼は、奥さんとの仲が悪いという。だから、自分に好意を寄せてくれる女性に引かれた。それが好意に変わったのだと言う。もう、彼女なしでは居られないし、凄く大切に思っている。  僕は、彼に問いただす。 「奥さんと別れないの?」  彼は言う 「別れようとは思っている。でも、それは今じゃぁない。もう少したってからだ」 「なんで?もう、奥さんに気持ちがないんでしょ?それに、リスクを考えている?」 「リスク?」 「そう、奥さんから見たら浮気だよ。お互いに気持ちが無いのなら、弱みは君に有ることになるんだよ」 「わかっているよ。だから、時期を見て、別れようと思っている」 「ふ~ん。それは”別れない”と言っているように聞こえるよ」 「なんで? 別れようとも思っているし、彼女の事は真剣に愛して居るんだよ」 「奥さんと結婚した時も同じ気持ちだったんでしょ?」 「そうだけど、気持ちは変わる物だからね」  ”気持ちは変わる”この言葉は、彼が口にしてはいけない台詞 「君が、今言った台詞を、彼女に言える?」 「言えるよ」 「言えるのなら、さっさと離婚の話をして、奥さんを傷つけないようにしないと、本当にリスクを追う事になるよ」 「だから、何がリスクなんだ?」 「彼女に、リスクが覆い被さるって事だよ。いいかい。君と奥さんは、既に心が冷め切っていて、”夫婦生活が成り立っていない”と、言っているけど、そんな事は、浮気の理由にはならない。奥さんが、浮気の実態を知った時に、どっちにしろ離婚する事になる。君は流されてラッキーくらいに思っているのかもしれない。それに、奥さんが、彼女を相手取って慰謝料の請求をする可能性もある。実際、過去に事例もあるし、この場合不倫だと解って付き合っていた、彼女側に不利益な判断が下される。全部解っているのか?」 「あぁそうだ。でも、妻は裁判なんて起こさないし、彼女に無茶な事を言ってこない」 「本当にそう思うかい?君が今やっていることを、奥さんがやっていたとしたらどう思う?君は、気持ちが冷め切っているから、すんなりと別れるかい?相手の男には文句の1つも言わないのだね。でも、奥さんには慰謝料の請求はするよね?君がしている事は、そう言う裏切り行為なんだよ。だから、2重に裏切っているって言って居るんだ」 「妻には悪い事をしているって認識は持っている」 「まぁ話を聞け。君の不倫。違うな、恋愛をとやかく言うつもりはまったくない。ただ、不幸になる女性が居るのが許せないだけなんだ。いいかい。奥さんが、離婚に踏み切るとして、慰謝料の支払いが間違いなく発生する。それも、浮気を行った君が全面的に悪い。例え、夫婦仲が冷め切っていたとしても、奥さんが裁判をおこして”自分は夫を愛していました”と、涙ながらに語ったら、どう思うだろうね。完全に非は君にある。この事実だけでも、奥さんが不幸になる」 「まぁそうだろう。その位の覚悟はしている」 「覚悟をしていると言うのなら、奥さんが気がつく前に、彼女の存在がはっきりとする前に、何故離婚しない。それは、彼女を裏切っている事にもなる」 「あぁ解っているよ。だから、離婚は考えている」 「”考えている”するかどうかは解らないって事だよね?」 「違う。違う」 「何が違うんだい?いいかい。本当に彼女の事を思っているのなら、彼女に我慢させるな。彼女が我慢しているのは、君の傲慢さから来ている。お互い我慢しているなんて思うな。この恋愛が成就した時には、彼女は足かせを持った状態からのスタートなんだからな」 「解っているよ。だから、彼女がしたいと思っている事。やりたいと思っている事。全部叶えるつもりでいる」 「違うよ。彼女が求めているのは、そう言うことじゃぁない。些細な幸せなんだよ」  僕と彼との話は平行線になる事は解っている。価値観が違うのだろう。  僕には、守るべき物が、自分が言った台詞だけで、それが嘘にならなければいい。そして、自分を必要と言ってくれている人たちを裏切らないで居ればいい。でも、彼には守るべき地位と守るべき気持ちが沢山ある。  多分、世間的には、彼の方が大人に見えるだろう。僕は、企業体に就職したがそこの水が合わなくて、企業体を転々と移っている。社会不適合舎なのだ。  彼は違う。大手とは言えないが、そこそこ大きな会社に勤めて、着実に地位を上げて大きなプロジェクトも任せられる位になっているし、小さいとはいえ郊外にマンションも買っている。成功者ではないが、いい人生を歩んでいる。  僕が許せないのは、彼女との結婚や旅行を口にするのなら、自分の足下をしっかり固めて欲しい。  僕は、彼女の事は彼を通してしか知らない。彼から話を聞いて作り上げた彼女の像がまったく間違っているのかもしれない。その事を考えても、確実に言えることがある。お互い愛し合っているのだと思う。でも、それは足かせがあった状態での愛情で、何もなくなってしまった時に、実は何も残っていなかったって事にならない事を祈るばかりだ。  そして、多分彼女が望んで居るであろう。些細な幸せが実現出来る事を祈っている。  その些細な幸せを得ることが難しくて、いろんな恋愛の話が産まれているのだと言う事に、彼はまだ気がついていない。不倫カップルが難しいのは、お互いの努力だけではどうにもならない壁が存在していて、それが些細な幸せを奪うのだ。  だから、幸せの形を手に入れた後に、どちらかが我慢したり、どちらかが抑圧されていると、壁が目の前に広がったときに、乗り越えることができなくなってしまう。  そんなカップルを沢山見てきた。  僕は、そんな経験から、裏切りだけはしないように…それがどんな形だとしても…。必然と偶然の長い狭間の間の出来事だとしても、もう誰も裏切りたくない。 ///  彼女は、僕にこう切り出した。 「優しいの。私の方を愛していると言ってくれるの」  彼女は、この言葉を、何度も何度も、自分に言い聞かせるように僕につげる。  僕が聞きたいのは、彼女が感じている真実ではなくて、具体的な事実だけなのだ、この日、僕を入れて、彼と彼女と、3人で逢う約束になっていた。僕が、贔屓にしている、雰囲気がいい居酒屋で話をする事にしていた。この店は、オープン当時から使っているので、多少の無理も聞いて貰える。この店は、半個室な状態になっていて、普段は一番奥は開けておくのだが、少し無理を言って奥を使わせて貰うことにした。ここは、3人掛けになっていて話をするのに都合がいいとおもったからだ。  僕は、少し早めに店に着いた。彼から、遅れると言う連絡が入った。僕は、彼女の事を知らないので、ナビも出来ないし来ても判断が出来ない。彼に言って、僕の連絡先を彼女に伝えて貰って、先に来て貰う事にした。程なくして、彼女から新宿に着いたと言う連絡が入った。最寄り駅につたようなので、迎えに行くことにした。  彼女と出会い、簡単な自己紹介を行った。  彼女を伴って、エレベータに乗った。簡単に世間はなしをして、彼を待つことにした。  席について、オーダーを行った。飲み物が来て、軽く飲んでから、彼とのなれそめを聞いていた。 「それで、彼とは、どうやって知り合ったの?」 「聞いていないのですか?」 「別に敬語じゃぁなくていいよ」 「あっはい」 「それで、出会いは?」 「ネットです。出会い系じゃぁ無いのですけど、チャットで知り合ったのです」 「そうなんだぁ」 「それで?彼が、結婚している事ははじめから知っていたの?」 「ううん。最初は知らなかった」 「そうなんだぁ」 「何回かデートした後に気になって聞いたら、教えてくれたんです。でも、奥さんとの関係は冷え切っていて、もう関係ないから、気にしないでって言われた」 「そうなんだぁ」  もし、本当に気にしなくて良いのなら、電話もメールも自由に出来ると思うんだけどね。事実と真実が違っている。 「うん。凄く優しいし、エッチも上手いし、奥さんにはない魅力を感じているって言ってくれるし、私の方を愛してくれるって言ってくれるんです」 「そうみたいだね。君は彼の事が好きなんだよね」 「当たり前です」 「うんうん」 「それに、今は無理だけど、数年後には結婚しようねっと言ってくれるんですよ。私の事が好きじゃなきゃそんな事言ってくれないと思うんですよ」  彼から聞いている話と殆ど同じだ。彼女の中では、彼女が感じている真実だけが重くて、そこから導き出される事実には目を向けていない。彼女が、彼のことを好きな事はよくわかる。よくわかるだけに、事実に目を向けるのが怖くなっている。  僕は、凄く悩んでいた。真実だけを考えて、事実を見ようとしていない人に、事実を認識させるのは簡単な事ではない。彼の考えが許せないのであって、彼女にはなんの罪はない。彼女には、幸せになって欲しい。純粋にそう思える。  でも僕はあえて、彼女にも事実を突きつける。  お互いに、事実を認めた上で、答えを見つける事が出来ると思ったからだ。  彼女に聞いてみた 「ねぇ彼の職業は知っているよね?」 「うん。詳しくは知らないけど、IT関連の技術者なんでしょ」 「そうだね。不規則な時間の中で仕事をしているんだよね」 「そうなんですよね。彼もよく今日みたいに、急に仕事で遅れるって連絡が入るんですよね。それに、泊まりは無理だから、どんどん逢える時間が短くなっちゃうんですよ」  こんな話をしている時に、彼から連絡が入って、今ビルの下に居る。今からあがる…とのこと。  彼も合流して、注文を行う。乾杯を行って、本格的に話をする事にした。彼を真ん中にする形で、私と彼女が向き合う様に座った。 「ねぇ遅れた理由は、嘘でしょ? 仕事じゃぁなかったんでしょ?」  僕は、彼に告げる。 「いきなり何を根拠にそんな事を言うんだ」 「だって早すぎるよ。15分の遅刻だよ?彼女さん。いつも遅刻は1時間とかじゃぁないの?」 「えっそうですよ」 「…・」  やはりな。彼は嘘を付いている。 「そうだね。実際の所は違うかも知れないけど、誰かと電話していて、違うな電話がかかってきて、時間に間に合いそうになったのでしょ?もし本当に、会議が長引いていたのなら、会議中に連絡は出来ないだろう。僕の連絡先を彼女に教える事も出来なかっただろう。もし逆に会議が終わってからの彼女に連作先を教えたのなら、彼女を待たせておいて、一緒に来ればいいだけだからね」 「…・」 「ねぇそうなの?」 「そんな事ないよ」 「まぁいいかぁ話を本筋に持って行こう」 「…・」 「えぇ奥さんとは、もう冷め切って居るんだよね?私の方が好きなんだよね?結婚してくれるんだよね?」 「答えてあげたら」 「そうだよ。奴とはもう冷え切っているし、君の方が好きに決まっている。時期が来れば結婚したいと思っている」 「だよね。私も、貴方の事が好きなの?好きで好きで毎日でも逢いたいし、毎日声も聞きたいし、メールもしたい」 「俺もだよ」 「じゃぁなんでそうしないで、彼女に我慢を強いるの?君は、奥さんとは冷え切って居るんだよね?」 「あぁそうだよ」 「じゃぁ家で電話しても問題無いだろうし、彼女から急な電話やメールも問題ないんだよな?」 「…・」 「…・。それは、奥さんに気がつかれると大変だから…・」 「何が大変なの?冷え切って居るんだし、彼も彼女さんと逢いたいっておもっているんだし、声も聞きたいし、メールもやりたい。何か障害があるの?」 「だって、不倫だ…よ」 「彼女さん。それは違う。君にとっては、純粋な恋愛だ。君が我慢する事がおかしい」 「…・」 「君に聞いて居るんだよ。彼女に我慢を強いて、君は彼女に何を与えているの?」 「…・」 「彼は、優しいし、私の方を愛していると言ってくれる」 「おまえに何が解る!!」  彼は、立ち上がって、手に持っていた、コップを僕に投げつけてきた。  壁にコップがあたって、割れる音が店中に響く。彼女の顔が青くなる。僕の、頬に赤い一筋の水分が流れ出る。  店員が、慌てて、こちらに駆け寄ってくるのがわかる。  手で、制してから 「解らんよ。相手に、不安と我慢を強いる関係なんて、僕には出来ないからね。前にも言ったけど、君は裏切りから恋愛にはいっている事が解っているの?」 「裏切り?」 「そうだよ。事実から目を背けない。彼は奥さんを裏切って居るんだよ」 「…・そうだけど、もう冷め切って居るんだから、裏切りにはならないと思う」 「彼女さんは優しいね。でも、僕は、君に聞いて居るんだよ。答えてよ」 「しょうがないだろう…おまえも解るだろう」 「解らんよ。本当に、彼女さんの事が大切で、守るべき存在だと思っているのなら、態度で示せよ」 「示しているよ」 「そうですよ。私が逢いたいって我が儘を言えば、時間作ってくれるし、優しくしてくれる」 「違うよ。そんな事は、当たり前の事なんだよ。時間作る?はぁ大切な思いがあれば当たり前だろう?」 「お前に、お前なんかに、時間を作る難しさが解らないんだよ。家にも帰る必要があるんだからな」 「はぁお前今自分が言っている意味がわかっているのか?」 「…・」  話は平行線をたどり始める。 「彼女さんが思っている真実と、君が言っている真実が同じことはわかった。でも、事実は違うよ。本当に、冷め切っているのならささっと結論を出すべきだろうし、なぜそうしない?」 「それはどういう意味だ?」 「彼女さんの方が大切で、本当に好きなのが、彼女さんだって言うのなら、なぜ彼女さんに我慢させる」 「関係が冷え切っている奥さんに気を遣って、彼女さんに我慢を強いるのは何故だって聞いて居るんだ?こんな簡単な事を今更言わせるなよ」 「…・」 「何かいいたそうだね」 「我慢なんてしてないよ。彼も、凄く我慢してくれていて、私に逢いたいって言ってくれるし、帰りたくないけど…帰らなきゃならない…、彼も凄く凄く我慢してくれるし、私の我が儘を聞いてくれるんだよ」  それだけ言うと、彼女は下を向いて涙を落とし始めた。それ以上言っても何もならないのは解っている。  店員を呼んで、割れた破片を片付けてもらう。店長にチップを渡す。  消毒液が有ったようで貰って、簡単に消毒してから、絆創膏を貼る。破片は、それほど散らばっていない。そういうコップなのだろう。  彼だけに聞こえるように、ちょっと来てっと言って席を立った。 「ちょっとトイレ。君も付き合って」  彼女は、その声を聞いて慌てて涙をぬぐいながら、顔を上げて笑おうとした。僕は、それに気がつかないフリをして、彼の腕を掴んで、席を立った。カウンターに居た顔見知りの女性店員に目配せして、僕たちのボックスに行ってもらった。 「解っているな? 彼女さんには、これから僕が話を聞いて、知恵をつけるぞ」 「…・」 「それは、承諾の意思表示と取るからな」 「本当に、彼女を愛して居るんだ。邪魔しないで欲しい」 「邪魔なんてしないよ。彼女さんに、”事実”と”真実”の違うを教えるだけだ」 「今まで君が言ってきた真実が、事実と違っているのなら、早めに訂正でも謝罪でもするんだな」 「…・」 「彼女さんが、自分の真実と自分の幸せを考えて動けるようになって貰う。だから、邪魔もしなければ応援もしない。僕は、彼女さんの味方になる」 「…・」 ///  彼は結論から逃げている。  縛りのある関係の方が長続きすると彼は言う。それは確かに正しいだろう、僕もそれは認める。好きと言う感情だけじゃぁどうにもならない現実が目の前に存在することもある。  どこまで『愛していると話を切り出しても』『好きだ大切にしている』と口にして、身体を合わせて、将来の事を語ったとしても、空虚でしかない事実が存在する。不倫と言う名前のカップルには、将来を語る時に現実・結論から目を背ける行為にしかならない。  男女の関係だから、実際にそれだけでは語れない物がある事は解っている。  傷ついた者でしか解らない現実や乗り越えてきた現実が解る人間でしか味わえないリスクへの恐怖。  彼女は、僕に頻繁に連絡してくるようになった。  知り合ったばかりの僕に、何故?  答えは簡単だった 「寂しいの」 「寂しい?」 「そう。彼と逢っている時には、彼からの愛情を感じるし、私も彼の事を愛している。でも、彼と別れた後に、彼は帰るべき場所へと帰っていく、信じているけど、信じられるけど、寂しい」 「そうなんだぁそれで、どうしたいの?」 「解らない。今のまま…じゃぁ寂しいけど、しょうがないんだよね」 「しょうがない?何で?」 「だって、メールも電話もあんまりしちゃぁダメだからね」 「彼からは、夫婦の間は冷め切っていて、彼女さんしか居ないって言っているよね?」 「うん。それは感じる事が出来る」 「それなら、それでいいんじゃぁないの?信じて居るんでしょ?」 「勿論信じているよ。お互いに愛し合っている。それに、私の気持ちも彼にぶつけたらしっかり答えてくれた」 「そうなんだぁでも、彼は離婚するとは言っていないんだよね?」 「…・うん。でもね。でもね。私と逢う時間も増やしてくれるし、メールも返してくれるんだよ」 「それじゃぁそれでいいんじゃぁないの?」 「うん。でも、不安なの?」 「何が不安なの?彼の事は信じて居るんでしょ?」 「信じているよ…でも…怖いの」 「それ以上を望んじゃって居るんだね」 「うん」  そうなんだ、愛し合っている。信じている。私の事を愛してくれる。そう言っても、不倫関係に違いはない。冷め切っていると言っていても、最後には彼は帰っていくのである。それが寂しい。その事実は紛れもない事実なのである。  彼女は多くの心配を持っている。  まだ彼女自身が時間に自由が効く立場にだ。これから時間と共に、自分にも世界が広がってくるし、やりたいと思っている仕事を任される事が有るだろう。その時に、彼との時間が取れなくなる。それは彼女自身の我が儘なのかもしれない。彼は、その時には、私を見つけたのと同じように、別の女の人を探すかもしれない。そんな不安を抱いてしまう。自分の気持ちは変わらない。でも、彼が将来の話をする時の、実現姓を考えてしまっている自分が居る事に気がついた。  最後には、彼からの言葉”愛している”」その言葉だけを信じているから大丈夫だと言い聞かせている  そんな話をした後に、彼から連絡が来た。 「少し聞きたい事がある」 「何か合ったの?」 「お前彼女に何か言ったのか?」 「少し話を聞いて上げただけだよ」 「そうかぁ」 「順序立てて説明しろよ」 「いや。お前が何も言っていないのならいいや」 「おい!そりゃぁないだろう」 「いいって言って居るんだ」 「そうか、そうか、それなら俺に連絡して来た事が解らんよ」 「…・・」 「だから、何があったんだ」 「…」 「だから、何かあったんだね」 「あぁ彼女が自殺を図った」 「はぁ何でそれを先に言わないんだ。彼女は大丈夫なんだろうな!」 「あぁ大丈夫だと…思う」 「お前…見舞いにも行っていないのか?」 「俺だって行きたいよ。でも、どの面下げて行けばいいんだよ!」 「お前、彼女を愛して居るんだろう?信じさせて居るんだろう?」 「あぁ」 「ここに来て、はっきりとさせないんだ!?」 「俺に何を言わせたい?」 「お前は簡単に言うよ。そうして、俺達の関係を否定するよな」 「否定していない。ただ、立場をはっきりさせろって言っていたんだ」 「はぁお前には解らないだろうなぁ俺だって苦しいんだ」 「あぁ解らないよ。好きだった子が自分が原因で自殺したり、目の前で友人が飛び降り自殺をしたり、信頼していた人に裏切られて多額借金を背負わされたり、ストーカー野郎に不倫だと勘違いされて刺されたりした程度の経験しかないからな!解るか?だから、リスクを考えろって言っていたんだ」 「…・」 「確かに、結婚している時には、幸福な時間を過ごせたよ。離婚したとはいえ元嫁とは、いい関係を保っているよ」 「…・」「…・」 「お前とは違うよ。俺は彼女を大切に思っているし、結婚してもいいと思っている」 「思っている。思っている。そうだな。お前は、思っていれば、なんでも叶えてくれるなにかを持っているか?思っているだけでなにもしていないからこうなったんだろう?」 「…・」 「お前は、結局彼女に将来の事は話すけど、将来への道を現実的な道を示せなかったんだ」 「…・」 「いいか、お前はどうしたいんだ?」 「まさか、10年後に結婚しようなんて考えていないだろうなぁ」 「…・」 「それは立派な事だと思うよ。俺には言えない台詞だからな」 「嫌みを言うなよ。何が言いたいんだ」 「解らないなら言ってやるよ。お前は、約束手形で彼女を縛って居るんだ。”愛している”だとか、”お前しか居ない”だとか、”自分たちには自分たちの関係がある”とか言っていないで、結論を出せよ」 「…・」 「お前、結婚を餌にしていないか?」 「そんな事はない。彼女の事は真剣に考えている」 「それなら、お前!」 「解っている。解っているけど…」 「なんだ、解っているのなら行動に移せばいいじゃぁいか」 「…・」 「あぁそうか怖いんだな」 「…・」 「彼女は、天秤に命を乗せたんだぞ。お前は、反対側に何を乗せるんだ。生半可な物じゃぁ釣り合わないぞ」 「…・」 ---------------  それから、数日後、彼は離婚届と結婚届の両方をもらいに行って、両方に自分の名前を書き込んで判を押した。まだ提出はしていないようだが….これからの道のりは長いが、一歩目を踏み出した事には違いない。  彼は結論から逃げなかった。逃げる事は出来たのかもしれない。でも最後の一線で踏みとどまった。  僕の出現がこの結果を産んだ。彼女は傷つき。彼は僕を軽蔑したのかもしれない。そうして、彼の妻は知らなくていい事実を知ってしまった。  その罪を感じながら…僕を恨む人間が増えただけかもしれない。それはそれでいいのかもしれない。僕のエゴだと言う事も解っている。僕が感じた苦痛と苦渋をあじあう寸前で、落としどころが決まったのかもしれない。  まだ結論が出たわけでもない。  そして、数年・数十年後に、僕が行った事への罰が下るのかもしれない。
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