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「雷。随分と帰りが遅かったじゃないか」  和室の奥で胡座をかいている朝陽。そこへ雷とメルが静かにやって来た。彼女達が彼を睨みつけると、彼は雷に座るよう命じた。少しの間の後、雷はしぶしぶ座る。メルは立ったままでいた。 「お父さん。コノハを返して。卯申は言ってたよ。協力する代わりに蘭李達には手を出さないって!」 「卯申が行動不能な今、そんな取引は無効に決まっているだろう」 「なッ……!」 「雷、いい加減現実を見ろ」  朝陽は鋭く雷を見据えた。彼女は一瞬怯んだが、同じように睨み返す。 「現実を見てないのはお父さんだよ!」 「いいや。雷、何故私が頑なに闇属性を嫌うか分かっているのか?」 「……闇だから、じゃないの?」  不審な目を向ける雷。朝陽は首を動かし、開け放たれた障子から外を眺めた。夜空には満月と、数多の星が散りばめられている。それらを見つめながら、朝陽は目を細めた。 「闇属性は、悪魔と似たような力を司る。その起源は、悪魔との契約からだと言われている」 「悪魔との、契約……⁈」  悪魔は契約をすれば、人間の願いを実現させるまで力を貸してくれる。しかし代償として、その願いが叶うと、契約した人間は悪魔に食われてしまう。 「悪魔は必ず願いを叶えようとする。その為に必要ならば、人間に悪魔の力を貸すことだって厭わないだろう。そしてその力を借りた人間がもし、子孫を残したとしたら?」  悪魔の力とて、同じ魔法の力だ。しかも魔法は遺伝するもの。  悪魔の力を持った人間の子供が、その力を受け継いでいないなんて、誰が言い切れるだろうか? 「だから闇属性は野放しに出来ない。悪魔と繋がりを持っている奴等を、生かしてはおけない」  唖然と雷は口を開けていた。彼女は考えたこともなかったからだ。どうして闇属性が生まれたかなんて。  お父さんはそこまで考えていた………でも、だからって………! 「そんなこと………証明出来ないじゃん!」 「闇属性が悪魔の力を使える時点で証明になっている」 「悪魔の力なんかじゃないよッ!」  雷は叫んだ。しかし彼女は、明らかに動揺していた。彼女にとっても、悪魔という存在だけは許せないからだ。  悪魔は闇属性とは違って、人間を死へと向かわせる存在――――人間の敵であるからだ。そんな悪魔と、もし闇属性が繋がっていたら……。 「雷。闇属性とは手を切れ。闇軍の者ともだ。奴等を生かしておいたら、私達人間は悪魔に侵略される」 「そんなことないッ!」 「その根拠は?」 「白夜達は優しいもん! 悪魔みたいに非道なことはしない!」 「それは幻想だ」  朝陽が蔑むような目で雷を見る。二人の間に緊張が漂った。 「お前は騙されているだけなんだ。悪魔は口が上手い」 「違うよ! 白夜は悪魔じゃないッ―――――」 「何かが起きてからでは遅いんだ。そのくらい、幼子でも分かるだろう?」 「何にも起きないよッ!」  雷はドンッと鈍い音を立てて勢いよく立ち上がった。橙色の目を光らせて、声を荒らげて言い放つ。 「闇属性だってうちらと同じ人間なんだよ⁈ 悪魔なんかじゃない! だから何も起きない!」 「半分悪魔みたいなものだ」 「そんなことないよッ! お父さんは闇属性の人と話したことが無いからそう思い込んでるだけでしょ⁈ 知ったような口利かないでッ!」 「ならお前はなんでも知っていると? 闇属性の全てを理解しているとでも言うのか?」  言葉を詰まらせる雷。その時、メルがスッと彼女の前に立ちはだかった。驚く彼女を守るように、朝陽を睨むメル。 「天使である私から申しますと、白夜様からは悪魔の力は微塵も感じられません。故に、貴方の推測は間違っていると思われます」 「………貴様は皇健治の天使か。奴と契約しているんだろう? 悪魔と同じように、願いを叶えたら食らう条件の元で」 「…………」  煉瓦色の視線が朝陽を貫いた。雷は不安そうに、メルの顔を後ろから窺う。普段あまり表情を変えない彼女だが、今は緊張しているように思えた。 「まあ貴様らのことは今はどうでもいい。ともかく雷。今日で神空蒼祁は死ぬ。そうすれば神空朱兎も死ぬ。お前達の仲良しごっこは終わりだ。準備が出来次第、闇の者達を殺していく」 「なッ……⁈ そんなことさせないよ!」 「お前に止められるか? 六支柱にも勝てないお前が?」  朝陽は立ち上がった。思わず雷は大剣に手を伸ばす。メルも戦闘体勢をとった。 「無駄だ。お前が私に勝てるわけがない」 「やってみなきゃ分かんないよ!」  そう強がって叫ぶも、雷の柄を持つ手は震えていた。彼女は知っているからだ。実の父親の強さを。自分じゃ絶対敵わないと。  それでも、勝たなきゃ……勝たなきゃいけないんだ……! 「ッ!」  朝陽が腰から太刀を抜きながら駆け出した。メルは羽を広げて浮き、弓を彼に構え矢を放った。しかし太刀で弾かれる。そのまま太刀は、雷に振り下ろされた。 「いッ!」  大剣で太刀を受けた雷だが、あまりの強さに手が痺れた。刃がキリキリと交じり合う。朝陽の背後についたメルが再び矢を放とうとする姿を見て、雷は叫んだ。 「メルッ! うちだけで何とかするッ!」 「ですが――――――」 「大丈夫!」 「何がだ?」  朝陽が強く押すと、雷はバランスを崩す。その隙を見て、彼女の腹に拳を叩き込んだ。彼女は吹っ飛びながら大剣を手放し、畳に体を打ち付ける。ぐったりと倒れこむが、数回咳き込み、必死に上半身を起こした。 「一人で勝てると本気で思っているのか?」 「一人で勝たなきゃ……いけないんだ……!」 「私が父親だからか?」  雷は大剣を持ち、朝陽に向かって走り出す。大剣を振り下ろすが、ひらりと避けられてしまった。そのまま雷の頭を掴み、勢いよく押し出す。彼女の後頭部は、思いっきり畳に打ち付けられた。 「がッ―――――!」  気を失うことは無かったが、衝撃は脳を震わせた。朝陽がそっと手を離す。雷はすぐに起き上がろうとしたが、上手く力を入れられずに為せなかった。 「雷、お前は弱い。技術だけではなく、考えも幼い。そんなことで私に勝つことなど、一生かけても不可能だ」  朝陽は、鋭い視線で娘を見下ろした。 「諦めろ」
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