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桜の花弁舞う街道。 9年前と変わらない景色。 桜の花弁のカーペットの先にあるのは、私立梅宮学園。 ―私の悪役令嬢生活の舞台 息を深く吐くと私は、学園へと一歩踏み出した。 春風が、私の髪を靡かす。 「私なら、きっと大丈夫。」 私は、明星優陽。東栄優陽ではないもの。 東栄優陽は死んだのだから。 ―悪役令嬢は死んだ。ずっと前に。悪役令嬢はもういない。要らない。 「私は、悪役なんかじゃない。」 震える足を無理やり動かし、奥へと進んで行く。 『この手をとってください。』 なんだか幸せな夢を見た気がする。 誰かが私を包んでくれたようなそんな夢。 一生覚めなければいいのに… 「優陽!」 うん?『優陽』? 誰かが誰かを呼ぶ声で私は目が覚めた。 私は何故だか白いベッドで寝ていた。腕には点滴の針。 恐らくここは病院だろうか。 きょとんとしている『私』を心配そうに覗きこむ見知らぬ男女。 「どちら様でしょうか?」 体を若干起こした『私』は見知らぬ男女に向かって問いかける。 可笑しい。私はどうして病院に? そしてこの人達は誰? 確か私は、買い物をしてその後… 「私達のことがわからないの…?ああ…そんな…。」 女性がその場に泣き崩れた。 男性も辛そうな顔をして今にも泣いてしまいそうだ。 目の前で繰り広げられるプチ修羅場を『私』はただじっと見つめていた。 なんて声をかけるべき?嘘でも知ってる振りした方がいいの? 呆然としている『私』に男性が穏やかな声で話しかける。 「優陽。たとえ君が記憶を取り戻せなかったとしても、君が私達の大切な娘だということに変わりはないよ。」 さっきから『優陽』という第三者の名前が飛び交うのに疑問を持った『私』は病室を見渡す。 だが、私達以外には誰もいなかった。 そもそも、この病室には『私』が使っているものしかベッドがなかったのだ。 …しかも、無駄に広い。本当にここは病院? 辺りをもう一度見渡した『私』はある違和感に気がついた。 病室の鏡に映る自分が自分ではないのだ。 どこかで見たことのある可愛いらしい幼い少女だったのだ。 「優陽。」 『私』は先ほどから耳にする人物の名を発してみた。 なんだろう。 『優陽』という名前にも覚えがあるような。…ないような。 何が引っかかっているがまだ思い出せない。 「そうだ。優陽が好きな小説持ってきたのよ。」 女性がなにやら鞄を漁っている。 どうして私が読書好きなのを知っているのだろう。 「ほら。優陽がよく読んでた小説よ。普通の女の子が来世で幸せに暮らすやつ。優陽、恋愛小説全般好きだったものね。」 『来世』?『恋愛小説』? 「東栄会長!お嬢様は!?」 慌てた様子でこれまた知らない女性がやってきた。 東栄…? 『庶民の癖に私に逆らうなんて!』 『月斗に近づかないで!』 『私』の脳裏に浮かぶのは昔読んだ小説の内容だ。 「あの性悪お嬢様!?」 『私』の絶叫が、部屋に響いた。 ー私、転生しちゃったの!? どうやら、私が転生(?)したのは、小説『今から君を』の世界…らしい。 『今から君を』とは、前世で大ヒットした恋愛小説。映画化・漫画化・ゲーム化され、さらには『今から君を』は流行語にノミネート! 一時期は『今から君を』という言葉を聞かない日がないレベル! 主人公の女の子が妨害されながらも幼馴染と結ばれるお話。王道だー。 そして、作中の「東栄優陽」はなんと!主人公の幼馴染みの婚約者兼悪役令嬢! …小説通りならば私は、主人公の幼馴染(学園理事長の孫)の逆鱗に触れ学園を退学!その後、主人公の幼馴染一家に、東栄財閥は優秀な社員を大量に奪われ、東栄財閥の悪事が社員から漏れ、世間から大バッシング!経営難に陥ってしまうのです! そりゃあ一度は転生に憧れはしたけど、破滅ルートの悪役令嬢なんてまっぴらご めんだよ! あれでしょ?取り敢えず破滅フラグ折るしか道がないんでしょ? どこかでこんなお話読んだことある! 転生物?だっけ? ひぃ...というか私死んだの!?死んでしまった記憶はないのだけど…。 『私』はなんとか思いだそうとするが、どうしても元の世界であったことがあまり思い出せない。買い物に出掛けたことだけは覚えているのでもし、死んでいたら交通事故にでもあった可能性が高い。 悪役令嬢なんてツイてない。破滅なんて絶対に嫌…! と、いうか『東栄優陽』じゃなくて『明星優陽』になれば良くない? だって、小説版だと両親が離婚して母方実家で暮らすようになり、しばらくして主人公の幼馴染みと婚約するシナリオだから、両親復縁させるか母親再婚させれば無駄な接点減らせるのでは? 東栄家はただコネが欲しいだけだから、絶対主人公の幼馴染み!ってわけでもないと信じよう。 『東栄優陽』でなければいいのだから。多分。 塵も積もれば山となる。 なんで転生したのかとか置いておいて私が今できることをして、破滅フラグを折らないと…! こうして『私』の悪役令嬢生活は何の前振りもなく突然始まったのであった。
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